結論から言います
危険物取扱者試験の計算問題はパターンが決まっています。出る計算は「指定数量の倍数」「蒸気比重」「熱量」「mol計算」の4タイプがほとんどです。
- 乙種では「倍数計算」と「蒸気比重」が頻出(この2つだけで十分な場合も)
- 甲種では上記に加えて「mol計算」「ヘスの法則」「ファラデーの法則」が出る
- 各パターンの「解き方の型」を覚えれば、あとは数字を当てはめるだけ
- この記事では各パターンに例題+練習問題をセットにしています
苦手な人も、パターンを1つずつ潰していけば大丈夫です。
パターン1:指定数量の倍数計算(乙種・甲種・丙種共通)
指定数量の倍数はほぼ毎回出題される最重要計算です(→ ミニテスト「指定数量・倍数計算」で演習)。
基本公式
倍数 = 貯蔵量 ÷ 指定数量
1種類の危険物だけなら簡単ですが、試験では複数の危険物を同じ場所に置くケースが出ます。このとき倍数は合算します。
複数品名の倍数 = それぞれの(貯蔵量 ÷ 指定数量)を全部足す
例題
問題:ある貯蔵所にガソリン400L、灯油2,000L、重油4,000Lを貯蔵している。指定数量の倍数はいくらか。
解き方の型:各品名の指定数量を確認 → 各倍数を計算 → 合計
| 品名 | 貯蔵量 | 指定数量 |
|---|---|---|
| ガソリン(第1石油類・非水溶性) | 400L | 200L |
| 灯油(第2石油類・非水溶性) | 2,000L | 1,000L |
| 重油(第3石油類・非水溶性) | 4,000L | 2,000L |
倍数 = 400÷200 + 2,000÷1,000 + 4,000÷2,000 = 2 + 2 + 2 = 6倍
練習問題
問1:エタノール600L、アセトン200L、軽油3,000Lを同一場所に貯蔵している。指定数量の倍数はいくらか。
(1)4.5倍 (2)5.0倍 (3)5.5倍 (4)6.0倍
問2:ガソリン100L、灯油500Lを貯蔵している。指定数量の倍数が1以上になると規制を受けるが、この貯蔵所は規制対象か。
(1)対象(倍数1.0) (2)対象外(倍数0.5) (3)対象(倍数1.5) (4)対象外(倍数1.0未満)
パターン2:蒸気比重の計算(乙種・甲種共通)
基本公式
蒸気比重 = 分子量 ÷ 29
29は空気の平均分子量(窒素N₂=28が約80%、酸素O₂=32が約20%の加重平均)です。
例題
問題:エタノール(C₂H₅OH)の蒸気比重を求めよ。原子量はH=1、C=12、O=16とする。
解き方の型:① 分子量を計算 → ② ÷29
① 分子量 = 12×2 + 1×5 + 16 + 1 = 24 + 5 + 16 + 1 = 46
② 蒸気比重 = 46 ÷ 29 ≒ 1.59(空気の約1.6倍 → 低所にたまる)
練習問題
問3:アセトン(CH₃COCH₃)の蒸気比重として最も近いものはどれか。原子量はH=1、C=12、O=16とする。
(1)1.0 (2)2.0 (3)3.0 (4)4.0
パターン3:熱量の計算(乙種・甲種共通)
基本公式
Q:熱量(J)、m:質量(g)、c:比熱(J/g·K)、ΔT:温度変化(K)
例題
問題:水500gを20℃から80℃に温めるのに必要な熱量はいくらか。水の比熱は4.2 J/g·Kとする。
解き方の型:Q = m × c × ΔT に数字を代入するだけ
Q = 500 × 4.2 × (80 - 20) = 500 × 4.2 × 60 = 126,000 J = 126 kJ
練習問題
問4:鉄200g(比熱0.45 J/g·K)を25℃から125℃に加熱するのに必要な熱量はいくらか。
(1)4,500J (2)9,000J (3)11,250J (4)22,500J
パターン4:mol計算(甲種)
甲種の物理学及び化学で出題されます。乙種では基本的に出ませんが、基本を知っておくと理解が深まります。
基本公式
物質量(mol) = 質量(g) ÷ 分子量(g/mol)
1 mol の気体 = 標準状態(0℃, 1気圧)で 22.4L
例題
問題:メタン(CH₄)16gは何molか。また、標準状態で何Lか。原子量はH=1、C=12。
分子量 = 12 + 1×4 = 16
物質量 = 16g ÷ 16g/mol = 1 mol
体積 = 1 mol × 22.4 L/mol = 22.4 L
練習問題
問5:プロパン(C₃H₈)44gを完全燃焼させたとき、生じる二酸化炭素は標準状態で何Lか。C₃H₈ + 5O₂ → 3CO₂ + 4H₂O。原子量はH=1、C=12。
(1)22.4L (2)44.8L (3)67.2L (4)89.6L
パターン5:ヘスの法則(甲種)
基本の考え方
反応熱は経路によらず、始点と終点だけで決まる
→ 分からない反応熱を、他の反応熱から逆算できる!
例題
問題:次の2つの反応から、C(黒鉛) + ½O₂ → CO の反応熱Qを求めよ。
① C(黒鉛) + O₂ → CO₂ ΔH₁ = -394 kJ
② CO + ½O₂ → CO₂ ΔH₂ = -283 kJ
解き方の型:求めたい反応式を、①②の足し引きで作る
求めたい式 = ① − ② なので:
Q = (-394) − (-283) = -111 kJ(発熱反応)
練習問題
問6:次の反応熱から、H₂(g) + ½O₂(g) → H₂O(液) の反応熱Qを求めよ。
① H₂(g) + ½O₂(g) → H₂O(気) ΔH₁ = -242 kJ
② H₂O(液) → H₂O(気) ΔH₂ = +44 kJ(蒸発熱)
(1)-198 kJ (2)-242 kJ (3)-286 kJ (4)-330 kJ
パターン6:ファラデーの法則(甲種)
基本公式
析出量 = (原子量 × 電気量) ÷ (価数 × ファラデー定数)
ファラデー定数 F = 96,500 C/mol
電気量(C)= 電流(A)× 時間(秒)も忘れずに。
練習問題
問7:硫酸銅(II)水溶液に2Aの電流を4,825秒間流した。陰極に析出する銅の質量はいくらか。Cu=64、ファラデー定数=96,500 C/mol。
(1)1.6g (2)3.2g (3)6.4g (4)12.8g
計算問題を解くコツ3つ
コツ1:公式は「意味」で覚える
Q=mcΔTなら「重い物(m)を温めにくい物(c大)ほど、たくさん熱(Q)がいる」。公式を丸暗記するより、何が増えたら何が増えるかで理解すると忘れにくいです。
コツ2:単位をたどれば答えが出る
蒸気比重 = g/mol ÷ g/mol = 無次元(単位なし)。molの計算は「g ÷ g/mol = mol」。単位が正しくキャンセルされるかを確認すれば、計算ミスを防げます。
コツ3:選択肢から逆算する
4択問題なので、概算で選択肢を絞るテクニックが使えます。例えば蒸気比重で分子量が60程度なら、60÷29≒2。選択肢に「2.0」があれば、正確な計算をしなくても答えがわかることがあります。
まとめ問題
総合問題
ある貯蔵所に次の危険物を貯蔵している。指定数量の倍数として正しいものはどれか。
- ジエチルエーテル(特殊引火物):25L
- トルエン(第1石油類・非水溶性):100L
- 酢酸(第2石油類・水溶性):1,000L
(1)0.5倍 (2)1.0倍 (3)1.5倍 (4)2.0倍
計算公式 クイックリファレンス
✔ 蒸気比重 = 分子量 ÷ 29(29=空気の平均分子量)
✔ 熱量 Q = m × c × ΔT(質量×比熱×温度差)
✔ 物質量(mol) = 質量 ÷ 分子量(1mol気体=22.4L @標準状態)
✔ ヘスの法則: 反応熱は経路によらず始点→終点で決まる
✔ ファラデー: 析出量 = (原子量×電気量) ÷ (価数×96,500)
✔ 電気量(C) = 電流(A) × 時間(秒)
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