物理学・化学(基礎)

引火点・発火点・燃焼範囲の違い|燃焼点とvol%計算も整理

引火点・燃焼点・発火点・燃焼範囲は、どれも「燃えやすさ」に関係しますが、同じ数値ではありません。まず点火源が必要か、瞬間的な着火か継続燃焼か、温度か濃度かの3点で分けると、問題文を正しく読めます。

先に結論:引火点は点火源を近づけたときに一時的に着火できる最低温度、燃焼点は着火後も燃焼を続けられる最低温度、発火点は外部の点火源なしで発火する最低温度です。燃焼範囲は温度ではなく、空気中の可燃性蒸気・ガスの濃度範囲です。

4つの用語を「火源・継続・単位」で分ける

用語 何を表すか 外部の点火源 主な単位
引火点 規定の試験で蒸気に一時的な着火が起こる最低温度 必要
燃焼点 点火後、液体が蒸気を供給して燃焼を継続できる最低温度 着火時に必要
発火点 規定の条件で外部点火源なしに発火する最低温度 不要
燃焼範囲 空気との混合気が火炎を伝ぱできる下限〜上限濃度 判定試験では必要 vol%

IUPAC Gold Bookのflash pointは、物質が可燃性混合気を作るのに十分な蒸気を出す最低温度として定義されています。引火点の着火は継続燃焼を意味しません。米国OSHAの解説でも、着火後に燃焼が自立して続く温度をfire point(燃焼点)として引火点と区別しています。

これらは測定方法、開放式・密閉式、圧力、試料の組成などで値が変わり得ます。数字を書くときは、物質名だけでなくどのSDSの、どの試験条件の値かを確認します。

引火点と発火点は連動しない

引火点が低い物質ほど発火点も低い、とは限りません。厚生労働省「職場のあんぜんサイト」のモデルSDSにある値を並べると、違いが見えます。

物質・製品 引火点 燃焼・爆発範囲 自然発火温度 蒸気密度
ガソリン −45℃ 1.3〜6.0vol% 約300℃ 3〜4(空気=1)
二硫化炭素 −30℃(密閉式) 0.6〜60vol% 90℃ 2.67(空気=1)
灯油 37〜65℃など 0.7〜5vol%など 220〜254℃など 製品SDSで確認

ガソリンは二硫化炭素より引火点が低い一方、二硫化炭素は自然発火温度が低く、燃焼範囲も広い値です。したがって、1つの物性値だけで危険性全体を順位付けできません。灯油のような混合製品はSDS内でも複数値が示されるため、表の代表値をすべての製品へ固定しないでください。

実物で試さない:引火点より低い温度でも、局所的な加熱、霧状化、別成分の混入などで状況は変わります。家庭や職場で火を近づけて確かめず、容器のSDS、施設の手順、消防機関の指示を優先してください。

燃焼範囲のvol%を計算する

vol%は、混合気体全体に占める可燃性蒸気・ガスの体積割合です。同じ温度・圧力で気体として扱う基本問題では、次の式を使います。

蒸気濃度[vol%]=可燃性蒸気の体積÷混合気体の全体積×100

例1:100Lの混合気体にガソリン蒸気が3.0L

3.0L÷100L×100=3.0vol%です。上表のモデルSDS値1.3〜6.0vol%と比較すると、濃度だけを見れば燃焼範囲内です。

例2:20m³の空間で二硫化炭素の下限0.6vol%に相当する体積

20m³×0.6÷100=0.12m³なので、換算上は120Lの蒸気です。これは安全な量や許容濃度を示す計算ではありません。実際の漏えいでは蒸気が均一に混ざらず、低所や閉所で局所濃度が先に高くなる可能性があります。

液体の体積へそのまま戻せない

「100L中に蒸気1.3L」と「ガソリン液体1.3L」は別物です。液体から発生する蒸気量を求めるには、組成、温度、蒸気圧、物質量、換気、液面積などが必要です。燃焼範囲の数値だけで漏えい液量を逆算しないでください。molと気体体積の計算はmol計算の記事で条件から確認できます。

下限値と上限値をどう読むか

  • 下限値未満:その試験条件では可燃性成分が薄すぎて火炎が伝ぱしない。
  • 下限値〜上限値:点火源があれば火炎が伝ぱし得る範囲。
  • 上限値超:その時点では酸素不足側。ただし、空気が混ざる途中で必ず燃焼範囲を通り得る。

「上限値より濃いから安全」は誤りです。換気、容器開放、漏えい拡散によって濃度が下がる過程で燃焼範囲へ入るため、点火源を除き、測定と安全手順に従います。燃焼と消火の基本は燃焼の成立条件消火の4原理で分けて復習できます。

蒸気比重はM÷28.97で近似する

同じ温度・圧力で理想気体とみなす純物質の蒸気なら、相対ガス密度(空気=1)はモル質量Mを乾燥空気の平均モル質量約28.97g/molで割って近似できます。

相対ガス密度(空気=1)≒M÷28.97

二硫化炭素CS2のモル質量を約76.14g/molとすると、76.14÷28.97≒2.63です。モデルSDSの蒸気密度2.67に近い値になります。

ただし、ガソリンや灯油は組成に幅のある混合物なので、単一の分子式から厳密な値は出せません。また、空気より重い蒸気も温度差、換気、対流、人や車両の動きで混ざります。「必ず床だけを流れる」と決め付けず、実務では対象製品のSDSと測定結果を使います。密度・比重・気体法則の違いは蒸気比重と気体法則で確認してください。

消防法の分類と指定数量は別の表で確認する

消防庁の危険物解説では、第4類を引火性液体として説明し、引火点250℃未満という範囲を示しています。さらに消防法別表第一では、特殊引火物、第一〜第四石油類、アルコール類、動植物油類などを定義しています。

引火点は石油類の区分を読む重要な値ですが、指定数量は法令上の品名、水溶性区分、性状試験などを含む分類結果から決まります。「引火点が低ければ必ず指定数量が小さい」という1本の式にはできません。第4類の品名は第4類の分類一覧、引火点境界の練習は石油類分類ミニテストで確認できます。

問題文を読む6欄チェック

  1. 対象:純物質か、組成に幅のある製品か。
  2. 問われる量:温度、濃度、相対ガス密度のどれか。
  3. 点火源:必要なら引火点・燃焼点、不要なら発火点。
  4. 燃焼継続:一時的な着火か、継続燃焼か。
  5. 条件:密閉式・開放式、温度、圧力、SDSの版。
  6. 法令分類:物性値の比較と、品名・指定数量の判定を分ける。

確認問題

問1:外部の点火源なしで発火する最低温度を表す用語はどれか。
(1)引火点 (2)燃焼点 (3)発火点 (4)燃焼下限界

正解:(3)
発火点は、規定の条件で外部点火源なしに発火する最低温度です。引火点と燃焼点は点火源を使う試験です。

問2:引火点と燃焼点の違いとして適切なものはどれか。
(1)引火点は濃度、燃焼点は温度 (2)引火点は一時的な着火、燃焼点は継続燃焼 (3)燃焼点だけ点火源が不要 (4)常に同じ値

正解:(2)
引火点では火炎が一時的に伝ぱできればよく、燃焼点では着火後も蒸気供給が続いて燃焼を維持します。

問3:全体200Lの混合気体に可燃性蒸気が4Lある。濃度は何vol%か。

正解:2.0vol%
4L÷200L×100=2.0vol%です。燃えるかどうかは、この値を対象物質の同じ条件での下限・上限と比較します。

問4:燃焼上限界より濃い混合気について「点火しない濃度だから常に安全」と判断してよいか。

正解:判断してはいけません。
空気が混ざって濃度が下がる途中で燃焼範囲へ入る可能性があります。点火源の除去、測定、換気を含む施設の安全手順を優先します。

問5:モル質量58.0g/molの純物質蒸気を同温・同圧の理想気体として近似したとき、空気に対する相対ガス密度はいくらか。

正解:約2.00
58.0÷28.97≒2.00です。混合製品や実際の漏えい挙動を、この近似値だけで判断しないでください。

資格太郎

この記事を書いた人

「危険物取扱者への道」運営者。危険物取扱者試験を独学で学習している受験生です。免状は保有していないため、記載する内容は消防法・危険物の規制に関する政令および規則の条文(e-Gov法令検索)と、消防試験研究センターの公開情報で必ず確認してから公開しています。

運営者情報と、記事を公開するまでの確認手順を見る →

※当サイトの画像にはAI生成のものが含まれており、実際の機器・器具とは外観が異なる場合があります。問題・解答の内容には細心の注意を払っておりますが、誤りが含まれる可能性があります。学習の参考としてご活用いただき、最終的な確認は公式テキスト・法令等で行ってください。当サイトの情報に基づく判断によって生じた損害について、一切の責任を負いかねます。

内容の誤りやお気づきの点がございましたら、お問い合わせフォームよりご連絡いただけますと幸いです。正確な情報をお届けできるよう、随時修正してまいります。

-物理学・化学(基礎)