mol計算は、公式を別々に暗記するより、質量・粒子数・溶液・気体をいったんmolへ変換し、必要なら反応式の係数比を使って、求める単位へ戻すと整理できます。問題文を見たら「数値→単位→mol→比→求める単位」の順に欄を作ってください。
単位で式を選ぶ:gならモル質量、個ならアボガドロ定数、mol/Lなら溶液体積、Lの気体なら温度・圧力を確認します。化学反応があれば、molに直した後で係数比を使います。
mol計算で使う5つの入口
| 与えられた量 | molへの変換 | 記号・単位 |
|---|---|---|
| 質量 | n=m÷M | m[g]、M[g/mol] |
| 粒子数 | n=N÷NA | N[個]、NA[mol−1] |
| 溶液 | n=cV | c[mol/L]、V[L] |
| 気体 | n=PV÷RT | P・V・Tの単位をRに合わせる |
| 化学反応 | 反応量÷係数を比較 | 係数比はmol比 |
BIPMのSI定義では、1molは正確に6.022 140 76×1023個の要素粒子を含みます。原子、分子、イオンなど何を数えるかを必ず指定します。試験問題が6.02×1023などの値を与えた場合は、問題文の丸めに従います。
モル質量の求め方:相対質量と単位を分ける
相対原子質量や相対分子質量は基準に対する比なので無次元です。一方、モル質量Mは1mol当たりの質量で、単位はg/molです。学習計算では、相対原子質量を足した数値とモル質量をg/molで表した数値がほぼ同じになるため、名称と単位だけを混ぜないようにします。
| 物質 | 計算 | モル質量 |
|---|---|---|
| H2O | 1×2+16=18 | 約18g/mol |
| CO2 | 12+16×2=44 | 約44g/mol |
| NaOH | 23+16+1=40 | 約40g/mol |
例1:水36.0gの物質量は、n=m÷M=36.0g÷18.0g/mol=2.00molです。単位も (g)÷(g/mol)=mol と確認できます。
例2:酸素分子3.011×1023個の物質量は、3.011×1023÷(6.022×1023mol−1)=0.5000molです。「酸素原子」ではなく「O2分子」を数えている点も残します。
モル濃度:mLをLへ直してから使う
IUPAC Gold Bookのamount concentrationは、成分の物質量を混合物の体積で割った量です。一般的な単位はmol/L。学校教材の「モル濃度」は次の式で扱います。
c=n÷V / n=cV
例3:NaOH 4.00gを溶かして500mLの溶液にしたとします。まず4.00g÷40.0g/mol=0.100mol。500mL=0.500Lなので、c=0.100mol÷0.500L=0.200mol/Lです。
分母は「加えた水の体積」ではなくでき上がった溶液の体積です。「水500mLに溶かす」と「500mLの溶液にする」は同じ条件ではありません。
質量パーセント濃度から換算する
質量パーセント濃度w[%]、溶液密度ρ[g/cm³]、溶質のモル質量M[g/mol]が与えられたとき、溶液1Lを仮定します。1L=1,000cm³なので溶液質量は1,000ρg、溶質質量は1,000ρ×w/100=10ρw gです。
c[mol/L]=10ρw÷M
たとえば20.0% NaOH水溶液、密度1.20g/cm³、M=40.0g/molなら、c=10×1.20×20.0÷40.0=6.00mol/Lです。wに0.200を入れる式と20.0を入れる式を混ぜないでください。
気体の22.4Lは温度・圧力とセットで使う
1molの理想気体を273.15K・101.325kPa(0℃・1atm)で計算すると約22.414Lです。入門問題で使う22.4L/molは、この条件へ丸めた値です。
一方、IUPACの気体の標準条件は273.15K・100kPaで、同じ理想気体ならモル体積は約22.71Lです。したがって「標準状態」という語だけを見て22.4を自動代入せず、問題文の温度・圧力・与えられた定数を優先します。
| 条件 | 理想気体1molの体積 | 使い方 |
|---|---|---|
| 0℃・1atm | 約22.414L | 問題が22.4L/molを与える場合に使用 |
| 0℃・100kPa | 約22.71L | IUPAC標準条件との区別用 |
| その他 | 温度・圧力で変化 | PV=nRT等で計算 |
たとえば「0℃・1atmで44.8L」と明示された入門問題なら、44.8L÷22.4L/mol=2.00molです。25℃や100kPaなど別条件へ同じ22.4を流用しません。気体法則は密度・比重と気体の法則で条件を分けて復習できます。
化学量論:係数比を使う前にmolへ直す
IUPACのstoichiometric numberでは、反応物側を負、生成物側を正として反応の量的関係を表します。基礎計算では、つり合った反応式の係数の絶対値をmol比として読みます。
CH4+2O2→CO2+2H2O
例4:メタン8.00gを完全燃焼させるのに必要な酸素の質量を求めます。CH4は8.00÷16.0=0.500mol。係数比1:2よりO2は1.00mol。質量へ戻すと1.00mol×32.0g/mol=32.0gです。係数比を8.00gへ直接掛けないことが要点です。
反応物が2つあるときは制限試薬を決める
2H2+O2→2H2Oで、H2が3.0mol、O2が1.0molあるとします。各物質量を係数で割ると、H2は3.0÷2=1.5、O2は1.0÷1=1.0です。小さいO2が制限試薬で、反応の進行量を決めます。
O2 1.0molに対してH2を2.0mol消費し、H2Oを2.0mol生成します。H2は1.0mol余ります。「少ないmol数の物質が必ず制限試薬」ではなく、mol数÷係数で比べます。
5行シートで解答を再現する
- 求める量:mol、g、個、L、mol/Lのどれか。
- 与えられた量:数値へ単位と条件を付けて写す。
- molへ変換:m/M、N/NA、cV、PV/RTから入口を1つ選ぶ。
- 反応式の比:化学反応なら係数比、反応物が複数ならmol数÷係数を使う。
- 求める単位へ戻す:最後に単位・桁・条件を検算する。
答えが1,000倍ずれたらmL→L、2倍・半分なら係数、気体だけずれたら温度・圧力、濃度だけずれたら溶媒と溶液の体積を確認します。途中式に単位を残せば、公式を思い出すより早く原因を特定できます。
3問で入口を選ぶ
問1:CO2 22.0gをmolへ直す最初の式は何ですか。
問2:0.250mol/Lの溶液200mLに含まれる溶質は何molですか。
問3:反応物Aが2.0mol(係数2)、Bが1.5mol(係数1)のとき、どちらが制限試薬ですか。
危険物試験での使い方
消防試験研究センターの現行案内では、甲種の「物理学及び化学」は10問、乙種の「基礎的な物理学及び基礎的な化学」も10問です。ただし公式公開問題は過去問題の一部であり、mol計算が毎回同じ形で出るとは限りません。公式の丸暗記ではなく、単位から入口を選ぶ練習として使ってください。
まとめ
mol計算は「数値→単位→mol→比→求める単位」の5段階です。質量はm/M、粒子数はN/NA、溶液はcV、気体は条件を見てPV/RTを使います。化学反応では全てをmolへ直してから係数比を使い、反応物が複数ならmol数÷係数で制限試薬を決めます。
次の復習先
- 密度・比重と気体の法則でPV=nRTの条件を確認する
- ヘスの法則で反応式の係数とエンタルピーを結び付ける
- 電池・電気分解で電子のmol計算へ進む
- 危険物試験の計算問題で式を選ぶ7欄手順を使う
- 計算問題ミニテストで単位変換を確認する
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