結論から言います — 金属の性質とイオン化傾向の要点
金属は危険物取扱者試験で意外と出題されるテーマです。「金属の一般的な性質」「イオン化傾向」「腐食と不動態」の3つがポイント。
要点をまとめると――
- 金属の共通性質 → 光沢がある・電気と熱をよく伝える・たたくと薄く伸びる
- イオン化傾向 → 金属が「陽イオンになりやすい順番」を並べたもの。カリウムが最も反応しやすく、金が最も安定
- 腐食 → 金属が酸素や水と反応してボロボロになること。鉄のサビが代表例
- 不動態 → アルミや鉄の表面にできる薄い酸化被膜が、それ以上の腐食を防ぐ現象
- 合金 → 2種類以上の金属を混ぜて性質を改良したもの。ステンレス・ジュラルミンなど
危険物ではアルカリ金属(ナトリウム・カリウム)が第3類に分類されるなど、金属の性質がそのまま出題に直結します。基本をしっかり押さえましょう。
金属の一般的な性質 — 共通する5つの特徴
金属と聞くと「鉄」「銅」「アルミ」を思い浮かべますが、これらに共通する性質があります。試験ではこの「金属の一般的性質」がそのまま問われます。
金属に共通する5つの性質
- 金属光沢 — 磨くとピカピカ光る。鏡やアクセサリーに使われるのはこの性質
- 電気伝導性 — 電気をよく通す。銅線が電気配線に使われるのはこのため
- 熱伝導性 — 熱をよく伝える。フライパンが金属製なのはこの性質を利用
- 展性(てんせい) — たたくと薄く広がる(金箔=金を叩いて極薄にしたもの)
- 延性(えんせい) — 引っ張ると細く伸びる(銅線=銅を引き伸ばしたもの)
「展性」と「延性」は紛らわしいですが、展=広げる、延=伸ばすと漢字で覚えればOKです。
磨くと光る
電気を通す
熱を伝える
薄く広がる
細く伸びる
電気・熱の伝導性ランキング
「金属は電気を通す」とは言っても、通しやすさには差があります。覚えておくと便利なのがこの順番です。
電気伝導性:銀 > 銅 > 金 > アルミニウム > 鉄
銀が1位ですが高価なので、日常では2位の銅が電線に使われています。電気伝導性と関連する静電気の知識は「静電気と電気の基礎をわかりやすく解説」で詳しく紹介しています。コスパ重視でアルミが使われることもあります(送電線など)。
熱伝導性も同じ傾向で、銀 > 銅 > 金 > アルミニウムの順です。
イオン化傾向 — 金属の「反応しやすさ」ランキング
金属を水や酸に入れたとき、激しく反応するものもあれば、まったく変化しないものもあります。この「陽イオンになりやすさの順番」がイオン化傾向(イオン化列)です。
イオン化列(覚え方つき)
K(カリウム)→ Ca(カルシウム)→ Na(ナトリウム)→ Mg(マグネシウム)→ Al(アルミニウム)→ Zn(亜鉛)→ Fe(鉄)→ Ni(ニッケル)→ Sn(スズ)→ Pb(鉛)→(H)→ Cu(銅)→ Hg(水銀)→ Ag(銀)→ Pt(白金)→ Au(金)
語呂合わせで覚えましょう:
「貸そうかな、まあ当てにすんな、ひどすぎる借金」
(Ka Ca Na / Ma Al / あて(Zn)に す(Sn)んな / ひど(H)すぎる / しゃっきん(Ag Pt Au))
イオン化傾向でわかること
この順番がわかると、金属の反応がスッキリ理解できます。
| イオン化傾向 | 反応の特徴 |
| K〜Na(大きい) | 常温の水と激しく反応。水素を発生し、発火することも → だから第3類危険物に分類される! |
| Mg〜Fe(中程度) | 熱水や酸と反応。日常では徐々にサビていく |
| Hより上 | 酸に溶けて水素を発生する |
| Cu〜Au(小さい) | 酸にも溶けにくい(王水など特殊な液にしか溶けない) → だから金やプラチナは何千年もサビない |
「Hより上の金属は酸に溶けて水素を発生する」というのは特に重要。試験でもよく問われます。
身近な例で言えば、亜鉛(Zn)のメッキが鉄を守るトタン板。亜鉛のほうがイオン化傾向が大きいので、亜鉛が先に溶けて鉄の腐食を防いでくれます。これを犠牲陽極(ぎせいようきょく)と言います。
腐食 — 金属がサビるしくみ
金属が空気中の酸素や水分と反応して、表面がボロボロになっていく現象を腐食(ふしょく)と言います。身近なところでは鉄のサビがまさにこれです。
4Fe + 3O₂ → 2Fe₂O₃(酸化鉄=赤サビ)
鉄が酸素と結びついて酸化鉄になる――これは「酸化と還元をわかりやすく解説」で学んだ酸化反応そのものですね。
腐食しやすい条件
- 水分が多い環境 — 雨ざらし、湿度の高い場所
- 塩分がある環境 — 海沿いの鉄が早くサビるのはこのため
- 異種金属が接触している — イオン化傾向の異なる金属を接触させると、一方が早く腐食する(電食とも呼ぶ)
- 酸性の環境 — 酸性雨に晒されると腐食が進む
危険物の現場では、タンクや配管の腐食が漏洩事故につながる大問題です。定期点検で腐食をチェックするのも、こうした理由からです。
腐食を防ぐ方法
- 塗装・メッキ — 表面を覆って酸素や水を遮断する
- 犠牲陽極 — イオン化傾向の大きい金属(亜鉛など)を取り付けて、先に溶けてもらう(これは酸化と還元の応用です)
- 合金にする — ステンレス鋼のように、サビにくい元素を混ぜる
- 不動態を利用する — 次のセクションで詳しく解説
不動態 — 表面の酸化被膜が身を守る
不動態(ふどうたい)とは、金属の表面に緻密な酸化被膜(さんかひまく)ができて、それ以上の腐食を防ぐ状態のことです。
イメージとしては、鎧(よろい)を着た金属。薄い酸化物の層が「鎧」となって、内部の金属を酸素や酸から守ってくれます。
不動態を形成する代表的な金属
- アルミニウム(Al) — 表面にAl₂O₃(酸化アルミニウム)の被膜を形成。アルミサッシがサビにくいのはこのおかげ
- 鉄(Fe) — 濃硝酸に浸すと表面に酸化被膜ができて、それ以上溶けなくなる
- ニッケル(Ni) — クロムと合わせてステンレス鋼の耐食性に貢献
- クロム(Cr) — 非常に安定な酸化被膜を形成。ステンレスのキーパーツ
試験での頻出ポイントは「鉄を濃硝酸に浸すと不動態になる」ということ。普通の酸(希塩酸など)には溶けるのに、濃硝酸だと逆に溶けなくなるという一見矛盾した現象です。
これは濃硝酸の強い酸化力で表面に緻密な酸化被膜が一気にできるため。希硝酸のように少しずつ溶かすのではなく、表面を一気にコーティングしてしまうわけです。
合金 — 金属を混ぜて性能アップ
合金(ごうきん)とは、2種類以上の金属(または金属と非金属)を溶かし合わせたもので、混合物に分類されます(化合物ではありません)。物質の分類については「化学の基礎をわかりやすく解説」を参照してください。元の金属にはない優れた性質を持たせることができます。
| 合金名 | 成分 | 特徴・用途 |
| ステンレス鋼 | 鉄+クロム(+ニッケル) | サビにくい。キッチン用品・タンク |
| ジュラルミン | アルミ+銅+マグネシウム | 軽くて丈夫。航空機の機体 |
| 黄銅(おうどう) | 銅+亜鉛 | 加工しやすい。5円玉・楽器 |
| 青銅(せいどう) | 銅+スズ | 硬くて耐食性あり。銅像・10円玉 |
| はんだ | スズ+鉛 | 融点が低い。電子部品の接合 |
合金のポイントは「元の金属より融点が下がることが多い」こと。はんだが低温で溶けるのはこの性質を利用しています。
危険物の観点では、タンクの材質がステンレス鋼であることが多いのは、腐食による漏洩を防ぐためです。貯蔵する危険物の種類によって適切な材質を選ぶ必要があり、これも試験の出題範囲に入ります。各危険物の引火点・発火点・燃焼範囲を理解しておくことも大切です。
危険物と金属の関係 — 試験頻出ポイント
第3類危険物のアルカリ金属
イオン化傾向が非常に大きいカリウム(K)とナトリウム(Na)は、第3類危険物(自然発火性・禁水性物質)に分類されています。
- 水と激しく反応して水素を発生 → 発火・爆発の危険
- 空気中でも酸化が進む → 灯油中で保存
- イオン化傾向が大きい=反応性が非常に高い、ということ
イオン化傾向の知識があれば、「なぜナトリウムやカリウムが危険物なのか」が納得できますね。
金属粉の危険性
鉄粉・アルミニウム粉・亜鉛粉・マグネシウムは、第2類危険物(可燃性固体)に分類されます。塊の状態では安定な金属でも、粉末にすると表面積が爆発的に増えて、空気中で燃えやすくなります(粉じん爆発の危険)。粉じん爆発は「燃焼の仕組みをわかりやすく解説」で詳しく解説しています。なお、第4類危険物の共通性質で学ぶ引火性液体の蒸気も、同じく空気と混合して爆発の危険があります。
濃硝酸と不動態
第6類の硝酸に関連して、「鉄やアルミを濃硝酸に浸すと不動態になり溶けない」という知識も出題されます。「濃」がポイント。希硝酸なら普通に溶けるので、間違えないようにしましょう。
間違えやすい5つの引っかけ
1. イオン化傾向が大きい=「安定」と勘違い
→ 逆。イオン化傾向が大きい=酸化されやすい=腐食しやすい
2. 「銅も濃硝酸で不動態になる」と答える
→ 不動態を形成するのはAl・Fe・Ni。銅は含まれない。濃硝酸がカギ
3. 「金属は全て常温で固体」と答える
→ 水銀(Hg)は常温で唯一の液体金属
4. 合金を「化合物」と答える
→ 合金は混合物。化学反応ではなく、溶かして混ぜたもの
5. イオン化傾向が大きい金属が「正極」
→ 逆。イオン化傾向が大きいほうが負極(−)
✔ イオン化列:「貸そうかな、まあ当てにすんな、ひどすぎる借金」
✔ 不動態3金属:Al・Fe・Ni(+Cr)が濃硝酸で形成
✔ 水銀 = 常温で唯一の液体金属
✔ 腐食 = 酸化反応。イオン化傾向が大きいほど腐食しやすい
✔ 合金 = 混合物。融点は元の金属より低くなることが多い
まとめ問題で理解度チェック!
金属の性質について確認しましょう。
【問題1】金属の性質
金属の一般的な性質として、誤っているものはどれか。
- 磨くと光沢がある
- 電気をよく通す
- たたくと粉々に砕ける
- 引っ張ると細く伸びる
【問題2】イオン化傾向
次の金属のうち、イオン化傾向が最も大きいものはどれか。
- 銅(Cu)
- 鉄(Fe)
- ナトリウム(Na)
- 銀(Ag)
【問題3】腐食と防食
鉄の腐食を防ぐ方法として、誤っているものはどれか。
- 表面に塗装を施して酸素と水を遮断する
- 亜鉛メッキを施す(トタン)
- 常に水に浸しておく
- ステンレス鋼(合金)にする
【問題4】不動態
不動態に関する記述として正しいものはどれか。
- 鉄を希塩酸に浸すと不動態が形成される
- 不動態は金属の表面が溶解して粗くなった状態である
- アルミニウムを濃硝酸に浸すと不動態が形成される
- 金や白金は不動態を形成しやすい
【問題5】応用 — 危険物と金属
ナトリウムやカリウムが第3類危険物(禁水性物質)に分類される理由として、最も適切なものはどれか。
- 金属光沢を持ち、電気をよく通すため
- イオン化傾向が小さく、化学的に安定しているため
- イオン化傾向が非常に大きく、水と激しく反応して発火するおそれがあるため
- 融点が高く、火災時に燃えにくいため
金属の性質がわかると、第2類(金属粉)や第3類(アルカリ金属)の危険物がなぜ危ないのかが根本から理解できます。イオン化傾向の順番はぜひ覚えておきましょう!
【問題6】総合応用 — 金属の性質と腐食・不動態
金属に関する記述として、正しいものの組合せはどれか。
ア. 亜鉛メッキされた鉄板(トタン)では、傷がついて鉄が露出しても亜鉛が先にイオン化して鉄の腐食を防ぐ。
イ. ステンレス鋼は鉄とクロムの化合物であり、化学的に安定な新物質である。
ウ. 鉄を濃硝酸に浸すと不動態が形成されるが、希硝酸では鉄は溶解する。
エ. 水銀は常温で固体の金属であり、蒸気圧が非常に低いため安全に取り扱える。
- ア・イ
- ア・ウ
- イ・エ
- ウ・エ
さらに深く学びたい方へ
金属やイオン化傾向は物理化学の中でも応用問題が多いテーマです。体系的に学ぶなら参考書や通信講座がおすすめです。
- 教材の選び方は「乙4おすすめ参考書・問題集」で詳しく紹介しています
- スマホで動画学習するなら → SAT危険物取扱者講座

あわせて読みたい
※当サイトの画像にはAI生成のものが含まれており、実際の機器・器具とは外観が異なる場合があります。問題・解答の内容には細心の注意を払っておりますが、誤りが含まれる可能性があります。学習の参考としてご活用いただき、最終的な確認は公式テキスト・法令等で行ってください。当サイトの情報に基づく判断によって生じた損害について、一切の責任を負いかねます。
内容の誤りやお気づきの点がございましたら、お問い合わせフォームよりご連絡いただけますと幸いです。正確な情報をお届けできるよう、随時修正してまいります。