乙種第5類(自己反応性物質)

有機過酸化物・硝酸エステル類・ニトロ化合物・ニトロソ化合物をわかりやすく解説!第5類危険物の物質①

結論から言います

第5類危険物のうち、最も出題頻度が高い4つの品名を解説します。試験で狙われるポイントは次の通りです。

  • 有機過酸化物 — 鉄さびや布で分解が促進される。MEKPOは密栓してはいけない
  • 硝酸エステル類 — ニトログリセリンは衝撃で猛烈に爆発。ニトロセルロースは湿潤保存が必須
  • ニトロ化合物 — ピクリン酸は金属と反応して爆発性の塩を作る。TNTは比較的鈍感
  • ニトロソ化合物 — 発泡剤として使われる。分解でホルムアルデヒドを発生

すべて分子内に酸素を含む自己反応性物質で、窒息消火は効きません(共通性質で詳しく解説)。消火は大量の水で冷却が基本です。


第5類の品名① — 構造の違いを整理
有機過酸化物
構造: -O-O-
BPO / MEKPO / 過酢酸
鉄さびで分解促進
硝酸エステル類
構造: -O-NO₂
ニトログリセリン
ニトロセルロース
衝撃で爆発
ニトロ化合物
構造: C-NO₂
TNT / ピクリン酸
-NO₂が炭素に直結
ニトロソ化合物
構造: -N=O
ジニトロソペンタ
メチレンテトラミン
発泡剤として利用
すべて分子内に酸素を含む → 窒息消火は効かない → 大量の水で冷却消火

有機過酸化物 — 指定数量10kg(第1種)

有機過酸化物は、分子内に-O-O-(過酸化結合)を持つ物質です。この結合は非常に不安定で、加熱・衝撃・摩擦だけでなく、鉄さびや布に触れただけでも分解が始まることがあります。

過酸化ベンゾイル(BPO)

項目 性質
化学式 (C₆H₅CO)₂O₂
外観 白色の粒状結晶
融点 106〜108℃
比重 1.3
水溶性 水に溶けない
保存 水で湿潤(市販品は水25%含有)

乾燥状態では衝撃・摩擦・光で爆発の危険があるため、市販品は水25%で湿潤させた状態(純度75%)で流通しています。プラスチックやゴムの重合開始剤として工業的に広く使われる物質です。

メチルエチルケトンパーオキサイド(MEKPO)

項目 性質
外観 無色透明の油状液体
比重 1.12
水溶性 水に溶けない
保存 希釈剤で50〜60%に薄めて保存。密栓しない

MEKPOの最大の特徴は2つあります。

① 布や鉄さびに触れると30℃以下でも分解する
通常の有機過酸化物は高温で分解しますが、MEKPOは鉄さびや布との接触で常温以下でも分解が始まるという非常に危険な性質があります。

② 容器を密栓してはいけない
MEKPOは徐々に分解してガスを発生するため、密栓すると内圧が上昇して容器が破裂・爆発します。必ず穴あきキャップ(通気性のある蓋)を使って、ガスを逃がせるようにします。

FRP(繊維強化プラスチック)やポリエステル樹脂の硬化剤として使われています。

過酢酸

項目 性質
化学式 CH₃COOOH
外観 無色の液体、強い刺激臭
比重 1.04〜1.2
水溶性 水に溶ける(有機過酸化物で唯一)

過酢酸のポイントは「有機過酸化物の中で唯一、水に溶ける」こと。BPOもMEKPOも水に溶けませんが、過酢酸だけは溶けます。殺菌消毒薬としても使われています。


硝酸エステル類 — 指定数量10kg(第1種)

硝酸エステル類は、アルコール(-OH基を持つ化合物)と硝酸(HNO₃)が反応してできた物質です。名前に「ニトロ」が入っていますが、ニトロ化合物ではなく硝酸エステル類なので注意してください。

ニトログリセリン

項目 性質
化学式 C₃H₅(ONO₂)₃
外観 無色透明の油状液体
融点 約13℃
比重 1.6
水溶性 水にほとんど溶けない

ニトログリセリンはダイナマイトの原料として有名な物質です。ノーベルが珪藻土(けいそうど)に染み込ませて安定化させたのがダイナマイトですね。

最大の特徴:衝撃感度が極めて高い
わずかな打撃・摩擦で猛烈に爆発します。さらに凍結すると感度が上がり、半解凍の状態ではさらに危険になります。冬場の取り扱いが特に注意を要する物質です。

意外なことに、ニトログリセリンは狭心症の治療薬としても使われています。皮膚から吸収されて血管を拡張する作用があるからです。火薬工場の作業員が頭痛を訴えたことから発見されたそうです。

ニトロセルロース(硝化綿)

項目 性質
外観 白色〜淡黄色の綿状物質
発火点 160〜170℃
比重 1.7
水溶性 水に溶けない(アセトン・酢酸エチルに溶ける)
保存 水またはアルコールで湿潤保存(乾燥厳禁)

セルロース(植物繊維の主成分)を硝酸と硫酸の混合物で処理して作る物質です。窒素の含有量によって性質が変わります。

種類 窒素含有量 用途
強綿薬 13%以上 無煙火薬の原料
弱綿薬 10〜13% セルロイド、コロジオン、ラッカー

ニトロセルロースは乾燥すると衝撃に極めて敏感になります。だから必ず水またはエチルアルコールで湿らせた状態で保存し、液面からニトロセルロースが露出しないよう管理します(他の湿潤保存物質は保護液・貯蔵方法の横断まとめで比較できます)。


ニトロ化合物 — 指定数量10kg or 100kg

ニトロ化合物は、分子内に-NO₂(ニトロ基)が直接炭素に結合した物質です。硝酸エステル類の「ニトログリセリン」「ニトロセルロース」とは構造が異なるので注意しましょう。

トリニトロトルエン(TNT)— 指定数量100kg(第2種)

項目 性質
化学式 C₆H₂(NO₂)₃CH₃
外観 淡黄色の結晶(日光で茶褐色に変色)
融点 80.1℃
比重 1.65
水溶性 水に溶けない

TNTは軍用爆薬として有名ですが、実は衝撃や摩擦に対して比較的鈍感(にぶい)です。ニトログリセリンが「触っただけで爆発」のイメージなのに対し、TNTは雷管で起爆しないと爆発しにくい安定した爆薬です。

だからこそ指定数量は100kg(第2種)と、第5類の中では多めに設定されています。

もう一つ重要なのは、TNTは金属と反応しない点。これはピクリン酸との比較で出題されます。

ピクリン酸(トリニトロフェノール)— 指定数量10kg(第1種)

項目 性質
化学式 C₆H₂(NO₂)₃OH
外観 黄色の結晶、強い苦味
融点 122.5℃
比重 1.8
水溶性 冷水にわずかに溶ける(水溶液は酸性)
保存 水で湿潤保存(乾燥厳禁)

ピクリン酸の最大のポイントは「金属と反応する」ことです。

ピクリン酸 + 金属(鉄・銅・鉛など)→ ピクリン酸金属塩
生成するピクリン酸金属塩は衝撃に極めて敏感で爆発性があります。だから金属容器での長期保存は避け、ガラス容器を使います。

また、乾燥状態では衝撃感度が非常に高くなるため、水で湿らせて保存します。

TNTとピクリン酸の比較 — 試験頻出!

比較項目 TNT ピクリン酸
衝撃感度 鈍感(安定) 乾燥時は敏感
金属との反応 反応しない 爆発性の塩を生成
湿潤保存 不要 必要
指定数量 100kg(第2種) 10kg(第1種)
淡黄色 黄色

ニトロソ化合物 — 指定数量10kg(第1種)

ニトロソ化合物は-N=O(ニトロソ基)を持つ化合物です。代表物質はジニトロソペンタメチレンテトラミンで、ゴムやプラスチックの発泡剤として使われます。

項目 性質
代表物質 ジニトロソペンタメチレンテトラミン
化学式 C₅H₁₀N₆O₂
外観 淡黄色の粉末
分解温度 約200℃

加熱すると分解してホルムアルデヒド(有毒)・アンモニア・窒素を発生します。この分解でガスが出る性質を利用して発泡剤(スポンジなどの気泡を作る材料)に使われています。


湿潤保存が必要な物質まとめ

乾燥させたら危険!湿潤保存が必要な物質
水で湿潤
過酸化ベンゾイル(水25%)
ニトロセルロース
ピクリン酸
アルコールでもOK
ニトロセルロース
(水でもエタノールでも可)
密栓禁止
MEKPO
(穴あきキャップで通気確保)

試験で狙われる引っかけ5パターン

❶ 「ニトログリセリンはニトロ化合物」の誤り

名前に「ニトロ」が入っていますが、ニトログリセリンは硝酸エステル類です。ニトロ化合物(-NO₂が炭素に直結)とは構造が異なります。ニトロセルロースも同じ。「ニトロ○○ = ニトロ化合物」とは限りません。

❷ 「TNTは安定だから危険ではない」と思い込む

TNTは衝撃に「比較的鈍感」なだけで、雷管で起爆すれば猛烈に爆発します。指定数量が100kg(第2種)と多めなのは、取り扱い時の感度が低いからであり、爆発力が小さいわけではありません。

❸ 「BPOは乾燥した白い粉」のイメージで解答する

過酸化ベンゾイル(BPO)の市販品は水25%で湿潤させた状態(純度75%)で流通しています。「乾燥した粉末のまま保存する」は誤りです。乾燥BPOは衝撃・摩擦・光で爆発の危険があります。

❹ ピクリン酸の保存容器を「金属製」と答える

ピクリン酸は鉄・銅・鉛と反応して爆発性のピクリン酸金属塩を生成します。容器はガラス製を使用。TNTは金属と反応しないので金属容器OKですが、ピクリン酸は絶対NGです。

❺ 「MEKPOは密栓で安全に保管」と答える

MEKPOは常に分解ガスを出し続けています。密栓 → 内圧上昇 → 爆発の危険。必ず穴あきキャップ(通気栓)で保存します。「漏れないように密栓」は逆に最も危険な行為です。

試験直前チェック ✔

✔ 有機過酸化物は -O-O-(過酸化結合) を持つ → 鉄さび・布で分解促進
✔ 過酢酸 = 有機過酸化物で唯一の水溶性
✔ BPO = 水25%湿潤で流通 / プラスチック・ゴムの重合開始剤
✔ MEKPO = 密栓禁止(穴あきキャップ使用)/ 常温以下でも分解あり
✔ ニトログリセリン = 硝酸エステル類(ニトロ化合物ではない)/ 衝撃感度が極めて高い
✔ ニトログリセリン = 凍結で感度UP / 半解凍時が最も危険
✔ ニトロセルロース = 水 or アルコールで湿潤保存 / 窒素13%以上 = 強綿薬
✔ TNT = 比較的鈍感 / 100kg第2種 / 金属と反応しない
✔ ピクリン酸 = 金属と反応 → 爆発性の塩 / ガラス容器 / 10kg第1種
✔ ピクリン酸 = 黄色結晶 + 苦味 / 水で湿潤保存
✔ ニトロソ化合物 = -N=O基 / 発泡剤 / 分解でホルムアルデヒド発生

理解度チェック!ミニテスト

問題1 有機過酸化物の性質として誤っているものはどれか。

(1)分子内に-O-O-(過酸化結合)を持つ (2)過酢酸は水に溶ける (3)MEKPOの容器は密栓して保存する (4)鉄さびとの接触で分解が促進されるものがある

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正解:(3)MEKPOの容器は密栓して保存する
MEKPOは徐々に分解してガスを発生するため、密栓すると内圧上昇で爆発します。穴あきキャップで通気性を確保する必要があります。

問題2 ニトロセルロースの保存方法として正しいものはどれか。

(1)完全に乾燥させた状態で密封保存する (2)灯油中に沈めて保存する (3)水またはアルコールで湿らせて保存する (4)不活性ガスを封入して保存する

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正解:(3)水またはアルコールで湿らせて保存する
ニトロセルロースは乾燥すると衝撃に極めて敏感になります。水またはエチルアルコールで湿潤させた状態で保存し、液面からニトロセルロースが露出しないよう管理します。(2)灯油中は第3類のK・Na、(4)不活性ガスはアルキルアルミニウムの方法です。

問題3 ピクリン酸の性質として誤っているものはどれか。

(1)黄色の結晶で苦味がある (2)乾燥状態では衝撃に敏感である (3)金属と反応して爆発性の塩を生成する (4)TNTと同じく金属とは反応しない

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正解:(4)TNTと同じく金属とは反応しない
ピクリン酸は鉄・銅・鉛などの金属と反応して爆発性のピクリン酸金属塩を生成します。「金属と反応しない」のはTNTの方です。これはよく出る比較問題です。

問題4 ニトログリセリンの性質として正しいものはどれか。

(1)白色の粉末状固体である (2)衝撃に対して比較的鈍感で安定している (3)凍結すると衝撃感度が低下して安全になる (4)凍結すると衝撃感度が上がりさらに危険になる

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正解:(4)凍結すると衝撃感度が上がりさらに危険になる
ニトログリセリンは無色透明の油状液体((1)は誤り)で、衝撃感度が極めて高い((2)は誤り)。凍結すると感度がさらに上がり、半解凍時は特に危険です。

問題5 次のア〜オの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

ア.過酸化ベンゾイルは、有機過酸化物の中で唯一水に溶ける。
イ.MEKPOは、分解ガスを発生するため容器を密栓してはならない。
ウ.ニトログリセリンは硝酸エステル類であり、ニトロ化合物ではない。
エ.TNTは、ピクリン酸と同様に金属と反応して爆発性の塩を生成する。
オ.ニトロセルロースは、水またはアルコールで湿潤させて保存する。

(1)ア・ウ・オ (2)イ・ウ・エ (3)イ・ウ・オ (4)ア・イ・オ

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正解:(3)イ・ウ・オ
ア:誤り。有機過酸化物で唯一水に溶けるのは過酢酸。過酸化ベンゾイルは水に溶けません。
イ:正しい。MEKPOは分解ガスで内圧上昇するため穴あきキャップで通気を確保します。
ウ:正しい。名前に「ニトロ」がつきますが硝酸エステル類です。
エ:誤り。金属と反応するのはピクリン酸のみ。TNTは金属と反応しません。
オ:正しい。乾燥すると衝撃に敏感になるため湿潤保存します。

第5類は物質名が長くて覚えにくい…と感じたら

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