乙種第3類(自然発火性・禁水性)

ジエチル亜鉛・水素化物・りん化カルシウム・炭化カルシウム・トリクロロシランをわかりやすく解説!第3類危険物の物質②

結論から言います

第3類危険物の品名7〜11にあたる物質を解説します。前回のカリウム・ナトリウムなどと比べると馴染みの薄い物質が多いですが、試験での出題パターンはハッキリしています。

最大のポイントは「水と反応して何が出るか」です。

  • 水素化物 → 水素(H₂)
  • りん化カルシウム → りん化水素(PH₃) — 猛毒+自然発火
  • 炭化カルシウム → アセチレン(C₂H₂) — 爆発性
  • 炭化アルミニウム → メタン(CH₄)
  • トリクロロシラン → 塩化水素(HCl) — 有毒

この「水+○○ → ○○ガス」の対応関係を覚えることが、この範囲の攻略法です。


ジエチル亜鉛((C₂H₅)₂Zn)— 指定数量10kg

ジエチル亜鉛は有機金属化合物の一つで、性質はアルキルアルミニウムに近い物質です。空気に触れると自然発火し、水とも爆発的に反応します。

項目 ジエチル亜鉛の性質
化学式 (C₂H₅)₂Zn(分子量 123.5)
外観 無色の液体
融点 / 沸点 -28℃ / 117.6℃
比重 1.21(水より重い)
分類 自然発火性 + 禁水性(両方あり)
危険等級 I(第1種・10kg)

水との反応

(C₂H₅)₂Zn + 2H₂O → Zn(OH)₂ + 2C₂H₆↑
水と爆発的に反応し、エタン(C₂H₆)を発生させます。アルキルアルミニウムと同じくエタンが出る点がポイントです。

保存と消火

不活性ガス封入で保存します。消火は乾燥砂で覆って燃え尽きるのを待つ方法が基本。水・泡消火剤は厳禁です。

アルキルアルミニウム・アルキルリチウムと並んで「空気でも水でも発火する」非常に危険な物質なので、指定数量は第1種の10kgと少量に設定されています。


水素化ナトリウム(NaH)・水素化リチウム(LiH)— 指定数量300kg

金属の水素化物は、金属と水素が結合した化合物です。代表的なのが水素化ナトリウムと水素化リチウム。どちらも水と反応して水素ガス(H₂)を発生させるのが最大の特徴です。

項目 水素化ナトリウム 水素化リチウム
化学式 NaH LiH
外観 灰色の結晶 白色〜灰色の結晶
比重 0.92 0.77〜0.82
融点 約800℃(分解) 680℃
危険等級 III(第3種・300kg) III(第3種・300kg)

水との反応

名前の通り「水素化」物質なので、水と反応すると水素が出ます。反応式がとてもシンプルなので覚えやすいです。

NaH + H₂O → NaOH + H₂↑
LiH + H₂O → LiOH + H₂↑
どちらも「水素化物 + 水 → 水酸化物 + 水素ガス」という同じパターンです。強い還元性を持ちます。

保存と消火

不活性ガス中に密封して保存します。水素化ナトリウムは鉱物油に分散した状態で市販されることが多いです。

消火は乾燥砂で窒息消火。注水厳禁です。

覚え方のコツ — 「水素化物から出るのは水素」。名前にヒントがそのまま入っています。


りん化カルシウム(Ca₃P₂)— 指定数量300kg

りん化カルシウムは金属のりん化物の代表物質です。この物質の最大のポイントは、水との反応で猛毒のりん化水素(PH₃)が出ることです。

項目 りん化カルシウムの性質
化学式 Ca₃P₂(分子量 182.2)
外観 暗赤褐色の塊状固体
融点 約1,600℃
比重 2.51(水より重い)
危険等級 III(第3種・300kg)

水との反応 — 猛毒ガスが出る!

Ca₃P₂ + 6H₂O → 3Ca(OH)₂ + 2PH₃↑
水と反応してりん化水素(PH₃、ホスフィン)を発生。PH₃は猛毒であり、しかも空気中で自然発火する性質があります。

りん化水素の毒性は極めて高く、殺鼠剤(ねずみ駆除剤)や殺虫剤(穀物の燻蒸処理)の原料としても使われるほどです。

湿った空気中でも徐々にPH₃を放出するため、乾燥した場所で密封保存する必要があります。消火は乾燥砂注水は厳禁です。


炭化カルシウム(CaC₂)— カーバイド — 指定数量300kg

炭化カルシウムは通称「カーバイド」として知られる物質です。水と反応してアセチレンガス(C₂H₂)を発生させます。かつては溶接やカーバイドランプの燃料として広く使われていました。

項目 炭化カルシウムの性質
化学式 CaC₂(分子量 64.1)
外観 純品は無色透明 / 市販品は灰黒色
融点 約2,300℃
比重 2.22(水より重い)
危険等級 III(第3種・300kg)

水との反応 — アセチレンが出る!

CaC₂ + 2H₂O → Ca(OH)₂ + C₂H₂↑
水と反応してアセチレン(C₂H₂)を発生させます。アセチレンは引火性が高く、爆発範囲が2.5〜81%と極めて広いのが特徴です。

これがカーバイドランプ(アセチレンランプ)の原理です。昔は洞窟探検や鉱山の照明に使われていました。カーバイドに水を少しずつ垂らしてアセチレンを発生させ、それに火をつけて灯りにするという仕組みです。

自然発火性がない — 試験のひっかけ注意!

炭化カルシウムは乾燥空気中では安定しており、常温で自然発火はしません。つまり「禁水性のみ」の物質です。

「第3類=全部が自然発火する」と思い込むと引っかかるので注意しましょう。リチウムも「禁水性のみ」でしたね。

市販品の色が黒いのはなぜ?

純粋な炭化カルシウムは無色透明ですが、市販品にはりん化カルシウム(Ca₃P₂)や硫化カルシウム(CaS)などの不純物が含まれるため灰黒色をしています。この不純物のりん化カルシウムが水と反応すると有毒なりん化水素(PH₃)が出るため、市販の炭化カルシウムの取り扱いでは毒性にも注意が必要です。

消火は乾燥砂注水厳禁です。


炭化アルミニウム(Al₄C₃)— 指定数量300kg

炭化アルミニウムは、炭化カルシウムと同じ「カルシウム又はアルミニウムの炭化物」の品名に分類されますが、水との反応で出るガスがメタン(CH₄)である点が異なります。

項目 炭化アルミニウムの性質
化学式 Al₄C₃(分子量 144.0)
外観 淡黄色の結晶
融点 約2,100℃
比重 2.36(水より重い)
危険等級 III(第3種・300kg)

水との反応 — メタンが出る

Al₄C₃ + 12H₂O → 4Al(OH)₃ + 3CH₄↑
水と反応してメタン(CH₄)を発生させます。炭化カルシウムの「アセチレン」と混同しやすいので注意してください。

覚え方のコツ — 炭化カルシウム=アセチレン(C₂H₂)、炭化アルミニウム=メタン(CH₄)。「カルシウムはカーバイドランプ → アセチレン」と結びつけると、「アルミニウムの方がメタン」と区別できます。

消火は乾燥砂注水厳禁です。


トリクロロシラン(SiHCl₃)— 指定数量300kg

トリクロロシランは塩素化けい素化合物に分類される物質で、半導体の原料(多結晶シリコン)として工業的に重要です。第3類では珍しい液体の物質で、沸点が31.8℃と低いため非常に揮発しやすいのが特徴です。

項目 トリクロロシランの性質
化学式 SiHCl₃(分子量 135.5)
外観 無色の液体、刺激臭
融点 / 沸点 -127℃ / 31.8℃
引火点 -28℃
比重 1.34(水より重い)
分類 自然発火性 + 禁水性(両方あり)
危険等級 III(第3種・300kg)

水との反応 — 有毒な塩化水素が出る

SiHCl₃ + 3H₂O → H₂SiO₃ + 3HCl↑
水と反応して塩化水素(HCl)を発生させます。HClは有毒で強い腐食性があり、水に溶けると塩酸になります。

3つの特徴を押さえよう

  1. 液体である — 第3類で液体なのは黄りんとトリクロロシランくらいです。他はほとんど固体です
  2. 沸点が31.8℃ — 夏場の気温で沸騰してしまうほど低い。蒸気が空気と混ざると爆発性混合ガスになります
  3. 引火点が-28℃ — 引火性も持っている珍しい第3類危険物です

消火は乾燥砂・膨張ひる石。水・ハロゲン化物消火剤は厳禁です。


水との反応まとめ — これが試験のヤマ!

第3類の物質②で最も出題されるのが「水と反応して何のガスが出るか」です。以下の表を完璧に覚えましょう。

物質 発生ガス ガスの特徴
ジエチル亜鉛 エタン(C₂H₆) 可燃性
水素化ナトリウム / 水素化リチウム 水素(H₂) 可燃性
りん化カルシウム りん化水素(PH₃) 猛毒+自然発火
炭化カルシウム アセチレン(C₂H₂) 爆発性(範囲2.5〜81%)
炭化アルミニウム メタン(CH₄) 可燃性
トリクロロシラン 塩化水素(HCl) 有毒・腐食性
有毒ガスを出す物質に注意!
りん化カルシウム
水 → りん化水素(PH₃)
猛毒
空気中で自然発火
殺鼠剤の原料
トリクロロシラン
水 → 塩化水素(HCl)
有毒・腐食性
水に溶けると塩酸
半導体の原料

第3類の全物質 — 品名・保存方法の最終整理

品名 保存方法 指定数量
カリウム / ナトリウム 灯油中 10kg
アルキルAl / アルキルLi / ジエチル亜鉛 不活性ガス封入 10kg
黄りん 水中 20kg
リチウム 不活性ガスまたは流動パラフィン 300kg
水素化物 / りん化物 / 炭化物 乾燥密封 300kg
トリクロロシラン 乾燥密封(換気良好な場所) 300kg

理解度チェック!ミニテスト

問題1 りん化カルシウムが水と反応したときに発生するガスとして正しいものはどれか。

(1)アセチレン (2)メタン (3)りん化水素 (4)水素

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正解:(3)りん化水素
Ca₃P₂ + 6H₂O → 3Ca(OH)₂ + 2PH₃。りん化水素(PH₃)は猛毒で、しかも空気中で自然発火する性質があります。アセチレンは炭化カルシウム、メタンは炭化アルミニウム、水素は水素化物が出すガスです。

問題2 炭化カルシウム(カーバイド)の性質として誤っているものはどれか。

(1)水と反応してアセチレンを発生する (2)純品は無色透明だが、市販品は灰黒色である (3)空気中で自然発火する性質がある (4)アセチレンの爆発範囲は2.5〜81%と極めて広い

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正解:(3)空気中で自然発火する性質がある
炭化カルシウムは乾燥空気中では安定しており、自然発火しません。「禁水性のみ」の物質で、自然発火性はありません。(1)(2)(4)はすべて正しい記述です。

問題3 トリクロロシランの性質として正しいものはどれか。

(1)固体の結晶である (2)沸点は約280℃で揮発しにくい (3)水と反応して塩化水素を発生する (4)禁水性のみで自然発火性はない

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正解:(3)水と反応して塩化水素を発生する
(1)トリクロロシランは無色の液体です。(2)沸点は31.8℃と非常に低く、揮発しやすい物質です。(4)自然発火性と禁水性の両方を有しています。

問題4 次の第3類危険物と水との反応で発生するガスの組み合わせとして誤っているものはどれか。

(1)炭化カルシウム — アセチレン (2)炭化アルミニウム — メタン (3)水素化ナトリウム — 水素 (4)りん化カルシウム — 塩化水素

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正解:(4)りん化カルシウム — 塩化水素
りん化カルシウムが水と反応して発生するのは「りん化水素(PH₃)」であり、「塩化水素(HCl)」ではありません。塩化水素を出すのはトリクロロシランです。(1)(2)(3)はすべて正しい組み合わせです。

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