2026年の危険物法令では、4月4日と6月30日に大きな改正が施行されました。主なテーマは、保有空地・保安距離の性能規定化、リチウムイオン蓄電池を扱う屋外貯蔵所の特例、航空機給油、水素関連設備、移送取扱所の配管です。
この記事では、2026年7月31日時点の消防庁の公布通知と現行法令を照合し、受験者が「従来どおり覚える基本」と「新しく設けられた特例」を混同しないように整理します。
先に結論
- 保有空地や保安距離の原則が一律に廃止されたわけではありません。
- 一定の防火措置と安全性能を満たす場合に、距離や空地を緩和できる特例が広がりました。
- 指定数量の数値や危険物第1類〜第6類の分類は、今回の改正対象ではありません。
2026年改正の全体像
| 施行日 | 主な変更 | 受験者の確認点 |
|---|---|---|
| 2026年4月4日 | 保有空地・保安距離、LiB屋外貯蔵所、航空機給油取扱所 | 原則と特例を分けて読む |
| 2026年6月30日 | 特例対象の拡大、水素改質装置、移送配管、甲種受験資格の規定整備 | 設備条件と適用時期を確認 |
いずれも公布日の翌日から施行されています。4月分は令和8年政令第115号・総務省令第60号・総務省告示第181号、6月分は総務省令第83号・総務省告示第241号による改正です。
4月4日施行:保有空地・LiB・航空機給油の見直し
保有空地は「安全を証明できる場合」の特例が拡大
製造所、屋内貯蔵所、屋外タンク貯蔵所、屋外貯蔵所などでは、火災時の延焼防止や消防活動のため、施設の周囲に一定幅の保有空地を設けるのが原則です。
今回の改正では、耐火構造の塀、防火上有効な措置、冷却用の散水設備、消防活動に必要な空地などを設け、次の両方向の安全性を満たす場合に、保有空地の幅を減らしたり、条件によっては保有しなかったりできる特例が拡大されました。
- 危険物施設で火災が起きても、隣接建築物が燃焼せず、重大な損傷を受けないこと
- 隣接建築物で火災が起きても、危険物施設が燃焼せず、重大な損傷を受けないこと
「空地が不要になった」と覚えるのは誤りです。従来の距離基準が原則であり、具体的な防火措置と安全性能を満たした場合の特例だと整理しましょう。基本の数値は保安距離と保有空地の解説で確認できます。
高圧ガス施設等との保安距離にも性能に基づく特例
危険物施設と高圧ガス施設等の間の保安距離についても、耐火構造の塀などを設けたうえで、火災の輻射熱や爆発の爆風圧に対して双方の施設・保安設備が機能を維持できる場合、必要な安全性能を満たす距離を保安距離とできる特例が設けられました。
ここでもポイントは、危険物施設から隣接施設への影響だけでなく、隣接施設から危険物施設への影響も評価することです。
LiBを扱う屋外貯蔵所の特例
リチウムイオン蓄電池(LiB)の内部では、第2類または第4類に該当する危険物が使われる場合があります。改正により、こうした危険物のみを貯蔵・取り扱う一定の屋外貯蔵所について、危険物を容器に収納しない貯蔵と、位置・構造・設備基準の特例が整備されました。
特例の主な条件は次のとおりです。
- 危険物を貯蔵・取り扱う設備が、告示の基準に適合するキュービクル式であること
- 柵等の周囲に原則3m以上の空地を設けること(耐火構造の壁・柱に関する例外あり)
- 指定数量の100倍以上を扱う場合は、設備全体を包含する散水設備を設けること
LiBであれば無条件に一般倉庫へ置ける、指定数量の計算から一律に外れる、という改正ではありません。対象物、設備、安全措置が限定された屋外貯蔵所の特例です。屋内・屋外貯蔵所の原則は屋内貯蔵所・屋外貯蔵所の基準もあわせて確認してください。
航空機は条件付きでエンジン作動中の給油が可能に
航空機給油取扱所では、一定の施設で専門員が給油する場合に限り、航空機の原動機を停止させずに給油できる規定が整備されました。一般の給油取扱所やセルフ式ガソリンスタンドのルール変更ではありません。
対象となる給油では、引火点38℃以上の第4類危険物に限ること、給油管理者・給油要員・防火要員・給油監督者が役割に応じて業務を行うこと、相互に視認・意思疎通できる位置にいることなどが求められます。氷結防止剤等を燃料へ加える添加装置についても、結合金具、静電気除去、転倒防止などの基準が整備されました。
6月30日施行:水素関連設備・移送配管・甲種受験資格
保有空地・保安距離の特例を関連規定へ展開
6月の改正では、4月に導入された性能に基づく考え方を、規則第13条の6、第16条の2の3・4、第22条の2の3、第24条の12など、関連する個別基準へ広げました。
学習上は、固定された距離の原則を先に覚えたうえで、「耐火構造の塀」「散水設備等」「消防活動用の空地」「双方への輻射熱・爆風圧の評価」が特例の判断材料になる、と整理すると混乱しにくくなります。
給油取扱所に水素製造用の改質装置
水素を充塡する設備を設ける給油取扱所に、メチルシクロヘキサンから水素を製造する改質装置を設置する場合の基準が整備されました。主な条件は次の3点です。
- 改質装置に接続する廃油タンクの容量を3万L以下とする
- メチルシクロヘキサン、水素またはトルエンが漏えいした場合に、装置を自動停止させる
- 改質装置での危険物の取扱量を指定数量の150倍未満とする
3万Lと150倍は、設備の適用条件として区別して覚えます。通常の給油取扱所・販売取扱所の基本基準を置き換える数字ではありません。
移送取扱所の配管基準を合理化
事業所の敷地内の地上または地下に設置する移送取扱所の配管について、最小厚さの規定を適用しないこととされました。また、告示で定める規格と同等以上の機械的性質を持つ材料を、設置場所の状況等にかかわらず認めるなどの見直しが行われています。
「運搬」と「移送」は試験で混同しやすい用語です。タンクローリー等による移送の基本は危険物の移送基準で整理できます。
甲種試験の受験資格は規定整備
学校教育法の改正に伴い、甲種危険物取扱者試験の受験資格のうち、専修学校に関する部分等が整備されました。専修学校の専門課程に関する改正規定は、2026年4月1日以後に入学した人へ適用され、それ以前の入学者には従前の取扱いが残ります。
これは試験科目や合格基準の変更ではありません。実際に受験資格を確認するときは、学歴・修得単位・乙種免状取得後の実務経験など、自分の経路に応じて消防試験研究センターの甲種受験資格案内を確認してください。
試験対策では「原則→特例」の順で学ぶ
| 優先度 | 学ぶ内容 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | 指定数量、施設区分、通常の保安距離・保有空地 | 基本問題の土台になる |
| 2 | 特例が使える条件 | 「常に」「無条件に」という誤文を見抜ける |
| 3 | 3m、100倍、38℃、3万L、150倍 | 対象設備とセットで覚える必要がある |
危険物取扱者試験は法令に基づきますが、消防試験研究センターは個々の改正事項について出題時期や出題範囲を事前公表していません。「次回から必ず出る」と断定せず、まず頻出の基本を固め、最新の特例を誤答防止用に確認するのが現実的です。
今回の改正で変わっていないこと
- 第1類〜第6類という危険物の分類
- 特殊引火物50L、第1石油類200Lなど、政令別表第三の指定数量
- 製造所・貯蔵所・取扱所という施設区分
少なくとも今回確認した2026年4月・6月の改正は、これらの基本体系を変更するものではありません。最新改正だけを追いかけるより、乙4完全攻略ロードマップに沿って基本を一巡してから本記事へ戻るほうが効率的です。
このサイトで行った確認手順
法改正記事は、検索結果や民間サイトの要約だけでは公開していません。今回は次の順で確認しました。
- 消防庁の2026年通知一覧から公布通知を特定
- 4月3日・6月29日の通知本文で、法令番号・施行日・改正項目を確認
- 政令・規則・告示の条文番号と、通知に示された運用条件を照合
- 「原則の廃止」なのか「条件付き特例」なのかを分けて記述
- 既存の下書きにあった一次資料で確認できない説明を削除
今後も新しい通知や経過措置が出た場合は、施行日と適用対象を確認して更新します。誤りにお気づきの場合はお問い合わせフォームからお知らせください。
確認した一次資料
- 消防庁「危険物の規制に関する政令の一部を改正する政令等の公布について」(2026年4月3日)
- 消防庁「危険物の規制に関する規則の一部を改正する省令等の公布について」(2026年6月29日)
- e-Gov法令検索「危険物の規制に関する政令」
- e-Gov法令検索「危険物の規制に関する規則」
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