結論から言います
第1類危険物は「酸化性固体」――つまり、それ自体は燃えないけれど、まわりの可燃物を猛烈に燃やす"酸素の供給源"です。
加熱・衝撃・摩擦を加えると分解して酸素を放出し、可燃物と接触していると火災・爆発を起こします。ここを押さえておけば、貯蔵・消火の原則もスッと頭に入ります。
この記事では、乙種第1類(乙1)試験で問われる第1類危険物の共通性質・火災予防・消火方法をまとめて解説します。
第1類危険物の定義
消防法 別表第1では、第1類危険物を次のように定義しています。
消防法 別表第1(第1類)
酸化性固体とは、固体であって、酸化力の潜在的な危険性を判断するための政令で定める試験において政令で定める性状を示すもの、又は衝撃に対する敏感性を判断するための政令で定める試験において政令で定める性状を示すものをいう。
ざっくり言うと、「固体で、酸化力がある(または衝撃で発火しやすい)と試験で確認されたもの」です。
「酸化力がある」とは、自分の中に持っている酸素を放出して、ほかの物質を酸化(=燃焼)させる力があるということ。たとえば花火の原料になる塩素酸カリウム(えんそさんカリウム)は、加熱すると酸素をドバッと放出するため、火薬の酸化剤として使われています。
第1類の共通性質 ― 5つのポイント
試験では「第1類に共通する性質はどれか」という形でよく出題されます。次の5点を押さえましょう。
① 自身は不燃性だが、可燃物の燃焼を促進する
第1類危険物そのものにマッチの火を近づけても燃えません。しかし、木くず・紙・硫黄などの可燃物と混ぜて加熱すると、可燃物が通常よりもはるかに激しく燃えます。これは第1類が酸素を供給するからです。
身近な例でいえば、酸素ボンベ自体は燃えないけれど、酸素が漏れた部屋でタバコに火をつけたら大炎上するのと同じ原理です。第1類は「固体版の酸素タンク」だと思ってください。
② 加熱・衝撃・摩擦で分解し、酸素を放出する
第1類は分子の中に酸素を含んでいます。加熱や衝撃を受けると分解反応が起こり、酸素ガスを放出します。この酸素が周囲の可燃物に供給されることで、爆発的な燃焼につながるのです。
③ 大部分は無色の結晶または白色の粉末
第1類の多くは見た目が「白い粉」や「無色の結晶」です。ただし例外もあります。
・過マンガン酸カリウム → 赤紫色(あかむらさきいろ)の結晶
・重クロム酸カリウム → 橙赤色(とうせきしょく=オレンジっぽい赤)の結晶
試験では「第1類は全て白色である」というひっかけ選択肢が出るので注意!
④ 比重は1より大きい(水より重い)
第1類危険物はすべて水より重い固体です。第4類(引火性液体)のように「水に浮く」ものはありません。
⑤ 水と反応するものがある(無機過酸化物)
多くの第1類は水には溶けるだけで危険な反応はしませんが、アルカリ金属の過酸化物(過酸化ナトリウム・過酸化カリウムなど)は水と反応して酸素と熱を発生します。
💡 なぜアルカリ金属の過酸化物は水と反応するのか
過酸化ナトリウム(Na₂O₂)に水を加えると、次の反応が起こります。
2Na₂O₂ + 2H₂O → 4NaOH + O₂↑
酸素と水酸化ナトリウム(強アルカリ)が生成され、さらに反応熱も出ます。まわりに可燃物があれば発火の危険があるため、水・湿気は厳禁です。
品名と指定数量
第1類危険物は、危険度に応じて第一種・第二種・第三種の3段階に分けられ、指定数量が異なります。
| 区分 | 指定数量 | 品名 |
|---|---|---|
| 第一種 酸化性固体 |
50 kg | 塩素酸塩類、過塩素酸塩類、無機過酸化物、亜塩素酸塩類、臭素酸塩類 |
| 第二種 酸化性固体 |
300 kg | 硝酸塩類、よう素酸塩類、過マンガン酸塩類、重クロム酸塩類 |
| 第三種 酸化性固体 |
1,000 kg | その他のもので政令で定めるもの |
覚え方のコツ:指定数量が小さいほど危険度が高いということです。塩素酸塩類(50kg)は爆発的な分解を起こしやすいため指定数量が小さく、硝酸塩類(300kg)は比較的安定なため大きくなっています。
💡 「その他のもので政令で定めるもの」って?
過よう素酸塩類、過よう素酸、クロム・鉛・よう素の酸化物、亜硝酸塩類、次亜塩素酸塩類、塩素化イソシアヌル酸、ペルオキソ二硫酸塩類、ペルオキソほう酸塩類、炭酸ナトリウム過酸化水素付加物の9品目です。試験では品名の暗記より「第三種=1,000kg」の数値を覚えておけばOKです。
全6類の指定数量一覧は「指定数量 総まとめ」も参考にしてください。
火災予防の方法
第1類は「酸素の供給源」なので、予防のポイントは「分解させない」「可燃物と混ぜない」の2点に集約されます。
共通の予防策
・加熱・衝撃・摩擦を避ける — 分解して酸素を放出し、周囲の可燃物に引火する原因になる
・可燃物・有機物との接触を避ける — 混合すると摩擦や加熱で爆発的に燃焼する危険がある
・還元性物質(強酸を含む)との混合を避ける — 酸化還元反応で急激に発熱・分解する
・通風のよい冷暗所で保管する — 高温を避け、万が一のガス発生時にも換気されるようにする
・容器を密栓して貯蔵する — 湿気や異物の混入を防ぐ
無機過酸化物(アルカリ金属の過酸化物)の追加注意点
無機過酸化物のうち、過酸化ナトリウム・過酸化カリウムなどアルカリ金属の過酸化物は、上記に加えて次の点に注意が必要です。
・水・湿気を厳禁 — 水と反応して酸素と熱を発生し、可燃物があれば発火する
・乾燥した場所で密栓保管 — 空気中の水分でも反応するため、防湿に注意
ガソリンスタンドでは第1類を見かけることは少ないですが、化学工場や花火工場では塩素酸カリウムなどが大量に保管されています。過去には可燃物との混合による爆発事故が起きており、第1類と可燃物の隔離保管は非常に重要です。
消火方法
第1類の火災では、第1類そのものが燃えているわけではありません。第1類が酸素を供給し続けることで、周囲の可燃物が激しく燃えているのです。
基本:大量の水で冷却消火
ほとんどの第1類危険物の火災には、大量の水をかけて冷却消火するのが基本です。
なぜ水が有効なのか? → 水の冷却作用で温度を分解温度以下に下げると、酸素の放出反応がストップします。酸素の供給が止まれば、可燃物の燃焼も止まります。
例外:アルカリ金属の過酸化物は注水厳禁!
ただし、過酸化ナトリウム・過酸化カリウムなど「アルカリ金属の過酸化物」は、水と反応して酸素と熱を発生するため、注水すると火災を拡大させてしまいます。
この場合は次の消火方法を使います。
・乾燥砂で覆って窒息消火
・炭酸水素塩類の粉末消火剤(いわゆるBC粉末)で消火
試験では「第1類は全て大量の水で消火する」という選択肢がひっかけとして出ます。アルカリ金属の過酸化物は例外だと覚えておきましょう。
第1類と他の類を比較してみよう
第1類と似た特徴を持つ類があるので、混同しないように整理しておきましょう。
| 類 | 性質 | 第1類との違い |
|---|---|---|
| 第1類 | 酸化性固体 | — |
| 第6類 | 酸化性液体 | 同じ「酸化性」だが液体。第1類は固体 |
| 第5類 | 自己反応性物質 | 第5類は分子内に酸素と可燃性を両方持ち、自分自身が燃える。第1類は自分では燃えない |
特に第1類と第6類は「どちらも酸化性で不燃性」という共通点がありますが、固体か液体かの違いだけです。第5類は分子内に酸素を持つ点では似ていますが、自身が燃焼する点で大きく異なります。
まとめ
第1類危険物(酸化性固体)の共通性質をおさらいします。
・自身は不燃性だが、可燃物の燃焼を促進する酸素供給源
・加熱・衝撃・摩擦で分解して酸素を放出
・大部分は白色・無色の固体で、比重は1より大きい
・アルカリ金属の過酸化物は水と反応して酸素と熱を発生(注水厳禁!)
・消火は基本大量の水で冷却、ただしアルカリ金属の過酸化物は乾燥砂
個別の物質の詳しい性質は、以下の記事で解説しています。
理解度チェック!
問1 第1類危険物(酸化性固体)の共通する性質として、正しいものはどれか。
(1)自身が燃焼する可燃性の固体である
(2)加熱すると分解して酸素を放出し、可燃物の燃焼を促進する
(3)すべて水に溶けない
(4)比重は1より小さく、水に浮く
問2 第1類危険物の火災予防について、正しいものはどれか。
(1)可燃物や有機物との接触は問題ない
(2)衝撃や摩擦を加えても分解しない
(3)アルカリ金属の過酸化物は水・湿気を避けて保管する
(4)高温の場所に保管すると安定性が増す
問3 第1類危険物の消火方法について、正しいものはどれか。
(1)すべての第1類危険物に大量の水をかけて消火すればよい
(2)第1類は不燃性なので、消火活動は不要である
(3)アルカリ金属の過酸化物は乾燥砂で窒息消火する
(4)二酸化炭素消火剤が最も効果的である
問4(応用) 第1類危険物と第5類危険物の違いについて、正しいものはどれか。
(1)第1類も第5類も自身は不燃性である
(2)第1類は酸素を放出して他の物質を燃やし、第5類は分子内に酸素と燃料を持ち自身が燃焼する
(3)第5類は酸化性物質であり、第1類と性質は同じである
(4)第1類は液体、第5類は固体である
第1類の学習をさらに進めたい方は「おすすめ参考書・問題集」もチェックしてみてください。
この科目をもっと深く学びたい方へ
SAT危険物取扱者講座
の動画講義なら、テキストだけでは理解しにくいポイントも映像で直感的に理解できます。教材比較は「参考書・問題集ガイド」へ。
あわせて読みたい
※当サイトの画像にはAI生成のものが含まれており、実際の機器・器具とは外観が異なる場合があります。問題・解答の内容には細心の注意を払っておりますが、誤りが含まれる可能性があります。学習の参考としてご活用いただき、最終的な確認は公式テキスト・法令等で行ってください。当サイトの情報に基づく判断によって生じた損害について、一切の責任を負いかねます。
内容の誤りやお気づきの点がございましたら、お問い合わせフォームよりご連絡いただけますと幸いです。正確な情報をお届けできるよう、随時修正してまいります。