乙種第1類(酸化性固体)

塩素酸塩類とは?性質・潮解性・覚え方をわかりやすく解説|第1類危険物

結論から言います

この記事で扱うのは、第1類危険物(酸化性固体)のうち最も危険度が高い第一種酸化性固体に分類される3グループです。

塩素酸塩類 — マッチや花火の原料。可燃物と混ぜると衝撃で爆発
過塩素酸塩類 — 塩素酸塩類より安定。ロケット推進薬にも使われる
無機過酸化物水と反応して酸素と熱を出す唯一の第1類。注水厳禁!

いずれも指定数量は50kg。第1類のなかでも特に注意が必要な物質群です。試験では「塩素酸塩と過塩素酸塩の安定性の違い」「カリウム塩とナトリウム塩の潮解性」「アルカリ金属の過酸化物の水との反応」が頻出テーマです。


塩素酸塩類(えんそさんえんるい)

塩素酸塩類は、塩素酸イオン(ClO₃⁻)を含む塩のグループです。加熱・衝撃で分解して酸素を放出し、可燃物との混合物は爆発的に燃焼します。

塩素酸カリウム(KClO₃)

項目 内容
外観 無色の光沢ある結晶(白色粉末)
融点 約356℃
比重 2.32
水溶性 水に溶ける(温水に溶けやすい)
潮解性 なし

約400℃以上に加熱すると分解して酸素を放出します。マッチの頭薬や花火の原料として使われており、強力な酸化剤です。

硫黄・赤りん・木炭などの可燃物と混合すると、ちょっとした摩擦や衝撃で爆発します。マッチの頭を擦ると火がつくのは、塩素酸カリウムと赤りんの混合物が衝撃で反応しているからです。

⚠️ 強酸(硫酸)との接触厳禁

塩素酸塩類に硫酸が接触すると、不安定な塩素酸(HClO₃)が遊離し、自然分解して爆発する危険があります。これは塩素酸塩類全体に共通する注意点です。

塩素酸ナトリウム(NaClO₃)

項目 内容
外観 無色無臭の結晶
融点 約248℃
比重 2.49
水溶性 極めてよく溶ける
潮解性 あり(空気中の水分を吸って溶ける)

塩素酸カリウムとの最大の違いは潮解性があること。空気中に放置すると水分を吸って溶けてしまうため、密栓して冷暗所に保管する必要があります。除草剤の原料として使われています。

塩素酸アンモニウム(NH₄ClO₃)

塩素酸アンモニウムは第1類のなかでも極めて特殊な存在です。

・外観は無色の針状結晶
約102℃で分解(他の塩素酸塩よりはるかに低い温度)
常温でも不安定で、直射日光を数分当てただけで爆発する
・分子内に酸化剤(ClO₃⁻)と還元剤(NH₄⁺)を両方含むため、自己分解しやすい

あまりに危険すぎて実務上はほとんど製造・流通していませんが、試験では「常温で不安定」という特徴が問われます。


過塩素酸塩類(かえんそさんえんるい)

過塩素酸塩類は、過塩素酸イオン(ClO₄⁻)を含む塩のグループです。「過」がつく分、酸素を1個多く含んでいますが、塩素酸塩類より安定です。

💡 なぜ「過塩素酸塩類のほうが安定」なのか?

塩素酸イオン(ClO₃⁻)は塩素の酸化数が+5で不安定な状態。過塩素酸イオン(ClO₄⁻)は塩素が+7で最高酸化数に達しており、正四面体の対称構造をとるため分子として安定です。酸素が多い=危険というわけではないのが面白いところです。

過塩素酸カリウム(KClO₄)

項目 内容
外観 無色の結晶
融点 約610℃
比重 2.52
水溶性 水に溶けにくい
潮解性 なし

約400℃以上で分解して酸素を放出。花火・爆薬の原料に使われますが、塩素酸カリウムより安定で扱いやすい特徴があります。水には非常に溶けにくいのもポイントです。

過塩素酸ナトリウム(NaClO₄)

項目 内容
外観 白色の結晶性固体
融点 約482℃
水溶性 極めてよく溶ける
潮解性 あり

ここでもナトリウム塩には潮解性があるというパターンは変わりません。密栓して保管しましょう。

過塩素酸アンモニウム(NH₄ClO₄)

項目 内容
外観 無色〜白色の結晶
比重 1.95
水溶性 水に溶けやすい
潮解性 なし
安定性 常温では安定

ロケットの固体推進薬(コンポジット推進薬)の酸化剤として世界中で使われている物質です。スペースシャトルの固体ロケットブースターにも使用されていました。

塩素酸アンモニウムが「常温で不安定」だったのに対し、過塩素酸アンモニウムは「常温で安定」です。ただし、約150℃以上で分解が始まり、可燃物と混合すると爆発性を示します。


塩素酸塩 vs 過塩素酸塩 — 比較で覚える!

試験で最も問われやすい比較ポイントを整理しましょう。

塩素酸塩類 vs 過塩素酸塩類
塩素酸塩類(ClO₃⁻)
安定性:不安定
NH₄塩:常温で不安定
強酸との反応:爆発の危険
用途:マッチ・花火
過塩素酸塩類(ClO₄⁻)
安定性:より安定
NH₄塩:常温で安定
強酸との反応:比較的安定
用途:ロケット推進薬

もう1つの頻出パターンは「カリウム塩 vs ナトリウム塩」の違いです。

比較項目 カリウム塩 ナトリウム塩
潮解性 なし あり
水への溶けやすさ 溶けにくい 非常に溶けやすい

この「ナトリウム塩は潮解性あり・よく溶ける/カリウム塩は潮解性なし・溶けにくい」というパターンは、塩素酸塩類でも過塩素酸塩類でも共通です。セットで覚えましょう。


無機過酸化物(むきかさんかぶつ)

無機過酸化物は、分子中に過酸化物イオン(O₂²⁻)を含む無機塩です。第1類のなかで最大の特徴は、水と反応して酸素と熱を発生すること。特にアルカリ金属(Na、K)の過酸化物は水との反応が激しく、注水厳禁です。

過酸化ナトリウム(Na₂O₂)

項目 内容
外観 黄白色(淡黄色)の粉末
融点 460℃
比重 2.81
水との反応 激しく発熱反応
潮解性 あり(吸湿性が強い)

水との反応式は次のとおりです。

2Na₂O₂ + 2H₂O → 4NaOH + O₂↑

水酸化ナトリウム(強アルカリ)と酸素が同時に発生し、反応熱も出ます。周囲に可燃物があれば発火・爆発の危険があります。

さらに、二酸化炭素とも反応します。

2Na₂O₂ + 2CO₂ → 2Na₂CO₃ + O₂↑

CO₂を吸収して酸素を放出する ―― この「一石二鳥」の性質を利用して、かつて潜水艦の空気清浄に使われていました。閉鎖空間のCO₂を除去しながら酸素を供給できたのです。

過酸化カリウム(K₂O₂)

・外観は黄橙色(きだいだいいろ)の粉末
・融点は約490℃
・水との反応は過酸化ナトリウムと同様に激しい
吸湿性が強く、密栓して保管

性質は過酸化ナトリウムとほぼ同じですが、色が黄橙色であることが覚えるポイントです。

過酸化バリウム(BaO₂)

項目 内容
外観 灰白色の粉末
比重 4.96
融点 450℃
水との反応 穏やか(徐々に反応)

バリウムはアルカリ土類金属です。アルカリ金属(Na、K)の過酸化物に比べて水との反応は穏やかですが、水とゆっくり反応して過酸化水素と水酸化バリウムを生成します。テルミット溶接の反応開始剤や花火に使用されています。

過酸化カルシウム(CaO₂)・過酸化マグネシウム(MgO₂)

・どちらも白色の粉末
・水との反応は穏やか(徐々に酸素を放出)
・過酸化カルシウムは農業用途(土壌への酸素供給、種子消毒)に使われている
・過酸化マグネシウムは約100℃で分解が始まり、無機過酸化物のなかでは分解温度が低い


無機過酸化物の覚え方 ― 水との反応がカギ

無機過酸化物 × 水との反応
アルカリ金属(Na・K)
水と激しく反応
酸素+熱を発生
注水厳禁
→ 乾燥砂で消火
アルカリ土類金属(Ba・Ca・Mg)
水と穏やかに反応
徐々に酸素を放出
⚠️ 注意は必要
→ 乾燥砂で消火

ただし消火方法は共通で、無機過酸化物はすべて乾燥砂や粉末消火剤で窒息消火します。水との反応の穏やかさに関わらず、注水消火は避けるのが原則です。


色の違いも頻出!

第1類の多くは「白色・無色」ですが、無機過酸化物には色がついているものがあります。

物質
過酸化ナトリウム(Na₂O₂) 黄白色(淡黄色)
過酸化カリウム(K₂O₂) 黄橙色
過酸化バリウム(BaO₂) 灰白色
過酸化カルシウム(CaO₂) 白色〜淡黄色
過酸化マグネシウム(MgO₂) 白色

まとめ

第一種酸化性固体に分類される3グループの特徴を整理します。

塩素酸塩類
・可燃物と混ぜると衝撃で爆発
・強酸(硫酸)との接触厳禁
・Na塩は潮解性あり、K塩はなし
・NH₄塩は常温で不安定(最も危険)

過塩素酸塩類
塩素酸塩類より安定
・Na塩は潮解性あり、K塩はなし
・NH₄塩は常温で安定(ロケット推進薬に使用)

無機過酸化物
水と反応して酸素と熱を発生(注水厳禁)
・アルカリ金属(Na・K)は水と激しく反応、アルカリ土類金属は穏やか
・消火は乾燥砂・粉末消火剤


理解度チェック!

問1 塩素酸塩類と過塩素酸塩類の比較について、正しいものはどれか。

(1)塩素酸塩類は過塩素酸塩類より安定である
(2)過塩素酸アンモニウムは常温で不安定であり、取扱いに細心の注意を要する
(3)過塩素酸塩類は塩素酸塩類より安定で、分解しにくい
(4)塩素酸カリウムは潮解性があり、密栓保管が必要である

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正解:(3)
過塩素酸塩類は過塩素酸イオン(ClO₄⁻)の対称構造により、塩素酸塩類より安定です。(1)は逆。(2)常温で不安定なのは塩素酸アンモニウム(NH₄ClO₃)で、過塩素酸アンモニウム(NH₄ClO₄)は常温で安定です。(4)塩素酸カリウムに潮解性はありません(潮解性があるのは塩素酸ナトリウム)。

問2 過酸化ナトリウム(Na₂O₂)について、誤っているものはどれか。

(1)黄白色の粉末で、吸湿性が強い
(2)水と激しく反応し、酸素と熱を発生する
(3)二酸化炭素と反応して酸素を発生する
(4)火災時には大量の水で消火するのが最も効果的である

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正解:(4)
過酸化ナトリウムはアルカリ金属の過酸化物であり、水と激しく反応して酸素を出すため注水消火は厳禁です。乾燥砂や粉末消火剤で消火します。(1)(2)(3)はすべて正しい記述です。

問3 無機過酸化物について、正しいものはどれか。

(1)アルカリ金属の過酸化物もアルカリ土類金属の過酸化物も、水との反応の激しさは同じである
(2)過酸化バリウムは水と激しく反応するため、特に注意が必要である
(3)過酸化ナトリウムは水と反応して水酸化ナトリウムと酸素を生成する
(4)無機過酸化物はすべて白色の粉末である

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正解:(3)
2Na₂O₂ + 2H₂O → 4NaOH + O₂ の反応で、水酸化ナトリウムと酸素が生成されます。(1)アルカリ金属(Na・K)は激しく、アルカリ土類金属(Ba・Ca・Mg)は穏やかで、反応の激しさは異なります。(2)過酸化バリウムはアルカリ土類金属なので水との反応は穏やかです。(4)過酸化ナトリウムは黄白色、過酸化カリウムは黄橙色です。

問4(応用) カリウム塩とナトリウム塩の比較で、塩素酸塩類・過塩素酸塩類に共通するパターンとして正しいものはどれか。

(1)カリウム塩は潮解性があり、ナトリウム塩にはない
(2)ナトリウム塩はカリウム塩より水に溶けにくい
(3)ナトリウム塩は潮解性があり、カリウム塩にはない
(4)カリウム塩もナトリウム塩も潮解性はない

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正解:(3)
塩素酸塩類でも過塩素酸塩類でも、ナトリウム塩には潮解性があり水によく溶け、カリウム塩には潮解性がなく水に溶けにくいという共通パターンがあります。試験では頻出の比較ポイントです。

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