結論から言います
「危険物」と聞いて、爆弾や毒ガスを想像する人もいるかもしれません。
でも消防法でいう「危険物」は、火災の危険性が高い物質のこと。ざっくり言うと、「燃えやすいもの」か「燃えるのを助けるもの」です。
たとえば――
- ガソリンスタンドのガソリンや軽油
- 冬に使う灯油
- 消毒液のエタノール
- マッチの原料に使われる硫黄(いおう)
これ全部、消防法上の「危険物」です。意外と身の回りにあるものばかりですよね。
この記事では、そもそも消防法って何?という基本から、危険物の6つの分類(第1類〜第6類)まで、条文を噛み砕きながら一気に解説します。
消防法って何のための法律?
条文を見てみよう
消防法 第1条(目的)
この法律は、火災を予防し、警戒し及び鎮圧し、国民の生命、身体及び財産を火災から保護するとともに、火災又は地震等の災害による被害を軽減し、もつて安寧秩序を保持し、社会公共の福祉の増進に資することを目的とする。
つまり、こういうこと
「安寧秩序」とか「社会公共の福祉」とか堅い言葉が並んでますが、要するに――
「火事から人の命と財産を守ろう」という法律
消防法は大きく3つのステップで火災に対応する考え方を持っています。
- 予防 — そもそも火事を起こさない
- 警戒 — 火事を早く見つける
- 鎮圧 — 火事を消す
危険物の規制は、この「予防」の部分にあたります。火災の原因になりやすい物質を正しく管理して、そもそも火事を起こさないようにしようというのが、危険物取扱者制度の根っこにある考え方です。
日常でいうと?
ガソリンスタンドには、必ず「危険物取扱者」の資格を持ったスタッフがいます。これは消防法で義務付けられているからです。
もし資格者がいない状態でガソリンを取り扱ったら法律違反。それくらい「危険物はきちんと管理しないと大事故につながる」という前提で作られた法律なんですね。
「危険物」の法的な定義
条文を見てみよう
消防法 第2条 第7項
危険物とは、別表第一の品名欄に掲げる物品で、同表に定める区分に応じ同表の性質欄に掲げる性状を有するものをいう。
つまり、こういうこと
「消防法のリスト(別表第一)に載っていて、なおかつ実際に危険な性質を持っているもの」が危険物
ここがポイントで、リストに名前があるだけではダメなんです。
たとえば「硫黄」は別表第一に載っていますが、硫黄の中にも純度や形状によって危険性が低いものもあります。実際に試験(燃焼試験など)をして「確かに危険な性状がありますね」と確認されたものだけが、法律上の「危険物」になります。
この「性状を有するもの」という条件、試験でも聞かれるので覚えておきましょう。
消防法の「危険物」に含まれないもの
ここ、けっこう間違えやすいポイントです。「危険そうだから全部危険物でしょ?」と思いがちですが、消防法の「危険物」はかなり限定的なんです。
| これは危険物? | 答えと管轄法令 |
|---|---|
| 毒物・劇物 | 違います(毒物及び劇物取締法) |
| 放射性物質 | 違います(放射性同位元素等規制法) |
| 火薬・爆薬 | 違います(火薬類取締法) |
| プロパンガス・水素ガス | 違います(高圧ガス保安法) |
そして超重要なポイントがこれ。
消防法の危険物は「固体」と「液体」だけ。気体は含まれない!
プロパンガスや水素ガスはよく燃えますが、これらは「気体」なので消防法の危険物ではなく、高圧ガス保安法の管轄です。
消防法の危険物=固体か液体に限られている。これは試験でほぼ確実に問われるポイントなので、しっかり押さえておきましょう。
危険物の6分類を一気に理解しよう
消防法の別表第一では、危険物を第1類〜第6類の6つに分けています。
「6つもあるの……」と思うかもしれませんが、実は3つのグループに分けると一気にスッキリします。
自分は燃えないけど、まわりの物を燃やす
例)塩素酸カリウム、過マンガン酸カリウム
第1類の液体バージョン
例)過酸化水素、硝酸
火をつけると燃えやすい固体
例)硫黄、赤りん、マグネシウム
蒸気に火がつく液体。受験者数No.1
例)ガソリン、灯油、アルコール
空気や水に触れるだけで発火
例)ナトリウム、カリウム、黄りん
分子の中に燃料と酸素を両方持つ
例)ニトログリセリン、TNT
各類をもう少し詳しく
第1類 — 酸化性固体
「自分は燃えないけど、まわりのものを燃やす固体」です。
酸化性というのは、相手に酸素を与える性質のこと。たとえば木くずや布と混ぜた状態で加熱すると、酸素を放出して激しく燃焼させます。
花火の酸化剤として使われる塩素酸カリウムが代表例。花火があんなに激しく燃えるのは、第1類の酸化性物質が酸素を供給しているからなんですね。
第2類 — 可燃性固体
「火をつけると燃えやすい固体」です。
比較的低い温度で着火して、燃焼速度が速いのが特徴。マッチの原料に使う硫黄(いおう)、花火に使うマグネシウム、金属の粉である鉄粉やアルミニウム粉などが含まれます。
粉状の金属は空気中に舞い上がると粉じん爆発を起こすこともあり、とても危険です。
第3類 — 自然発火性物質及び禁水性物質
「空気に触れると自然に発火する」か「水に触れると発火・可燃性ガスを出す」物質です。名前が長いですが、要するに「空気ダメ」か「水ダメ」(またはその両方)です。
たとえばナトリウムは水に入れると激しく反応して水素ガスを出し、発火します。理科の実験で見た人もいるかもしれません。
黄りんは空気中に放置するだけで自然に燃え出します。だから黄りんは水の中に沈めて保管するんです。空気がダメなものを水で守る――ちょっと面白いですよね。
第4類 — 引火性液体
「蒸気に火がつく液体」。危険物取扱者試験で最も受験者が多いのがこの第4類です。
ガソリン、灯油、軽油、アルコールなど、日常生活で最も身近な危険物がここに集まっています。
大事なのは、液体そのものが燃えるわけではないということ。液面から出る蒸気が空気と混ざって、そこに火がつく。だから「引火性液体」と呼ばれるんです。
第5類 — 自己反応性物質
「分子の中に燃料(可燃物)と酸素の両方を持っている物質」です。
外から酸素をもらわなくても、自分だけで爆発的に分解できるのが恐ろしいところ。ニトログリセリン(ダイナマイトの原料)やTNT(爆薬)が代表例です。
ちなみに、酸素を遮断する「窒息消火」が効きにくいのも、分子内に酸素を持っているから。自前の酸素で燃え続けてしまうわけです。
第6類 — 酸化性液体
「第1類の液体バージョン」。自分は燃えないけど、他のものに酸素を与えて燃焼を助ける液体です。
過酸化水素(オキシドールの原料として身近ですよね)、硝酸、過塩素酸などが含まれます。有機物と接触すると激しく反応する危険があります。
覚えるコツ — 類の番号のペア
6つの類を覚えるとき、こんな「ペア」で整理すると頭に入りやすいです。
| 性質 | 固体 | 液体 |
|---|---|---|
| 酸化性(燃やす側) | 第1類 | 第6類 |
| 可燃性(燃える側) | 第2類 | 第4類 |
第1類↔第6類、第2類↔第4類が固体と液体のペアになっています。
そして第3類と第5類は「特殊枠」。第3類は外部(空気・水)との反応で危険、第5類は自分自身の内部反応で危険、とイメージしておけばOKです。
もうひとつ、試験で問われる重要ポイント。
類の番号は「危険度の順番」ではない!
第1類が一番危険で第6類が一番安全……ではありません。番号はあくまで性質の分類を表しているだけです。間違えやすいので注意してくださいね。
まとめ問題
ここまでの内容を4択クイズで確認しましょう。全問正解できたら、この記事の内容はバッチリです。
問1
消防法の主な目的として、最も適切なものはどれか。
1. 環境汚染を防止し、自然を保護すること
2. 火災を予防・警戒・鎮圧し、国民の生命・身体・財産を保護すること
3. 労働者の安全と健康を確保すること
4. 危険な化学物質の製造を禁止すること
問2
消防法上の「危険物」に該当しないものはどれか。
1. ガソリン
2. プロパンガス
3. 灯油
4. 硫黄
問3
第4類の危険物の性質として正しいものはどれか。
1. 酸化性固体
2. 可燃性固体
3. 引火性液体
4. 自己反応性物質
問4
第1類と第6類に共通する性質として正しいものはどれか。
1. 自身がよく燃える
2. 他の物質の燃焼を促進する(酸化性がある)
3. 水と反応して発火する
4. 加熱すると爆発的に分解する