結論から言います
「有機過酸化物・硝酸エステル類・ニトロ化合物・ニトロソ化合物をわかりやすく解説!第5類危険物の物質①」に続き、今回は残りの6つの品名を一気に解説します。
- アゾ化合物 — AIBNが代表。加熱で窒素ガスを出す重合開始剤
- ジアゾ化合物 — DDNPが代表。起爆薬として使われ、乾燥すると極めて敏感
- ヒドラジンの誘導体 — 硫酸ヒドラジンが代表。強い還元性を持つ白色結晶
- ヒドロキシルアミン — 融点33℃で不安定。水溶液として保存する
- 金属のアジ化物 — アジ化ナトリウムは注水消火禁止! アジ化鉛は起爆薬
- 硝酸グアニジン — 比較的安定。現行エアバッグの膨張剤
特に重要なのがアジ化ナトリウム。「第5類危険物(自己反応性物質)の共通性質と火災予防・消火をわかりやすく解説」で学んだ通り、第5類の消火は「大量の水で冷却」が基本ですが、アジ化ナトリウムだけは水をかけてはいけない例外です。
アゾ化合物 — 指定数量100kg(第2種)
アゾ化合物は、分子内に-N=N-(アゾ基)を持つ化合物です。このアゾ基は非常に切れやすく、加熱すると分解して窒素ガス(N₂)を発生します。
アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)
| 項目 | 性質 |
|---|---|
| 化学式 | C₈H₁₂N₄ |
| 外観 | 白色の粉末(結晶) |
| 分解温度 | 約107℃ |
| 水溶性 | 水に溶けない |
| 有機溶媒 | メタノール・ベンゼンなどに溶ける |
| 保存 | 冷暗所(40℃以下)で保存 |
AIBNの名前は長いですが、試験では略称の「AIBN」で出ることも多いので覚えておきましょう。
最大の特徴は、加熱するとアゾ基(-N=N-)が切れて窒素ガスを発生すること。この性質を利用して、プラスチックやアクリル繊維を作るときの重合開始剤(じゅうごうかいしざい)として使われています。身近なところだと、アクリル製のセーターやプラスチック製品の製造工程で活躍している物質です。
試験ポイント:窒素ガス+有毒ガスを発生
加熱分解すると窒素ガスのほかに有毒ガスも発生します。密閉容器で加熱すると内圧が上昇して容器が破裂する危険があるので、冷暗所で保管するのが鉄則です。
ジアゾ化合物 — 指定数量10kg(第1種)
ジアゾ化合物は、分子内に-N₂(ジアゾ基)を持つ化合物です。アゾ化合物よりもさらに不安定で、指定数量は10kg(第1種)と厳しく設定されています。
ジアゾジニトロフェノール(DDNP)
| 項目 | 性質 |
|---|---|
| 外観 | 黄色の結晶(粉末) |
| 比重 | 1.6 |
| 水溶性 | 水に溶けない |
| 保存 | 水中保存(乾燥厳禁) |
DDNPは起爆薬(きばくやく)として雷管に使われる非常に危険な物質です。
起爆薬とは何かというと、ダイナマイトのような本体の爆薬は意外と安定していて、ただ火をつけただけでは爆発しません。そこで「最初のきっかけ」を作る小さな爆発装置として雷管を使うのですが、その雷管の中に入っているのが起爆薬です。DDNPはわずかな衝撃や火花で爆発し、その衝撃波で本体の爆薬を起爆させます。
乾燥すると極めて危険
DDNPは乾燥状態だと衝撃・摩擦・火花に極めて敏感になります。だから必ず水中に浸けた状態で保存します。「第5類の物質①」で出てきたピクリン酸と同じ「湿潤保存」のパターンですね。
ヒドラジンの誘導体 — 指定数量100kg(第2種)
ヒドラジン(N₂H₄)は引火性のある液体として知られていますが、その誘導体(化学的に変化させた物質)は自己反応性を持つため第5類に分類されています。代表物質は硫酸ヒドラジンです。
硫酸ヒドラジン
| 項目 | 性質 |
|---|---|
| 化学式 | N₂H₄・H₂SO₄ |
| 外観 | 白色の結晶 |
| 比重 | 約1.4 |
| 水溶性 | 水に溶ける |
| 特性 | 強い還元性 |
硫酸ヒドラジンは強い還元性を持つ白色の結晶です。還元性とは「他の物質から酸素を奪い取る力」のこと。酸化剤(第1類や第6類の危険物)と混合すると激しく反応するので、一緒に保管してはいけません。
第5類の中では比較的安定した部類ですが、加熱すると分解して有毒なガスを発生します。工業的にはボイラーの水処理(水中の溶存酸素を除去する薬剤)などに使われています。
ヒドロキシルアミンとヒドロキシルアミン塩類 — 指定数量100kg(第2種)
この2つは別々の品名ですが、「遊離(ゆうり)の形」と「塩にした形」という関係なのでまとめて解説します。
ヒドロキシルアミン(NH₂OH)
| 項目 | 性質 |
|---|---|
| 化学式 | NH₂OH |
| 外観 | 無色の結晶(融点33℃で液体になりやすい) |
| 融点 | 33℃ |
| 水溶性 | 水に溶ける |
| 特性 | 強い還元性・不安定 |
| 保存 | 水溶液(50%程度)で保存 |
ヒドロキシルアミンの融点は33℃。夏場の室温で溶けてしまうほど融点が低い物質です。
純粋な状態は極めて不安定
加熱すると爆発的に分解する恐れがあるため、純粋なまま保管しないのが鉄則です。通常は50%程度の水溶液として流通・保存します。また強い還元性があり、酸化剤と混合すると激しく反応します。
硫酸ヒドロキシルアミン(ヒドロキシルアミン塩類の代表)
| 項目 | 性質 |
|---|---|
| 化学式 | (NH₂OH)₂・H₂SO₄ |
| 外観 | 白色の結晶 |
| 水溶性 | 水に溶ける |
| 特性 | 遊離体より安定だが還元性あり |
| 保存 | ガラス容器(金属を腐食する) |
硫酸ヒドロキシルアミンは、ヒドロキシルアミンを硫酸塩(塩の形)にしたものです。塩にすることで遊離の形よりはるかに安定します。
金属容器は使えない
硫酸ヒドロキシルアミンは金属を腐食する性質があります。だから保存容器はガラス製を使い、鉄やステンレスの容器での保管は避けます。
ヒドロキシルアミン vs 硫酸ヒドロキシルアミン — 比較
| 比較項目 | ヒドロキシルアミン | 硫酸ヒドロキシルアミン |
|---|---|---|
| 形態 | 遊離(単体) | 塩(硫酸塩) |
| 安定性 | 極めて不安定 | 比較的安定 |
| 保存方法 | 50%水溶液 | ガラス容器で固体保存 |
金属のアジ化物 — ★最重要★ 注水消火禁止
金属のアジ化物は「その他のもので政令で定めるもの」に分類される第5類危険物です。代表物質はアジ化ナトリウム(NaN₃)とアジ化鉛(Pb(N₃)₂)。どちらも試験に頻出ですが、特にアジ化ナトリウムは「第5類の例外」として必ず押さえてください。
アジ化ナトリウム — ★第5類の例外★
| 項目 | 性質 |
|---|---|
| 化学式 | NaN₃ |
| 外観 | 白色の結晶 |
| 比重 | 1.8 |
| 分解温度 | 約300℃ |
| 水溶性 | 水に溶ける |
| 毒性 | 猛毒 |
アジ化ナトリウムは第5類危険物の中で最も特殊な物質です。試験で狙われるポイントが2つあります。
★ ポイント①:注水消火してはいけない
第5類の消火は「大量の水で冷却」が基本ですが、アジ化ナトリウムは例外です。
加熱すると次の反応が起きます:
2NaN₃ → 2Na + 3N₂↑
分解で金属ナトリウム(Na)が生成されます。ナトリウムは第3類危険物の禁水性物質ですよね。水と激しく反応して水素ガスと大量の熱を出します。ここに水をかけたら大惨事です。消火は乾燥砂で行います。
★ ポイント②:酸と反応して猛毒ガスを発生
アジ化ナトリウムに酸を加えると:
NaN₃ + HCl → NaCl + HN₃(アジ化水素酸)
発生するアジ化水素(HN₃)は猛毒で爆発性のあるガスです。酸性の物質との接触は絶対に避けなければなりません。
アジ化ナトリウムはかつて自動車のエアバッグの膨張剤として使われていました。衝突の瞬間にNaN₃が瞬時に分解して大量の窒素ガス(N₂)を放出し、エアバッグを膨らませる仕組みです。しかし猛毒であることが問題になり、現在は後述する硝酸グアニジンに置き換わっています。
アジ化鉛
| 項目 | 性質 |
|---|---|
| 化学式 | Pb(N₃)₂ |
| 外観 | 白色の結晶 |
| 比重 | 4.7 |
| 水溶性 | 冷水にわずかに溶ける |
| 用途 | 起爆薬 |
アジ化鉛はDDNPと並ぶ起爆薬です。雷管に入れて使われ、衝撃・摩擦に極めて敏感で、わずかな刺激で爆発します。鉛(Pb)を含むため比重が4.7と非常に重いのも特徴です。
銅との接触禁止
アジ化鉛が銅と接触するとアジ化銅(Cu(N₃)₂)が生成されます。アジ化銅はアジ化鉛よりもさらに衝撃に敏感で危険なため、銅製の容器や配管との接触を絶対に避けなければなりません。
硝酸グアニジン — 指定数量100kg(第2種)
| 項目 | 性質 |
|---|---|
| 化学式 | CH₅N₃・HNO₃ |
| 外観 | 白色の結晶 |
| 水溶性 | 水に溶ける |
| 特性 | 第5類の中では比較的安定 |
硝酸グアニジンは第5類の中では衝撃感度が低く、比較的安定した物質です。金属のアジ化物とともに「その他のもので政令で定めるもの」に分類されます。
現在の自動車のエアバッグ膨張剤として、アジ化ナトリウムに代わって使われています。アジ化ナトリウムは猛毒でしたが、硝酸グアニジンの燃焼で発生するのは水蒸気・窒素・二酸化炭素と比較的無害な物質が多いのが採用理由です。
「エアバッグの膨張剤がNaN₃から硝酸グアニジンに変わった」という流れは試験で出ることがあるので、セットで覚えておきましょう。
アジ化ナトリウムの注水禁止 — なぜ水がダメなのか
起爆薬の比較 — DDNPとアジ化鉛
| 比較項目 | DDNP | アジ化鉛 |
|---|---|---|
| 品名 | ジアゾ化合物 | 金属のアジ化物 |
| 色 | 黄色 | 白色 |
| 保存の注意 | 水中保存(乾燥厳禁) | 銅との接触禁止 |
| 共通点 | 起爆薬として雷管に使用。衝撃に極めて敏感 | |
試験で狙われる引っかけ5パターン
❶ アジ化ナトリウムに「大量の水で冷却消火」→ 禁止!
第5類の消火は大量の水が基本ですが、アジ化ナトリウムだけは例外。分解で金属ナトリウム(Na)が生成され、Naは水と激しく反応して水素ガスを出します。消火は乾燥砂です。
❷ アジ化ナトリウムとアジ化鉛の分解生成物を混同する
アジ化ナトリウムの分解 → 金属ナトリウム + N₂(注水禁止の原因)。アジ化鉛の分解 → 金属鉛 + N₂。「注水禁止」はNaN₃だけ。アジ化鉛には適用されません。名前が似ているので混同注意。
❸ ヒドロキシルアミンを「常温で固体」と思い込む
ヒドロキシルアミンの融点は33℃。夏場の室温で溶ける融点の低い物質です。「白色結晶」というイメージだけで固体と決めつけると間違えます。だから50%水溶液で保存するのです。
❹ 硫酸ヒドロキシルアミンの容器を「金属製」と答える
硫酸ヒドロキシルアミンは金属を腐食する性質があります。保存容器はガラス製。ピクリン酸も金属容器NGですが、理由が違います(ピクリン酸は金属塩を生成して爆発、硫酸ヒドロキシルアミンは腐食)。
❺ エアバッグの膨張剤が「今もアジ化ナトリウム」と思い込む
アジ化ナトリウムは猛毒のため、現在のエアバッグでは硝酸グアニジンに置き換わっています。「NaN₃ → 硝酸グアニジン」の変遷を問う問題が出ることがあります。
試験直前チェック ✔
✔ DDNP = ジアゾ化合物 / 起爆薬(雷管)/ 水中保存(乾燥厳禁)
✔ 硫酸ヒドラジン = 白色結晶 / 強い還元性 / 酸化剤と混合禁止
✔ ヒドロキシルアミン = 融点33℃(夏場は液体)/ 50%水溶液で保存 / 強い還元性
✔ 硫酸ヒドロキシルアミン = 遊離体より安定 / ガラス容器(金属腐食)
✔ アジ化ナトリウム = 注水消火禁止! / 分解 → 金属Na + N₂ / 乾燥砂消火
✔ アジ化ナトリウム = 猛毒 / 酸と反応 → 猛毒HN₃ / 旧エアバッグ膨張剤
✔ アジ化鉛 = 起爆薬 / 銅接触禁止(アジ化銅がさらに危険)/ 比重4.7
✔ 硝酸グアニジン = 比較的安定 / 現行エアバッグ膨張剤 / NaN₃の代替
理解度チェック!ミニテスト
問題1 アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)の性質として正しいものはどれか。
(1)黄色の液体である (2)水によく溶ける (3)分解すると窒素ガスを発生する (4)起爆薬として使われる
問題2 アジ化ナトリウムの火災時の消火方法として正しいものはどれか。
(1)大量の水で冷却消火する (2)泡消火剤で窒息消火する (3)ハロゲン化物消火剤を放射する (4)乾燥砂で覆って消火する
問題3 硫酸ヒドロキシルアミンの保存容器として適切なものはどれか。
(1)鉄製のドラム缶 (2)銅製の密閉容器 (3)ガラス容器 (4)灯油中に沈めて保管
問題4 アジ化鉛の性質として誤っているものはどれか。
(1)起爆薬として雷管に使われる (2)衝撃に極めて敏感である (3)銅と接触するとより危険なアジ化銅を生成する (4)加熱すると金属ナトリウムを生成する
問題5 エアバッグの膨張剤として現在アジ化ナトリウムの代わりに使われている物質はどれか。
(1)硫酸ヒドラジン (2)AIBN (3)DDNP (4)硝酸グアニジン
問題6 次のア〜オの記述のうち、誤っているものの組合せはどれか。
ア.AIBNは加熱により分解して窒素ガスを発生する。
イ.アジ化ナトリウムの火災には、大量の水で冷却消火する。
ウ.硫酸ヒドロキシルアミンは金属を腐食するため、ガラス容器で保存する。
エ.DDNPは乾燥状態では衝撃に極めて敏感であるため、水中に浸けて保存する。
オ.硝酸グアニジンは猛毒であるため、現在はエアバッグの膨張剤として使用されていない。
(1)ア・ウ (2)イ・エ (3)イ・オ (4)ウ・オ
第5類は物質名が長くて覚えにくい…と感じたら
体系的にまとめられた参考書で全体像を掴むのが近道です。おすすめ参考書・問題集はこちらで比較しています。通信講座で効率よく学びたい方はSAT危険物取扱者講座
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