結論から言います
この記事では、第1類危険物のうち前回の記事で扱わなかった残り6グループを一気に解説します。
第一種(50kg):亜塩素酸塩類、臭素酸塩類
第二種(300kg):硝酸塩類、よう素酸塩類、過マンガン酸塩類、重クロム酸塩類
試験では特に「過マンガン酸カリウムの赤紫色」「重クロム酸カリウムの橙赤色」「硝酸カリウムと硝酸ナトリウムの潮解性の違い」が頻出です。色と潮解性の違いを意識しながら読み進めてください。
亜塩素酸塩類 — 第一種(50kg)
亜塩素酸ナトリウム(NaClO₂)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 外観 | 白色の結晶(粉末) |
| 水溶性 | 水に溶けやすい |
| 分解温度 | 約140〜200℃ |
| 消火方法 | 大量の水で冷却 |
「亜」がつく分、塩素酸塩類より酸素が1つ少ない(ClO₂⁻)ですが、加熱で分解して酸素を放出する性質は同じです。
最大の注意点は酸との接触。酸と混ざると有毒な二酸化塩素(ClO₂)ガスを発生します。漂白剤や殺菌剤として浄水処理に使われています。
臭素酸塩類 — 第一種(50kg)
臭素酸カリウム(KBrO₃)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 外観 | 白色の結晶(無臭) |
| 融点 | 350℃ |
| 比重 | 3.27 |
| 水溶性 | 水に溶ける |
| 消火方法 | 大量の水で冷却 |
約370℃で分解して酸素を放出し、臭化カリウム(KBr)になります。
身近な話題として、臭素酸カリウムはかつてパン生地の改良剤として使われていました。生地のグルテンを強化してふっくらしたパンになる効果があるのですが、動物実験で発がん性が確認されたため、現在はEUや中国では全面禁止。日本でもパン以外の使用は禁止され、パンでも最終製品に残留しない条件でのみ使用が認められています。
硝酸塩類 — 第二種(300kg)
硝酸塩類は硝酸イオン(NO₃⁻)を含む塩です。指定数量300kgと比較的安定ですが、加熱で酸素を放出する性質は共通です。
硝酸カリウム(KNO₃)= 硝石(しょうせき)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 外観 | 無色の柱状結晶 |
| 融点 | 339℃ |
| 比重 | 2.11 |
| 水溶性 | 水に溶けやすい(特に温水) |
| 潮解性 | なし |
黒色火薬の主成分として歴史的に有名です。黒色火薬は硝酸カリウム75%+木炭15%+硫黄10%の配合で、硝酸カリウムが酸化剤(酸素の供給源)として機能します。花火や発煙筒にも使われています。
硝酸塩類のなかでカリウム塩だけが潮解性がないことが試験のポイントです。
硝酸ナトリウム(NaNO₃)= チリ硝石
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 外観 | 無色の結晶 |
| 融点 | 308℃ |
| 比重 | 2.26 |
| 水溶性 | 水に溶けやすい |
| 潮解性 | あり |
南米チリのアタカマ砂漠で大量に産出されることから「チリ硝石」とも呼ばれます。硝酸カリウムとの最大の違いは潮解性があること。空気中の水分を吸って溶けるため、密栓保管が必要です。
硝酸アンモニウム(NH₄NO₃)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 外観 | 白色の結晶 |
| 融点 | 169.6℃ |
| 比重 | 1.73 |
| 水溶性 | 極めて溶けやすい |
| 潮解性 | あり(吸湿性が高い) |
化学肥料として世界中で大量に使われている物質ですが、密閉状態で高温にさらされたり、強い衝撃を受けると爆発します。1分子のなかにアンモニウム(NH₄⁺=燃料)と硝酸(NO₃⁻=酸化剤)の両方を含むため、条件がそろうと自己分解的に爆発するのです。
💡 ベイルート港爆発事故(2020年)
2020年8月、レバノンの首都ベイルートの港湾倉庫に6年間放置されていた約2,750トンの硝酸アンモニウムが爆発。TNT換算で1,000〜1,500トン相当の大爆発でした。この事故は硝酸アンモニウムの危険性を世界に再認識させました。
よう素酸塩類 — 第二種(300kg)
よう素酸カリウム(KIO₃)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 外観 | 無色の結晶 |
| 融点 | 560℃(分解を伴う) |
| 比重 | 3.89 |
| 水溶性 | 水に溶ける |
| 消火方法 | 大量の水で冷却 |
ハロゲンの酸素酸塩(塩素酸・臭素酸・よう素酸)のなかでは最も安定です。ハロゲンの原子番号が大きくなるほど安定性が増す傾向があります。主に分析試薬として使われています。可燃物との混合・加熱は避ける必要がありますが、単体では比較的安定な物質です。
過マンガン酸塩類 — 第二種(300kg)
過マンガン酸塩類はマンガン(Mn)の酸化数が+7(最高酸化数)の塩で、極めて強い酸化力を持ちます。
過マンガン酸カリウム(KMnO₄)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 外観 | 赤紫色(黒紫色)の柱状結晶 |
| 融点 | 約240℃(分解を伴う) |
| 比重 | 2.70 |
| 水溶性 | 水に溶ける(水溶液も赤紫色) |
| 潮解性 | なし |
第1類のなかで「色がある」代表格。赤紫色(あかむらさきいろ)の結晶で、水溶液も濃い赤紫色になります。この色は試験に超頻出です。
約200℃以上で分解して酸素を放出。酸化力が極めて強く、次のような危険な反応を起こします。
・有機物(グリセリンなど)と混合 → 激しい発熱で自然発火
・濃硫酸と混合 → 爆発性の七酸化二マンガン(Mn₂O₇)を生成
・濃塩酸と反応 → 有毒な塩素ガスを発生
消毒剤・浄水処理・分析試薬として幅広く使われています。
過マンガン酸ナトリウム(NaMnO₄)
過マンガン酸カリウムとほぼ同じ性質ですが、違いが2点あります。
・潮解性がある(カリウム塩にはない)
・水への溶解度が大きい
またしてもナトリウム塩は潮解性あり。このパターンは第1類全体で共通です。
重クロム酸塩類 — 第二種(300kg)
重クロム酸塩類はクロム(Cr)の酸化数が+6の塩です。六価クロム化合物のため発がん性・強い毒性があります。
重クロム酸カリウム(K₂Cr₂O₇)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 外観 | 橙赤色(だいだいあかいろ)の柱状結晶 |
| 融点 | 398℃ |
| 比重 | 2.68 |
| 水溶性 | 水に溶ける |
| 分解温度 | 約500℃ |
過マンガン酸カリウムの「赤紫色」と並んで、重クロム酸カリウムの「橙赤色」は試験で必ず問われるポイントです。この2つの色は対比で覚えましょう。
約500℃で分解して酸素を放出。強い酸化剤で、有機物との接触で発火の危険があります。酸化剤・分析試薬・皮なめし等に使われています。
重クロム酸アンモニウム((NH₄)₂Cr₂O₇)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 外観 | 橙赤色〜赤褐色の結晶 |
| 比重 | 2.15 |
| 水溶性 | 水に溶けやすい |
| 分解温度 | 約170℃(かなり低い!) |
重クロム酸カリウム(500℃)に比べて分解温度が170℃と大幅に低いのが最大の特徴です。
加熱すると窒素ガスと水蒸気を噴出しながら、緑色の酸化クロム(Cr₂O₃)が火山噴火のように盛り上がります。この反応は「ケミカルボルケーノ(化学火山)」という有名な化学実験で知られています。
色で見分ける!試験の最頻出比較
第1類危険物の多くは「白色・無色」ですが、過マンガン酸塩類と重クロム酸塩類だけは色があるのが試験で狙われるポイントです。
潮解性パターンの総まとめ
第1類全体を通して、ナトリウム塩は潮解性あり・カリウム塩は潮解性なしが基本パターンです。硝酸塩類も例外ではありません。
| 物質 | 潮解性 |
|---|---|
| 硝酸カリウム | なし |
| 硝酸ナトリウム | あり |
| 硝酸アンモニウム | あり |
| 過マンガン酸カリウム | なし |
| 過マンガン酸ナトリウム | あり |
アンモニウム塩は物質によって異なりますが(硝酸アンモニウムは潮解性あり)、「K=なし/Na=あり」の法則はほぼ例外なく成立します。
まとめ
この記事で扱った6グループの要点を整理します。
第一種(50kg)
・亜塩素酸塩類 — 酸との接触で有毒なClO₂ガス発生
・臭素酸塩類 — 臭素酸カリウムは元パン改良剤、発がん性で規制
第二種(300kg)
・硝酸塩類 — 硝酸K=黒色火薬の原料(潮解性なし)、硝酸NH₄=肥料+爆薬
・よう素酸塩類 — 比較的安定、分析試薬
・過マンガン酸塩類 — 赤紫色、有機物で自然発火、硫酸で爆発
・重クロム酸塩類 — 橙赤色、六価クロムで毒性強い
理解度チェック!
問1 第1類危険物の物質と色の組み合わせとして、正しいものはどれか。
(1)過マンガン酸カリウム — 橙赤色
(2)重クロム酸カリウム — 赤紫色
(3)過マンガン酸カリウム — 赤紫色
(4)硝酸カリウム — 赤紫色
問2 硝酸塩類について、正しいものはどれか。
(1)硝酸カリウムは潮解性がある
(2)硝酸ナトリウムは潮解性がない
(3)硝酸アンモニウムは密閉状態で加熱すると爆発する危険がある
(4)硝酸塩類はすべて水に溶けにくい
問3 過マンガン酸カリウムについて、誤っているものはどれか。
(1)水溶液は赤紫色を呈する
(2)グリセリンと混合すると自然発火する危険がある
(3)潮解性があるため、密栓して保管する必要がある
(4)濃硫酸と接触すると爆発性の物質を生成する
問4(応用) 重クロム酸アンモニウムの性質として、正しいものはどれか。
(1)白色の結晶で、分解温度は約500℃である
(2)重クロム酸カリウムと同じ約500℃で分解する
(3)加熱すると窒素ガスと水蒸気を出して分解し、緑色の酸化クロムが残る
(4)六価クロム化合物ではないため、毒性は低い
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