乙種第3類(自然発火性・禁水性)

第3類危険物(自然発火性物質・禁水性物質)の共通性質と火災予防・消火をわかりやすく解説

結論から言います

第3類危険物には2つの顔があります。

自然発火性 — 空気に触れるだけで勝手に燃え出す
禁水性 — 水に触れると発火する、または可燃性ガスが出る

ほとんどの第3類物質はこの両方の性質を持っていますが、例外が2つ。黄りんは自然発火性のみ(水とは反応しない)、リチウムは禁水性のみ(空気中では安定)。この分類は乙3試験で最も出題されるポイントです。


第3類危険物の定義

消防法 別表第1(第3類)

自然発火性物質:固体又は液体であって、空気中での発火の危険性を判断するための政令で定める試験において政令で定める性状を示すもの。
禁水性物質:固体又は液体であって、水と接触して発火し、若しくは可燃性ガスを発生する危険性を判断するための政令で定める試験において政令で定める性状を示すもの。

ざっくり言うと、「空気で燃えるもの」と「水で燃えるもの」、もしくはその両方です。

注目すべきは「固体又は液体」という定義。第1類・第2類は固体のみでしたが、第3類には液体も含まれます。アルキルアルミニウムやトリクロロシランは液体です。


超頻出!「自然発火性のみ/禁水性のみ/両方」の分類

第3類で最もよく出題されるのがこの分類です。丸暗記してください。

自然発火性 vs 禁水性の分類
自然発火性のみ
黄りん
(水中保存OK)
両方
K、Na、
アルキルAl、
アルキルLi、
ほとんどの物質
禁水性のみ
リチウム
(空気中で安定)

覚え方:例外は2つだけ。「黄りん=空気NG・水OK」「リチウム=空気OK・水NG」。それ以外は両方NGです。

なぜ黄りんは水と反応しないのか? → 黄りんは非金属元素の同素体であり、水分子とは反応しません。だから水中に沈めて保存できるのです。一方、カリウムやナトリウムなどの金属は水と激しく反応するため、水中保存はできず灯油中に保存します。


品名と指定数量

第3類の品名は全11品目。最初の5品目は指定数量が固定で、残りは物質ごとに第1種〜第3種に分かれます。

品名 指定数量
カリウム 10 kg
ナトリウム 10 kg
アルキルアルミニウム 10 kg
アルキルリチウム 10 kg
黄りん 20 kg
アルカリ金属・アルカリ土類金属 10/50/300 kg ※
有機金属化合物 10/50/300 kg ※
金属の水素化物 10/50/300 kg ※
金属のりん化物 10/50/300 kg ※
Ca又はAlの炭化物 10/50/300 kg ※
塩素化けい素化合物 10/50/300 kg ※

※ 試験結果により第1種(10kg)/ 第2種(50kg)/ 第3種(300kg)に分類

カリウム・ナトリウム・アルキルアルミニウム・アルキルリチウムの4つは指定数量10kgで最も少ない=最も危険度が高い物質です。黄りんは20kgで、これも非常に少ない部類です。全6類の指定数量一覧は「指定数量 総まとめ」も参考にしてください。


共通する性質 ― 5つのポイント

① 固体又は液体(液体も含む!)

第3類には液体の物質も含まれます。アルキルアルミニウム(トリエチルアルミニウムなど)、ジエチル亜鉛、トリクロロシランは液体です。試験で「第3類はすべて固体である」という選択肢が出たら×です。

② ほとんどが可燃性だが、不燃性のものもある

大部分の第3類は自身が可燃性ですが、りん化カルシウム・炭化カルシウム・炭化アルミニウムは不燃性です。これらは自身は燃えませんが、水と反応して可燃性ガスを発生させます。

③ 空気や水との接触で発火・ガス発生

自然発火性のものは空気に触れるだけで発火。禁水性のものは水に触れると発火するか、可燃性ガスを発生します。

④ 保護液中に保存するものがある

保存方法 対象物質 理由
水中保存 黄りん 空気で自然発火するが、水とは反応しない
灯油中保存 K、Na、Li 空気でも水でも反応するため、不活性な灯油で覆う
不活性ガス(N₂)封入 アルキルAl、アルキルLi 灯油とも反応するため、窒素で完全密封

保存方法の違いも頻出です。特に「黄りん=水中保存」「Na/K=灯油中保存」は必ず覚えましょう。

⑤ 水と反応して出るガスが物質ごとに違う

物質 水との反応で出るガス
Na、K、Li、Ca、Ba 水素(H₂) — 可燃性・爆発性
りん化カルシウム りん化水素(PH₃) — 有毒・自然発火性
炭化カルシウム アセチレン(C₂H₂) — 可燃性・爆発性
炭化アルミニウム メタン(CH₄) — 可燃性
トリクロロシラン 塩化水素(HCl) — 有毒

特にりん化カルシウムが出すりん化水素(PH₃)は自然発火性があるのが重要。水と反応した瞬間にPH₃が出て、そのPH₃が空気中で自然発火するという二段階の危険があります。


火災予防の方法

第3類は「空気」と「水」の両方が敵なので、予防のポイントは「空気を遮断する」「水を遮断する」です。

空気との接触を避ける — 密封保管、保護液中に保存、不活性ガス封入
水・湿気との接触を避ける — 防湿保管、水系消火設備の近くに置かない
火気・高温体との接触を避ける — 低温で発火するものが多い
酸化剤との接触を避ける — 激しく反応する
・保護液中のものは液面から露出しないよう常に確認
・容器の破損・腐食に注意


消火方法

第3類の消火方法
黄りん(自然発火性のみ)
水・泡OK
(水とは反応しない)
✅ 土砂で覆う
※乾燥砂も有効
禁水性の物質(大部分)
注水厳禁
✅ 乾燥砂
✅ 膨張ひる石
✅ 粉末消火剤

第3類で唯一「水が使える」のは黄りんだけです。黄りんは水中保存するくらいですから、水とは反応しません。火災時も水や泡で冷却して消火できます。

それ以外の禁水性物質は注水厳禁。乾燥砂で覆うのが基本です。特にアルカリ金属(Na、K)は水と激しく反応して水素ガスを出し、その水素が燃えるため火勢が一気に増します


第3類と他の類との比較

比較 ポイント
第2類 vs 第3類 どちらも可燃性固体を含むが、第3類は空気や水と接触するだけで発火する点が異なる
第4類 vs 第3類 第4類は引火性液体(点火源が必要)、第3類は点火源なしで発火するものがある
第1類 vs 第3類 第3類と第1類(酸化剤)の混合は極めて危険

関連記事: 第2類の共通性質第1類の共通性質全6類の横断比較


まとめ

第3類危険物(自然発火性物質・禁水性物質)の共通性質をおさらいします。

空気で発火する自然発火性と、水で発火する禁水性の2つの性質
・ほとんどが両方の性質を持つ。例外は黄りん(自然発火のみ)リチウム(禁水のみ)
固体だけでなく液体も含まれる
・保存方法:黄りん→水中、Na/K→灯油中、アルキル化合物→窒素封入
・消火は基本乾燥砂、黄りんのみ水OK
・水と反応して出るガスは物質ごとに異なる(H₂、PH₃、C₂H₂、CH₄等)

個別の物質の詳しい性質は、以下の記事で解説しています。


理解度チェック!

問1 第3類危険物の「自然発火性のみ」の物質はどれか。

(1)カリウム
(2)ナトリウム
(3)黄りん
(4)リチウム

解答を見る

正解:(3)
黄りんは自然発火性のみで禁水性ではないため、水中に保存できます。(1)カリウムと(2)ナトリウムは両方(自然発火性+禁水性)。(4)リチウムは禁水性のみです。

問2 第3類危険物の保存方法について、正しいものはどれか。

(1)黄りんは灯油中に保存する
(2)ナトリウムは水中に保存する
(3)カリウムは灯油中に保存する
(4)アルキルアルミニウムは灯油中に保存する

解答を見る

正解:(3)
カリウムは自然発火性+禁水性なので、水にも空気にも触れない灯油中に保存します。(1)黄りんは水中保存(自然発火性のみで水とは反応しない)。(2)ナトリウムは禁水性なので水中保存は厳禁。灯油中保存です。(4)アルキルアルミニウムは灯油とも反応するため、窒素ガス封入で保存します。

問3 第3類危険物が水と反応して発生するガスの組み合わせとして、正しいものはどれか。

(1)ナトリウム — アセチレン
(2)炭化カルシウム — 水素
(3)りん化カルシウム — りん化水素
(4)炭化アルミニウム — 塩化水素

解答を見る

正解:(3)
りん化カルシウムは水と反応してりん化水素(PH₃)を発生します。PH₃は有毒で自然発火性もあり極めて危険です。(1)ナトリウムは水素を発生。(2)炭化カルシウムはアセチレン(C₂H₂)を発生。(4)炭化アルミニウムはメタン(CH₄)を発生します。

問4(応用) 第3類危険物の共通する性質について、誤っているものはどれか。

(1)固体のものだけでなく、液体のものも含まれる
(2)すべて可燃性であり、自身が燃焼する
(3)消火には乾燥砂が有効である
(4)酸化剤との接触を避ける必要がある

解答を見る

正解:(2)
第3類の大部分は可燃性ですが、りん化カルシウム・炭化カルシウム・炭化アルミニウムは不燃性です。これら自身は燃えませんが、水と反応して可燃性ガスを発生させます。「すべて可燃性」は誤りです。

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