法令(共通)

保安距離と保有空地の違い・一覧|必要な5施設と覚え方

保安距離と保有空地は、どちらも危険物施設の周囲に関する基準ですが、測る相手と数値の決まり方が違います。保安距離は住居・学校などの保安対象物まで、保有空地は危険物施設そのものの周囲に確保する空間です。

先に結論:原則を学ぶ入口は、製造所・屋内貯蔵所・屋外タンク貯蔵所・屋外貯蔵所・一般取扱所の5施設です。ただし、保有空地の幅は施設ごとに別表で決まり、簡易タンク貯蔵所には別に1mの空地があります。さらに2026年改正で、一定の防火措置と安全性能を満たす場合の特例が拡大されました。

保安距離・保有空地・敷地内距離の違い

用語 どこからどこまで 数値を決めるもの
保安距離 施設の外壁等から住居・学校・高圧ガス施設等まで 相手となる保安対象物
保有空地 危険物を扱う建築物・タンク・柵等の周囲 施設区分、指定数量の倍数、構造
敷地内距離 屋外貯蔵タンクの側板から敷地境界線まで タンク寸法、危険物の引火点等

「距離は相手、空地は施設の周囲」と分けるのが基本です。屋外タンクの敷地内距離は、保安距離や保有空地とは別に危険物の規制に関する政令第11条第1項第1号の2で定められています。

原則を確認する5施設

次の5施設には、各施設の条文で保安距離と保有空地の原則が置かれています。一般取扱所は政令第19条により、製造所の第9条第1項を準用します。

施設 根拠の入口 保有空地の決まり方
製造所 政令第9条 10倍以下3m、10倍超5m
屋内貯蔵所 政令第10条 倍数と倉庫の耐火構造で0.5〜15m
屋外タンク貯蔵所 政令第11条 倍数とタンク寸法で3m以上
屋外貯蔵所 政令第16条 倍数で3〜30m
一般取扱所 政令第19条 第9条を準用。ただし取扱形態別の特例あり

覚えるときは「製造・屋内・屋外タンク・屋外・一般」と、貯蔵所3つを中央にまとめます。ただし「5施設なら数値も全部同じ」とは覚えません。施設の全体像は製造所等12施設の区分で確認できます。

保安距離の原則一覧

保安対象物 原則の距離 判別語
7,000V超35,000V以下の特別高圧架空電線 水平3m以上 電線・35,000V以下
35,000V超の特別高圧架空電線 水平5m以上 電線・35,000V超
同一敷地外の住居 10m以上 住居
規則第12条の高圧ガス施設等 20m以上 高圧ガス等
学校・病院・劇場等 30m以上 多数の人を収容
法令が指定する文化財建造物 50m以上 文化財建造物

数列は3・5・10・20・30・50です。ただし、3mと5mは水平距離で測る特別高圧架空電線です。住居・学校等・文化財建造物には、防火上有効な塀等により市町村長等が安全と認めた場合の距離特例があります。高圧ガス施設等も、現行の規則第12条では20mを原則としつつ、安全性能を満たす距離を用いる特例があります。

保有空地は施設別の表で確認する

製造所・一般取扱所

指定数量の倍数 原則の幅
10以下 3m以上
10超 5m以上

一般取扱所はこの原則を準用しますが、吹付塗装、洗浄、ボイラー、油圧装置、蓄電池設備などには取扱形態別の特例があります。施設名だけで3m・5mを確定せず、適用する特例まで確認します。

屋内貯蔵所

指定数量の倍数 壁・柱・床が耐火構造 それ以外
5以下 0.5m以上
5超10以下 1m以上 1.5m以上
10超20以下 2m以上 3m以上
20超50以下 3m以上 5m以上
50超200以下 5m以上 10m以上
200超 10m以上 15m以上

屋外タンク貯蔵所

指定数量の倍数 原則の幅
500以下 3m以上
500超1,000以下 5m以上
1,000超2,000以下 9m以上
2,000超3,000以下 12m以上
3,000超4,000以下 15m以上
4,000超 直径等または高さの大きい方以上(最低15m)

屋外タンクの保有空地とは別に、引火点を有する危険物では側板から敷地境界線までの敷地内距離があります。一般の屋外貯蔵タンクでは、引火点21℃未満は直径等×1.8、21℃以上70℃未満は×1.6、70℃以上は直径等を基にし、いずれもタンク高さと比べて大きい方を使います。特別防災区域内の一定の1,000kL以上タンクには50m・40m・30mの下限もあります。タンク4種の区分はタンク貯蔵所の比較へ分けて確認してください。

屋外貯蔵所

指定数量の倍数 原則の幅
10以下 3m以上
10超20以下 6m以上
20超50以下 10m以上
50超200以下 20m以上
200超 30m以上

屋内貯蔵所と屋外貯蔵所は同じ「貯蔵所」でも数値表が違います。建物条件も含めた比較は屋内貯蔵所・屋外貯蔵所の基準で確認してください。

簡易タンクの1mは別枠で覚える

簡易タンク貯蔵所は、上の5施設の保安距離の組には入りません。しかし政令第14条は、簡易貯蔵タンクを屋外に設ける場合、タンク周囲に1m以上の空地を求めています。専用室内ではタンクと壁の間に0.5m以上の間隔です。

したがって「保安距離の5施設」と「空地が出てくる全施設」を同じ一覧にしません。給油取扱所にも給油空地・注油空地など固有の空間基準があるため、「保有空地の表にない=距離基準がない」とは判断できません。給油所の固有基準は給油空地・注油空地・防火塀で整理しています。

2026年改正後も原則の表は残っている

消防庁の2026年4月3日公布通知により、製造所、屋内貯蔵所、屋外タンク貯蔵所、屋外貯蔵所の保有空地について、条件付き特例が拡大されました。6月29日公布通知では、その考え方が高引火点危険物の施設など関連する個別基準へ展開されています。

特例は、単に塀を一枚置けば使えるものではありません。現行規則は、空地を確保できない部分への耐火構造の塀等、延焼防止上有効な散水設備等、主要な出入口等の周辺に消防活動用の空地を求めます。さらに告示で、危険物施設と隣接建築物の双方からの火災を想定した輻射熱・損傷を評価します。

試験での読み方:問題文に特例条件がなければ、まず原則の数値表で判定します。「2026年改正で保有空地がすべて不要になった」「塀だけで当然に空地をゼロにできる」という選択肢は誤りです。改正全体は2026年の危険物法令改正で確認できます。

少量危険物・指定可燃物は同じ表で決めない

この記事の一覧は、消防法上の製造所等に適用する国の政令・規則が中心です。指定数量未満の少量危険物や指定可燃物は、市町村の火災予防条例が基準になるため、「少量危険物の空地は全国一律1m」とは限りません。物品、数量、屋内外、塀の有無を整理し、所在地の条例と所轄消防の案内を確認します。

4問で判別する

問1:保安距離10mは、施設の周囲へ一律10mの空地を取る意味でしょうか。

違います。10mは原則として同一敷地外の住居までの保安距離です。保有空地は施設別の表で判定します。

問2:指定数量の倍数8の製造所で、原則の保有空地は何mでしょうか。

3m以上です。製造所は10倍以下3m、10倍超5mで区切ります。

問3:簡易タンク貯蔵所は5施設に入らないため、屋外でも空地は不要でしょうか。

不要ではありません。屋外の簡易貯蔵タンクの周囲には1m以上の空地が必要です。

問4:2026年改正後は、耐火構造の塀さえあれば保有空地を必ず0mにできるでしょうか。

できません。防火措置、散水設備等、消防活動用空地、告示の安全性能など、対象施設に応じた条件を満たす必要があります。

まとめ

保安距離は保安対象物まで、保有空地は施設の周囲、屋外タンクの敷地内距離は側板から敷地境界までです。原則を学ぶ5施設は同じでも、保有空地の数値表は施設ごとに異なります。相手→施設区分→倍数・構造→特例の順で条件を確認してください。

次の復習先

資格太郎

この記事を書いた人

「危険物取扱者への道」運営者。危険物取扱者試験を独学で学習している受験生です。免状は保有していないため、記載する内容は消防法・危険物の規制に関する政令および規則の条文(e-Gov法令検索)と、消防試験研究センターの公開情報で必ず確認してから公開しています。

運営者情報と、記事を公開するまでの確認手順を見る →

※当サイトの画像にはAI生成のものが含まれており、実際の機器・器具とは外観が異なる場合があります。問題・解答の内容には細心の注意を払っておりますが、誤りが含まれる可能性があります。学習の参考としてご活用いただき、最終的な確認は公式テキスト・法令等で行ってください。当サイトの情報に基づく判断によって生じた損害について、一切の責任を負いかねます。

内容の誤りやお気づきの点がございましたら、お問い合わせフォームよりご連絡いただけますと幸いです。正確な情報をお届けできるよう、随時修正してまいります。

-法令(共通)