結論から言います
第3類危険物のうち、品名1〜6にあたる6つの物質(グループ)を個別に解説します。試験で最も問われるポイントは次の3つです。
- リチウムだけが「禁水性のみ」で自然発火性がない
- 黄りんだけが「自然発火性のみ」で禁水性がない(水中保存する)
- アルキルアルミニウムは第3類で最も危険 — 空気でも水でもハロゲンでも発火し、消火方法が極めて限られる
アルカリ金属3つ(K・Na・Li)は数値の比較が頻出、黄りんは保存方法と毒性がポイント、アルキル系2つは消火の困難さが問われます。物質ごとの違いを押さえていきましょう。
カリウム(K)— 指定数量10kg
カリウムは銀白色のやわらかい金属で、ナイフで切れるほどの軟らかさです。第3類の中でも反応性が非常に高く、ナトリウムより激しく水と反応します。
| 項目 | カリウムの性質 |
|---|---|
| 化学式 | K(原子量 39.1) |
| 外観 | 銀白色の軟らかい金属 |
| 融点 | 63.7℃(ナトリウムより低い) |
| 沸点 | 774℃ |
| 比重 | 0.86(水より軽い) |
| 炎色反応 | 紫色(赤紫) |
| 分類 | 自然発火性 + 禁水性(両方あり) |
| 危険等級 | I |
水との反応
カリウムが水に触れると、水素ガス(H₂)を発生させながら激しく反応します。
2K + 2H₂O → 2KOH + H₂↑
反応熱で水素に火がつき、紫色の炎を上げて燃えます。ナトリウムよりも反応が激しく、少量の水でも爆発的に反応することがあります。
保存方法と消火
カリウムは灯油(保護液)の中に沈めて保存します。比重が0.86で灯油(比重約0.8)より重いため、灯油中に沈んで空気と水分を遮断できます。
消火には乾燥砂・膨張ひる石・膨張真珠岩を使います。注水は絶対に厳禁です。
ナトリウム(Na)— 指定数量10kg
ナトリウムもカリウムと同じアルカリ金属で、銀白色の軟らかい金属です。カリウムほどではありませんが、水との反応は十分に激しく危険です。
| 項目 | ナトリウムの性質 |
|---|---|
| 化学式 | Na(原子量 23.0) |
| 外観 | 銀白色の軟らかい金属 |
| 融点 | 97.8℃(カリウムより高い) |
| 沸点 | 883℃ |
| 比重 | 0.97(水より軽い) |
| 炎色反応 | 黄色 |
| 分類 | 自然発火性 + 禁水性(両方あり) |
| 危険等級 | I |
水との反応
ナトリウムも水と反応して水素ガスを発生させます。反応式はカリウムと同じ形です。
2Na + 2H₂O → 2NaOH + H₂↑
黄色い炎を上げて反応します。カリウムよりは穏やかですが、塊を水に投げ込むと爆発的に反応するため危険です。
ナトリウムとカリウムの違い — 試験頻出!
この2つの比較はよく出題されます。「カリウムの方が融点が低く、反応が激しい」と覚えましょう。
| 比較項目 | カリウム(K) | ナトリウム(Na) |
|---|---|---|
| 融点 | 63.7℃ | 97.8℃ |
| 沸点 | 774℃ | 883℃ |
| 比重 | 0.86 | 0.97 |
| 炎色反応 | 紫色 | 黄色 |
| 水との反応 | より激しい | やや穏やか |
| 保存方法 | 灯油中 | 灯油中 |
覚え方のコツ — 周期表で下にいくほど反応性が高く、融点が低くなる(Li → Na → K の順)。だからカリウムが一番危険で融点も一番低い、と覚えましょう。
保存方法と消火
ナトリウムも灯油中に保存します。比重0.97で灯油(約0.8)より重いので、灯油中に沈みます。消火は乾燥砂・膨張ひる石・膨張真珠岩。注水厳禁です。
リチウム(Li)— 指定数量300kg
リチウムは第3類危険物の中でも特殊な存在です。なぜなら、「禁水性のみ」で自然発火性がない唯一の物質だからです。これは試験で超頻出のひっかけポイントです。
| 項目 | リチウムの性質 |
|---|---|
| 化学式 | Li(原子量 6.94) |
| 外観 | 銀白色の軟らかい金属 |
| 融点 | 180.5℃(Na・Kより高い) |
| 沸点 | 1,347℃ |
| 比重 | 0.534(全金属中で最も軽い) |
| 炎色反応 | 赤色(深紅色) |
| 分類 | 禁水性のみ(自然発火性なし) |
| 危険等級 | III |
なぜリチウムだけ「自然発火性なし」なのか?
リチウムは周期表でアルカリ金属の一番上に位置し、Na・Kに比べて反応性が低いのが特徴です。常温の空気中では酸化されにくく、自然発火しません。ただし水とは反応するため「禁水性」だけが該当します。
2Li + 2H₂O → 2LiOH + H₂↑
Na・Kに比べて穏やかに反応しますが、水素ガスが発生する点は同じです。
保存方法 — 灯油に浮くのがポイント!
Na・Kは灯油中に保存しますが、リチウムには灯油中保存が使えません。なぜなら、リチウムの比重は0.534で、灯油(比重約0.8)よりも軽いため灯油に浮いてしまうからです。
リチウムは不活性ガス(窒素やアルゴン)を封入した容器で保存するか、流動パラフィンに沈めて保存します。
消火は乾燥砂・膨張ひる石・膨張真珠岩。注水厳禁です。
リチウムの試験ポイントまとめ
- 「禁水性のみ」で自然発火性がない → 超頻出ひっかけ
- 比重0.534 → 全金属中で最も軽い→ 灯油にも浮くから灯油中保存は不適切
- 融点180.5℃ → Na(97.8℃)やK(63.7℃)より高い
- 指定数量300kg → Na・Kの10kgに比べてずっと多い(危険等級が低い=IIIだから)
- 炎色反応 → 赤色
黄りん(おうりん / P₄)— 指定数量20kg
黄りんはリチウムとは正反対の特殊な物質です。「自然発火性のみ」で禁水性がない — つまり水中に保存するという、第3類の中では唯一の例外です。
| 項目 | 黄りんの性質 |
|---|---|
| 化学式 | P₄(分子量 124) |
| 外観 | 白色〜淡黄色のロウ状固体 |
| 融点 | 44.1℃ |
| 沸点 | 280℃ |
| 比重 | 1.82(水より重い → 水中に沈む) |
| 発火点 | 約34℃(体温より低い!) |
| 毒性 | 猛毒(致死量 約0.05g) |
| 分類 | 自然発火性のみ(禁水性なし) |
| 危険等級 | II |
なぜ空気中で自然に燃えるのか?
黄りんの発火点は約34℃で、人間の体温よりも低い温度です。空気中に放置すると徐々に酸化が進み、反応熱が蓄積して発火点に達すると自然に燃え出します。
暗い場所では青白いりん光を発するのも特徴です。「りん光」という言葉の語源にもなった物質です。
燃えると五酸化二りん(P₂O₅)の白煙を生じます。この煙は腐食性・毒性があるため、消火活動時にも注意が必要です。
保存方法 — 水の中に沈める
黄りんは禁水性がないため、水中に保存します。比重が1.82で水より重いので、水中にしっかり沈んで空気との接触を完全に遮断できます。
身近なイメージでいうと、「空気に触れたら燃えるものを、水の中に閉じ込めておく」ということです。Na・Kとは正反対の保存方法ですね。
消火方法 — 水が使える!
禁水性がない黄りんには、水(霧状放水)による冷却消火が使えます。ただし、黄りんは融点が44.1℃と低いため溶融している可能性があり、棒状の強い放水は厳禁です(溶けた黄りんが飛散して延焼する危険があるため)。霧状放水で冷却するか、乾燥砂で覆って窒息消火します。
赤りん(第2類)との違い — 同素体なのに別の類!
黄りんと赤りんはりんの同素体(同じ元素でできているが構造が異なる物質)です。性質はまるで違います。
| 比較項目 | 黄りん(第3類) | 赤りん(第2類) |
|---|---|---|
| 発火点 | 約34℃ | 260℃ |
| 毒性 | 猛毒 | 毒性なし |
| 自然発火 | する | しない |
| 保存方法 | 水中 | 火気を避けて保存 |
| 色 | 白〜淡黄色 | 赤褐色 |
「黄りんは猛毒で空気に触れると燃える、赤りんは無毒で安定」と覚えておきましょう。マッチの側薬(こすると火がつく面)に使われているのは安全な赤りんの方です。
アルキルアルミニウム — 指定数量10kg
アルキルアルミニウムは、第3類で最も危険な物質といわれています。空気でも水でもハロゲンでも発火し、有効な消火方法がほとんどありません。
代表物質はトリエチルアルミニウム(Al(C₂H₅)₃)で、ポリエチレン製造のチーグラー・ナッタ触媒として工業的に重要な物質です。
| 項目 | アルキルアルミニウムの性質 |
|---|---|
| 代表物質 | トリエチルアルミニウム Al(C₂H₅)₃ |
| 外観 | 無色の液体 |
| 比重 | 0.832(水より軽い) |
| 自然発火 | 空気中で即座に自然発火 |
| 水との反応 | 爆発的に反応(エタンガス発生) |
| 分類 | 自然発火性 + 禁水性(両方あり) |
| 危険等級 | I |
あらゆるものと反応する
アルキルアルミニウムの最大の特徴は、反応しないものを探す方が難しいほど何とでも反応することです。
- 空気 → 即座に自然発火
- 水 → 爆発的に反応してエタンガスを発生
- ハロゲン(塩素・臭素など) → 激しく反応して有毒ガスを発生
Al(C₂H₅)₃ + 3H₂O → Al(OH)₃ + 3C₂H₆↑
水との反応でエタン(C₂H₆)が発生し、これが空気中で燃えてさらに被害を拡大させます。
消火方法 — 消火が極めて困難
アルキルアルミニウムの火災では、使える消火手段がほとんどありません。
- 水 → 爆発的に反応 → 使用不可
- 泡消火剤 → 水分を含む → 使用不可
- ハロゲン化物消火剤 → 有毒ガス発生 → 使用不可
- CO₂消火剤 → 効果不十分 → 使用不可
基本的には乾燥砂で流出を防ぎ、燃え尽きるのを待つしかありません。そのため「漏洩させないこと」が最も重要な予防策です。
保存方法
アルキルアルミニウムは不活性ガス(窒素・アルゴン)を封入した密閉容器で保存します。灯油中保存ではなく、気密管理が基本です。
アルキルリチウム — 指定数量10kg
アルキルリチウムはアルキルアルミニウムと似た性質を持ちますが、危険性はやや低めです。代表物質はn-ブチルリチウム(C₄H₉Li)で、通常はヘキサン溶液(15〜20%濃度)として保存・使用されます。
| 項目 | アルキルリチウムの性質 |
|---|---|
| 代表物質 | n-ブチルリチウム C₄H₉Li |
| 外観 | 無色〜黄褐色の液体 |
| 比重 | 0.77〜0.84(水より軽い) |
| 自然発火 | 空気と接触すると白煙を生じ発火 |
| 水との反応 | 激しく反応(ブタンガス発生) |
| 分類 | 自然発火性 + 禁水性(両方あり) |
| 危険等級 | I |
水との反応
C₄H₉Li + H₂O → C₄H₁₀ + LiOH
水との反応でブタン(C₄H₁₀)が発生します。アルキルアルミニウムでは「エタン」、アルキルリチウムでは「ブタン」が出る — この違いが出題されることがあります。
アルキルアルミニウムとの違い
アルキルリチウムはアルキルアルミニウムほど激しくは反応しませんが、自然発火性と禁水性の両方を持つ点は同じです。大きな違いはハロゲン化物消火剤の扱いです。
| 比較項目 | アルキルアルミニウム | アルキルリチウム |
|---|---|---|
| 水との反応で出るガス | エタン | ブタン |
| ハロゲン化物消火剤 | 使用厳禁 | 塩素系は禁忌 |
| 保存方法 | 不活性ガス封入 | 不活性ガス封入(ヘキサン溶液) |
| 基本消火 | 乾燥砂+燃え尽き待ち | 乾燥砂+燃え尽き待ち |
保存方法と消火
アルキルリチウムも不活性ガス封入で保存します。通常はヘキサン(引火性液体)に溶かした状態で密封容器に入っています。
消火は乾燥砂で流出を防ぎ、燃え尽きるのを待つのが基本。注水厳禁です。
6物質の横断まとめ
保存方法の分類
比重と指定数量の比較
| 物質 | 比重 | 指定数量 |
|---|---|---|
| リチウム | 0.534 | 300kg |
| アルキルリチウム | 0.77〜0.84 | 10kg |
| アルキルアルミニウム | 0.832 | 10kg |
| カリウム | 0.86 | 10kg |
| ナトリウム | 0.97 | 10kg |
| 黄りん | 1.82 | 20kg |
黄りんだけが比重1以上で水より重い点に注目です。だからこそ水中保存ができるのです。
炎色反応まとめ
| 物質 | 炎色 | 覚え方 |
|---|---|---|
| リチウム(Li) | 赤色 | リ → 赤(り=あか) |
| ナトリウム(Na) | 黄色 | ナトリウムランプ=黄色い街灯 |
| カリウム(K) | 紫色 | K=紫(Kの色) |
まとめ — 試験対策の最終チェック
- 「禁水性のみ」= リチウム / 「自然発火性のみ」= 黄りん — この2つは絶対覚える
- 灯油中保存はK と Na(灯油より重いから沈む)
- リチウムは灯油に浮くので灯油中保存は不適切(不活性ガスまたは流動パラフィン)
- 黄りんは水中保存(禁水性なし・比重1.82で沈む)
- アルキル系は不活性ガス封入
- アルキルアルミニウムにはハロゲン化物消火剤は絶対に使わない
- K の方が Na より融点が低く・反応が激しい
- 炎色反応:Li=赤、Na=黄、K=紫
理解度チェック!ミニテスト
問題1 第3類危険物のうち、「自然発火性」のみを有し「禁水性」を有しない物質として正しいものはどれか。
(1)リチウム (2)カリウム (3)黄りん (4)ナトリウム
問題2 リチウムの保存方法として適切でないものはどれか。
(1)窒素ガスを封入した容器で保存する (2)アルゴンガスを封入した容器で保存する (3)灯油中に沈めて保存する (4)流動パラフィン中に保存する
問題3 アルキルアルミニウムの消火方法として適切なものはどれか。
(1)泡消火剤で覆う (2)ハロゲン化物消火剤を放射する (3)霧状の水で冷却する (4)乾燥砂で覆って燃え尽きるのを待つ
問題4 アルカリ金属(K・Na・Li)の性質として正しいものはどれか。
(1)融点はリチウムが最も低い (2)比重はカリウムが最も大きい (3)水との反応はカリウムが最も激しい (4)リチウムは自然発火性と禁水性の両方を有する
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