密度は質量÷体積、比重(相対密度)は物質の密度÷基準物質の密度です。密度にはg/cm3などの単位があり、比重には単位がありません。蒸気比重は、同じ温度・圧力で空気を1とした蒸気の相対的な重さを表します。
先に結論:「比重1超なら必ず沈む」「蒸気比重=分子量÷29をどんな製品にも使える」「ボイル・シャルルは条件なしの万能公式」とは覚えません。温度、圧力、物質量、混ざり方、製品SDSの条件を一緒に確認します。
密度と比重の違い
IUPACの密度の定義は、試料または物体の質量を体積で割った量です。一方、相対密度は、物質の密度と基準密度の比で、比重とも呼ばれます。
| 項目 | 密度 | 比重(相対密度) |
|---|---|---|
| 式 | ρ=m÷V | d=ρ物質÷ρ基準 |
| 単位 | g/cm3、kg/m3など | なし |
| 条件 | 測定温度・圧力で変わる | 物質側と基準側の温度を確認する |
液体・固体の比重では水を基準にするのが一般的です。ただし「20℃/4℃」のように、物質と水の温度が併記されることがあります。水の密度を約1g/cm3と置く初歩計算では密度と比重の数値が近くなりますが、定義も単位も同じではありません。
また、比重が1より大きい液体が水の下層になりやすいのは、互いに混ざらず、反応もせず、比較条件がそろう場合です。水へ溶ける液体を「浮く・沈む」の二択だけで扱いません。危険物の性質は第1〜6類の横断比較と製品SDSを合わせて確認します。
蒸気比重とは
危険物教材でいう蒸気比重は、通常、空気を1とした蒸気密度の比です。1より大きければ同条件の空気より重く、1より小さければ軽いことを示します。厚生労働省モデルSDSでも「蒸気密度(空気=1)」として掲載されています。
メタノールは液体としては水より軽い一方、蒸気は空気よりわずかに重い例です。液体比重と蒸気比重は基準が違うため、同じ「比重」という語だけで混ぜません。二硫化炭素は液体比重も蒸気比重も1を超えます。
分子量÷約29は近似式
純物質の蒸気と空気を同じ温度・圧力の理想気体として比べると、密度はモル質量に比例するため、次の近似が使えます。
蒸気比重 ≈ 物質のモル質量 ÷ 空気の平均モル質量(約29)
メタノールなら32.04÷約29≒1.10で、モデルSDSの1.11と近い値です。ただし、これは単一成分を理想気体近似した計算です。混合製品の蒸気組成は液体組成と同じとは限らず、温度や蒸気圧にも左右されます。製品の安全確認では計算値より、その製品の最新版SDS第9項を優先します。
空気より重い蒸気には低所・くぼみへ移動する傾向がありますが、実際の分布は放出量、温度、風、換気、周囲との混合で変わります。「必ず床面だけにとどまる」とは考えず、SDSと設備の換気設計に従います。引火との関係は引火点・燃焼範囲・vol%で分けて確認してください。
ボイル・シャルルの法則は条件を先に読む
IUPACの理想気体は、状態方程式pV=nRTに従う気体です。ボイル、シャルル、ボイル・シャルルの各式は、この関係から何を一定にしたかを読み取ると混同しません。
| 式 | 一定にする量 | 使う値 |
|---|---|---|
| P1V1=P2V2 | 物質量n・温度T | 絶対圧力 |
| V1/T1=V2/T2 | 物質量n・圧力P | 熱力学温度K |
| P1V1/T1=P2V2/T2 | 物質量n | 絶対圧力・K |
「条件なし」ではなく、同じ量の気体を理想気体として近似することが共通条件です。高圧、凝縮に近い条件、反応や漏れで物質量が変わる場面では、単純な式からずれることがあります。
セルシウス温度は273.15を足してKへ
BIPMによると、ケルビンは熱力学温度のSI単位です。セルシウス温度tと熱力学温度Tの数値関係は、T/K=t/℃+273.15です。試験問題が「273を使う」と指定した場合は、その指定値に従います。
27℃・3Lの気体を圧力一定で127℃にする例では、300.15Kから400.15Kへ変わるので、V2=3×400.15÷300.15≒4.00Lです。27から127への比をそのまま使いません。
圧力は絶対圧力でそろえる
気体の法則へ入れるPは絶対圧力です。圧力計のゲージ圧を使う問題では、大気圧を加えて絶対圧力へ直します。たとえば大気圧100kPa、ゲージ圧200kPaなら絶対圧力は300kPaです。問題文の「気圧」「絶対圧」「ゲージ圧」を先に囲みます。
式を選ぶ4手順
- 一定量か:漏れ、反応、注入がなく、物質量nが同じか確認する。
- 一定条件を探す:温度一定ならボイル、圧力一定ならシャルル。
- 単位を直す:温度はK、圧力は絶対圧力、体積単位は両辺で統一する。
- 変化の向きを検算:温度一定で圧縮すれば圧力上昇、圧力一定で加熱すれば体積増加。
mol、気体のモル体積、化学量論まで同時に問われる場合はmol計算の5手順へ進み、問題文から式を選ぶ練習は計算問題の7欄手順で行えます。
4問で確認する
問1:密度0.80g/cm3と比重0.80は、同じ量・同じ単位でしょうか。
問2:モル質量58の純物質蒸気を空気と同じ温度・圧力の理想気体として比べると、蒸気比重はいくつでしょうか。
問3:温度一定で体積を6Lから2Lへ圧縮すると、絶対圧力は何倍でしょうか。
問4:27℃を54℃にすると、圧力一定の気体体積は2倍でしょうか。
まとめ
密度は質量÷体積、比重は基準密度との比、蒸気比重は空気を1とした蒸気の相対的な重さです。数値には温度・圧力・組成の条件があります。気体の計算では、一定量→一定条件→Kと絶対圧力→変化方向の検算の順で確認してください。
次の復習先
- 引火点・発火点・燃焼範囲と蒸気比重を分ける
- 三態変化・蒸気圧で気化条件を確認する
- 密度・比重・気体法則ミニテストで式を選ぶ
- 計算問題の7欄手順で単位変換を横断する
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