結論から言います
第5類危険物は「自己反応性物質」と呼ばれ、分子の中に燃える成分(可燃物)と酸素の両方を持っている物質です。
これが意味することは — 空気を遮断しても燃え続けるということ。燃焼に必要な3要素(可燃物・酸素・点火源)のうち2つが分子内に最初から揃っているため、あとは熱・衝撃・摩擦のどれか1つが加わるだけで爆発的に燃焼します。
だから第5類の消火では窒息消火(空気を遮断する方法)が効きません。代わりに大量の水で冷却するのが基本です。
第5類の共通性質 — 6つの特徴
① 可燃性の固体または液体
第5類はすべて可燃性の物質で、固体か液体です(気体のものはありません)。第1類(酸化性固体)が「自身は燃えない」のに対して、第5類は自分自身が燃える物質です。
② 分子内に酸素を含む
これが第5類の最大の特徴です。分子構造の中に酸素(O)が組み込まれているため、外部の酸素がなくても燃焼を維持できます。
身近な例でいうと、花火やロケットの推進剤が第5類に似た仕組みです。宇宙空間(真空=酸素なし)でもロケットが飛べるのは、燃料と酸化剤を自前で持っているからですね。
③ 加熱・衝撃・摩擦で爆発的に反応
第5類は熱・衝撃・摩擦がきっかけで急激に分解し、爆発的に反応します。ダイナマイトの原料であるニトログリセリンが代表例です。ちょっとした振動で大爆発を起こすほど敏感な物質が含まれています。
④ 燃焼速度が極めて速い
通常の可燃物(木材・ガソリンなど)は空気中の酸素を取り込みながらじわじわ燃えます。しかし第5類は酸素が分子の中に最初から入っているため、空気を吸う必要がなく、一瞬で燃焼・分解します。
この「燃焼速度の速さ」が、第5類の消火が難しい最大の理由です。量が多い場合は消火する間もなく反応が終わってしまうことがあります。
⑤ 窒息消火が効かない
これは試験で超頻出のポイントです。窒息消火とは、泡やCO₂で酸素を遮断して火を消す方法ですが、第5類には通用しません。
なぜ窒息消火が効かないのか?
第5類は分子内に酸素を持っているため、外から空気を遮断しても物質自身が酸素を供給し続けます。だから泡で覆っても、CO₂で包んでも、燃焼は止まりません。
⑥ 酸素(O)と窒素(N)を含むものが多い
第5類の代表的な物質は、分子中に-NO₂(ニトロ基)や-O-O-(過酸化結合)を持っています。名前に「ニトロ」「過酸化」が入っている物質は第5類だと思ってほぼ間違いありません。
第1類・第3類との違い — 3つの類を整理しよう
第1類・第3類・第5類は混同しやすいので、ここで違いを整理します。
ポイントは「酸素の出どころ」です。第1類は他の物に酸素をあげる側、第5類は自前で酸素を持っている、第3類は外部の空気や水がきっかけで発火する — この違いを理解すれば混同しなくなります。
品名と指定数量の一覧
第5類には11の品名があります。指定数量は第1種が10kg、第2種が100kgの2段階です。
| 品名 | 指定数量 | 危険等級 |
|---|---|---|
| 有機過酸化物 | 10kg | I |
| 硝酸エステル類 | 10kg | I |
| ニトロ化合物 | 10kg | I |
| ニトロソ化合物 | 100kg | II |
| アゾ化合物 | 100kg | II |
| ジアゾ化合物 | 100kg | II |
| ヒドラジンの誘導体 | 100kg | II |
| ヒドロキシルアミン | 100kg | II |
| ヒドロキシルアミン塩類 | 100kg | II |
| その他(金属のアジ化物、硝酸グアニジン等) | 10kgまたは100kg | IまたはII |
覚え方のコツ — 第1種(10kg)は「有機過酸化物」「硝酸エステル類」「ニトロ化合物」の3つ。ダイナマイト(ニトログリセリン=硝酸エステル類)やTNT(ニトロ化合物)のように爆薬として使われる物質が第1種に入っていると考えると、危険度が高い → 指定数量が少ない、と納得できます。
火災予防のポイント
加熱・衝撃・摩擦を避ける
第5類の取り扱いで最も大切なことは、分解のきっかけを与えないことです。高温に晒さない、落下や衝撃を避ける、摩擦を起こさない — これが火災予防の基本です。
通風のよい冷暗所に保存
保存場所は直射日光を避けた涼しい場所が基本。温度が上がると分解が進みやすくなるため、冷暗所で保管します。また、分解で発生するガスがたまらないよう通風(換気)を確保します。
乾燥させすぎると危険な物質がある
意外に思えるかもしれませんが、水分を飛ばしすぎると危険になる物質があります。代表例がニトロセルロースです。
ニトロセルロースの保存方法
ニトロセルロースは乾燥すると衝撃に対して極めて敏感になり、爆発の危険性が高まります。そのため水またはエチルアルコール(エタノール)で湿らせた状態で保存します。貯蔵中はニトロセルロースが液面から露出しないよう、湿潤剤の量を定期的にチェックする必要があります。
同様にピクリン酸も乾燥状態では衝撃に敏感になるため、湿った状態で保存します。
分解を促進する物質との接触を避ける
有機過酸化物は、特定の物質に触れると分解が促進されて危険です。
- 鉄さび(酸化鉄が触媒となって分解を促進)
- 布・有機物(反応して発熱)
- 強酸・アルカリ・アミン類
このため、有機過酸化物の容器や保管場所には鉄さびがないことを確認する必要があります。「鉄さびで分解が促進される」という知識は試験でよく問われます。
消火方法
基本は「大量の水で冷却消火」
第5類は窒息消火が効かないので、大量の水を使った冷却消火が唯一の基本方針です。分解反応は温度が上がると加速するため、水で温度を下げることで反応速度を抑えて消火します。
泡消火剤も使用可能
泡消火剤は窒息消火のイメージがありますが、水分を含んでいるため冷却効果もあります。第5類に対しても使用可能です。
量が多いと消火は極めて困難
第5類の火災では、量が多いと消火が間に合わないことがあります。燃焼速度が極めて速く、反応が一瞬で終わる物質もあるため、初期段階で対処できなければ消火は困難です。だからこそ「発火させない」予防が最も重要なのです。
代表的な物質のざっくり紹介
個別物質の詳しい解説は次の記事で行いますが、ここでは品名ごとの代表物質をざっくり紹介します。
| 品名 | 代表物質 | ひとことメモ |
|---|---|---|
| 有機過酸化物 | 過酸化ベンゾイル(BPO) メチルエチルケトンパーオキサイド(MEKPO) |
鉄さびで分解促進 |
| 硝酸エステル類 | ニトログリセリン ニトロセルロース |
ダイナマイトの原料 |
| ニトロ化合物 | トリニトロトルエン(TNT) ピクリン酸 |
ピクリン酸は金属と反応 |
| アゾ化合物 | アゾビスイソブチロニトリル(AIBN) | 発泡剤・重合開始剤 |
| ジアゾ化合物 | ジアゾジニトロフェノール | 起爆剤に使用 |
| ヒドラジンの誘導体 | 硫酸ヒドラジン | ロケット燃料の原料 |
| 金属のアジ化物 | アジ化ナトリウム | エアバッグのガス発生剤 |
まとめ — 試験対策の最終チェック
- 第5類は「自己反応性物質」 — 可燃物+酸素が分子内に揃っている
- すべて可燃性の固体または液体(気体はない)
- 加熱・衝撃・摩擦で爆発的に分解する
- 燃焼速度が極めて速い
- 窒息消火が効かない → 分子内に酸素があるから
- 消火は大量の水による冷却消火が基本
- ニトロセルロースは水またはアルコールで湿らせて保存
- 有機過酸化物は鉄さびで分解が促進される
- 指定数量 — 第1種10kg(有機過酸化物・硝酸エステル類・ニトロ化合物)/ 第2種100kg
理解度チェック!ミニテスト
問題1 第5類危険物の消火方法として最も適切なものはどれか。
(1)二酸化炭素消火剤で窒息消火する (2)乾燥砂で覆って空気を遮断する (3)大量の水で冷却消火する (4)ハロゲン化物消火剤で抑制消火する
問題2 第5類危険物の共通する性質として誤っているものはどれか。
(1)可燃性の固体または液体である (2)加熱・衝撃・摩擦で爆発の危険がある (3)分子内に酸素を含み、自己燃焼性がある (4)空気を遮断する窒息消火が最も有効である
問題3 ニトロセルロースの保存方法として最も適切なものはどれか。
(1)乾燥した状態で密封保存する (2)水またはアルコールで湿らせて保存する (3)灯油中に沈めて保存する (4)不活性ガスを封入して保存する
問題4 第5類危険物の窒息消火が効かない理由として正しいものはどれか。
(1)燃焼温度が高すぎて消火剤が蒸発するため (2)分子内に酸素を含み、外部の酸素がなくても燃焼を継続するため (3)水と反応して可燃性ガスを発生するため (4)燃焼により有毒ガスを発生し、消火活動ができないため
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