結論から言います
第4類危険物(引火性液体)の火災では、棒状の水をかけてはいけません。理由は単純で、油が水の上に浮いて燃焼面積が広がるからです。
じゃあ何で消すのか? 答えは泡・二酸化炭素・粉末・ハロゲン化物、そして霧状の水です。
第4類の消火 ── 3つの原則
- 棒状の水は厳禁(油が飛び散る・燃え広がる)
- 窒息消火が基本(泡・CO₂・粉末で空気を遮断)
- 水溶性液体には耐アルコール泡を使う(普通の泡は溶けてしまう)
なぜ水をかけてはいけないのか?
第4類危険物の多くは水より軽い(比重が1未満)です。燃えている油に水をかけると、油は水の上に浮かんだまま燃え続け、水が広がった分だけ燃焼面積も広がります。
身近な例で考えてみましょう。天ぷら鍋の油に火がついたとき、水をかけたらどうなるか? 油が一気に飛び散って大炎上します。200℃以上に加熱された油に水が触れると、水が瞬間的に蒸発して体積が約1,700倍に膨張し、油を周囲にまき散らすからです。
例外もある!
二硫化炭素(特殊引火物)は比重が約1.26で水より重いため、水の下に沈みます。この場合は水を張って液面を覆う「水没消火」が有効です。ただしこれはあくまで例外。原則は「水禁止」です。
消火剤の種類と使い分け
泡消火剤 ── 油火災の主役
泡消火剤は、第4類危険物の火災に最も効果的な消火剤です。
泡が燃えている液面をすっぽり覆うことで、空気(酸素)を遮断して窒息消火します。同時に、泡に含まれる水分による冷却効果もあります。

ただし、ここで重要な注意点があります。
| 液体の種類 | 使う泡 | 理由 |
|---|---|---|
| 非水溶性(ガソリン・灯油・重油等) | 普通の泡 | 泡が液面に浮いて覆える |
| 水溶性(アルコール・アセトン・グリセリン等) | 耐アルコール泡 (水溶性液体用泡) |
普通の泡だと溶けてしまう |
なぜ普通の泡が溶ける?
普通の泡消火剤の泡は、大部分が水でできています。アルコールやアセトンなどの水溶性液体は水と混ざりやすいため、泡の中の水分を吸い取ってしまい、泡が壊れて消えてしまうのです。
耐アルコール泡は、泡の表面に特殊な被膜を作って水溶性液体に溶かされにくくしたものです。
この「普通泡 vs 耐アルコール泡の使い分け」は試験の超頻出テーマです。
二酸化炭素(CO₂)消火剤
二酸化炭素消火剤は、CO₂ガスを噴射して酸素濃度を下げる窒息消火です。
- メリット ── 消火後に残留物が残らない(精密機器や電気設備にも使える)
- デメリット ── 屋外では風で飛ばされて効果が薄い。冷却効果は小さいので再燃しやすい
粉末消火剤
粉末消火剤は、微粉末を吹き付けて窒息効果と抑制効果(負触媒効果)の両方で消火します。
- メリット ── 速効性が高い(初期消火に強い)。油火災にも電気火災にも使える万能タイプ
- デメリット ── 冷却効果がないため再燃しやすい。粉末が飛び散って視界が悪くなる


ハロゲン化物消火剤
ハロゲン化物消火剤は、負触媒効果(抑制作用)で燃焼の連鎖反応を断ち切ります。
- メリット ── 消火後の汚損が少ない。電気設備にも使える
- デメリット ── オゾン層を破壊するため、現在は生産が規制されている(既設設備のみ使用可)
霧状の水
霧状にした水は、第4類危険物の火災にも有効です。
水を細かい霧(ミスト)にすると、表面積が大きくなって蒸発しやすくなるため、冷却効果が高まります。また、霧状の水は油の液面を直接叩かないので、油が飛び散りにくいのもポイントです。
つまり、「水がダメ」なのではなく「棒状の水がダメ」ということ。霧状にすればOKです。
各石油類ごとの消火ポイント
| 分類 | 消火の注意点 |
|---|---|
| 特殊引火物 | 引火点が極めて低い → 初期消火が命。二硫化炭素は水より重いので水没消火も有効 |
| 第1石油類 | 引火点が低く蒸気が発生しやすい → 蒸気の拡散を防ぎつつ泡で液面を覆う |
| アルコール類 | 水溶性 → 耐アルコール泡を使用(普通泡は溶ける) |
| 第2石油類 | 灯油・軽油は普通泡でOK。酢酸(水溶性)には耐アルコール泡 |
| 第3石油類 | 重油はボイルオーバーとスロップオーバーに注意。グリセリン・エチレングリコール(水溶性)には耐アルコール泡 |
| 第4石油類 | 引火点が高く常温の危険は低い。霧状になると引火しやすい |
| 動植物油類 | 液温が上がりやすく消しにくい。天ぷら鍋には絶対に水をかけない |
消火剤の適応まとめ
間違えやすい5つの引っかけ
1. 水溶性液体に普通の泡消火剤を使えると思い込む
→ 普通の泡はアルコール等に溶けてしまう。水溶性には耐アルコール泡(水溶性液体用泡)が必要
2. 「二硫化炭素に水は使えない」と早合点する
→ 二硫化炭素は水より重い(比重約1.26)ので水没消火が有効。第4類で「水OK」の例外
3. 「霧状の水も第4類にはダメ」と思い込む
→ ダメなのは棒状の水だけ。霧状の水は冷却効果が高く、油を飛散させないので有効
4. 粉末消火剤の消火原理を「窒息だけ」と答える
→ 粉末消火剤は窒息効果と抑制効果(負触媒効果)の両方。片方だけでは不正解
5. CO₂消火は万能だと思い込む
→ 密閉空間で大量噴射すると酸欠の危険あり。また屋外では風で散逸して効果が薄く、冷却効果も小さいため再燃リスクが高い
✔ 第4類の基本消火 = 泡・CO₂・粉末・ハロゲン化物・霧状の水
✔ 棒状の水がNGな理由 = 油が水に浮いて燃焼面積が広がる
✔ 水溶性液体の泡 → 耐アルコール泡(普通泡は溶ける)
✔ 二硫化炭素(比重1.26)→ 水没消火OK(第4類で水が使える例外)
✔ 霧状の強化液 → 冷却効果+電気火災にも対応(棒状は感電リスク)
まとめ問題
最後に4問、理解度チェックをしておきましょう。
問1 第4類危険物の火災に棒状の水をかけてはいけない理由として、最も適切なものはどれか。
- 水が蒸発して有毒ガスが発生するため
- 水と反応して爆発するため
- 油が水に浮いて燃焼面積が広がるため
- 水の温度が低すぎて消火効果がないため
問2 水溶性の第4類危険物の火災に使用する泡消火剤として、正しいものはどれか。
- たん白泡消火剤
- 合成界面活性剤泡消火剤
- 水成膜泡消火剤
- 水溶性液体用泡消火剤(耐アルコール泡)
問3 第4類危険物の消火方法として、誤っているものはどれか。
- 二酸化炭素消火剤は窒息消火の効果がある
- 霧状の水は冷却効果があり有効である
- 粉末消火剤は窒息効果と抑制効果がある
- 棒状の水は冷却効果が高く最も有効である
問4 次のうち、火災時の消火において特に注意すべき現象と物質の組み合わせとして、正しいものはどれか。
- ボイルオーバー ── ガソリン
- スロップオーバー ── 灯油
- ボイルオーバー ── 重油
- スロップオーバー ── アセトン
問5 ある化学工場の倉庫に、ガソリン(非水溶性)、エタノール(水溶性)、二硫化炭素(比重1.26)の3種類の第4類危険物が保管されている。次の消火対応のうち、すべて正しい組み合わせはどれか。
- ガソリン火災 → 普通の泡消火剤で液面を覆う
- エタノール火災 → たん白泡消火剤で液面を覆う
- 二硫化炭素の保管容器から出火 → 棒状の水で冷却消火
- すべての火災に共通 → 粉末消火剤は窒息効果のみで消火
(1)ア のみ正しい (2)ア・ウ が正しい (3)ア・イ が正しい (4)ウ・エ が正しい
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