乙種第4類(引火性液体)

アルコール類とは?メタノール・エタノールの引火点と比重を比較|乙4

結論から言います:アルコール類=「炭素数1〜3の飽和一価アルコール」です

「アルコール」って聞くと、お酒を思い浮かべる人が多いですよね。実はお酒に入っているアルコールはエタノール(エチルアルコール)という物質です。

消防法の「アルコール類」は、炭素数が1〜3の飽和一価アルコールに限定されています。代表例はメタノール・エタノール・1-プロパノール・2-プロパノールです。指定数量は400Lです。

「え、ブタノールはアルコールじゃないの?」――ここは試験で問われやすい整理ポイントです。炭素数が4のn-ブタノールは「アルコール類」ではなく第2石油類に分類されます。この記事では、アルコール類の定義から各物質の性質、消火方法まで、試験で確認したいポイントを順番に整理します。

アルコール類の定義 — 消防法上の「アルコール」はかなり狭い

日常会話で「アルコール」というとお酒やら消毒液やら幅広いイメージがありますが、消防法での「アルコール類」の定義は範囲が限定されています。

消防法上の定義

アルコール類とは、1分子を構成する炭素の原子の数が1個から3個までの飽和一価アルコール(変性アルコールを含む)をいう。ここでいう「一価アルコール」とは、有機化合物の官能基のうち水酸基(OH基)が1つだけ付いた化合物のことです。
ただし、アルコールの含有量が60重量パーセント未満の水溶液を除く。

公式情報で確認するポイント

消防法上のアルコール類の定義は、e-Gov法令検索の消防法 別表第一で確認できます。試験では「炭素数1〜3」「飽和」「一価」「変性アルコールを含む」「総務省令で定める除外がある」という条件を分けて押さえると、n-ブタノールやエチレングリコールのひっかけに対応しやすくなります。

ざっくり言うと、こういうことです。

アルコール類の3条件

  • 炭素数が1〜3個(メタノール・エタノール・プロパノール)
  • 飽和(二重結合・三重結合がない)
  • 一価(OH基が1つだけ)

さらに、水溶液の場合はアルコール含有量が60%以上でないとアルコール類に該当しません。

たとえば消毒用エタノール(濃度70〜80%)はアルコール類ですが、みりん(アルコール分14%程度)はアルコール類に該当しないわけですね。

指定数量は400L

アルコール類の指定数量400L。第4類危険物の分類の中では、特殊引火物(50L)や第1石油類(非水溶性200L・水溶性400L)と比べると、第1石油類の水溶性と同じ数量です。

n-ブタノールが「アルコール類」に該当しない理由

ここは、アルコール類の定義を理解しているかを確認する問題でよく使われます。

n-ブタノール(1-ブタノール、C₄H₉OH)は化学的にはれっきとしたアルコールです。名前にも「ブタノール」とアルコールが入っています。

でも、炭素数が4なんです。

消防法の「アルコール類」は炭素数1〜3に限定。炭素数4のn-ブタノールは定義から外れるので、アルコール類ではなく第2石油類(非水溶性)に分類されます。

比較項目 アルコール類 n-ブタノール
炭素数 1〜3 4
消防法の分類 アルコール類 第2石油類(非水溶性)
指定数量 400L 1,000L

指定数量も400Lではなく1,000Lになります。同じ「アルコール」なのに分類が違う――試験ではここを突いてくる問題がとても多いです。「n-ブタノールはアルコール類である」という選択肢は、消防法上の分類では誤りです。

アルコール類に該当する物質と性質一覧

アルコール類に該当するのは、以下の4つの物質です(プロパノールは2種類あります)。

物質名 引火点 沸点
メタノール(CH₃OH) 11℃ 64.7℃
エタノール(C₂H₅OH) 13℃ 78.3℃
1-プロパノール(C₃H₇OH) 23℃ 97℃
2-プロパノール(IPA) 12℃ 82.4℃

全員、引火点が常温(20℃)前後かそれ以下です。つまり、常温付近でも引火の危険があるということです。比重はいずれも0.79〜0.80で水より軽いのも共通です。

メタノール(メチルアルコール・CH₃OH) — 炭素数1

メタノールは、最もシンプルなアルコールです。炭素が1個、OH基が1個。

  • 引火点:11℃ / 沸点:64.7℃ / 比重:0.79
  • 水によく溶ける
  • 有毒 — 誤飲や蒸気吸入で中毒を起こし、失明・死亡につながるおそれがあります
  • 炎の色:淡い青白色(ほとんど見えない)
  • 用途:溶剤、ホルマリンの原料、燃料電池

メタノールの炎が見えにくい問題
メタノールの炎は淡い青白色で、明るい場所だとほとんど見えません。これは試験でも「メタノールの火災は発見が遅れやすい」という形で出題されます。実務では、炎が見えにくい前提で周囲の安全確認を行う必要があります。

メタノールの炎。明るい場所ではほぼ見えないが、暗い場所では青白い炎が確認できる
メタノールの炎。明るい場所(左)ではほぼ見えないが、暗い場所(右)では青白い炎が確認できる

ちなみに「メチルアルコール」「木精(もくせい)」とも呼ばれます。昔は木を蒸し焼きにして作っていたので「木精」なんですね。

エタノール(エチルアルコール・C₂H₅OH) — 炭素数2

エタノールは、お酒に含まれるアルコールです。「酒精(しゅせい)」とも呼ばれます。身近に使われるアルコールの一つです。

  • 引火点:13℃ / 沸点:78.3℃ / 比重:0.79
  • 水によく溶ける
  • 毒性:メタノールほどではないが、大量摂取は危険(大量摂取は急性アルコール中毒につながります)
  • 炎の色:淡い青白色(メタノールと同じく見えにくい)
  • 用途:酒類、消毒液、燃料、溶剤

コロナ禍で手指消毒用アルコールが話題になりましたが、手指消毒用アルコールは、エタノールまたはイソプロパノールを主成分とするものがあります。消毒用エタノールの濃度は70〜80%なので、消防法上はアルコール類に該当します。大量に保管する場合は、指定数量(400L)や自治体の案内を確認する必要があります。

1-プロパノール(n-プロピルアルコール・C₃H₇OH) — 炭素数3

  • 引火点:23℃ / 沸点:97℃ / 比重:0.80
  • 水に溶ける
  • アルコール類の中で引火点が最も高い(とはいえ23℃なので、夏場は常温で引火します)
  • 用途:溶剤、化学合成の原料

2-プロパノール(イソプロピルアルコール・IPA) — 炭素数3

  • 引火点:12℃ / 沸点:82.4℃ / 比重:0.79
  • 水に溶ける
  • 用途:消毒液(手術前の皮膚消毒など)、電子部品の洗浄

電子基板の洗浄や消毒で使われる「IPA」は、2-プロパノール(イソプロピルアルコール)の略称です。1-プロパノールと2-プロパノールは構造異性体(同じ分子式 C₃H₈O だけどOH基がくっつく位置が違う)の関係にあります。

アルコール類の6つの共通性質

第4類危険物の共通性質に加えて、アルコール類には以下の特徴があります。性質をまとめて問う問題で整理しておきたい部分です。

アルコール類の共通性質6つ

  1. すべて水溶性 — 水によく溶ける(これは全アルコール類に共通!)
  2. 蒸気は空気より重い — 蒸気比重>1なので、低い場所に溜まる
  3. 液体は水より軽い — 比重が0.79〜0.80(水に浮く)
  4. 引火しやすい — 引火点が低い(11〜23℃)
  5. 炎が見えにくい — 特にメタノール・エタノールは淡い青白色の炎で、日中は発見が遅れる
  6. 特有の芳香がある

特に大事なのは「すべて水溶性」という点。特殊引火物第1石油類には非水溶性の物質もありますが、アルコール類は全員が水に溶ける。これは消火方法に直結するので、次のセクションで詳しく説明します。

アルコール類の消火方法 — 普通の泡じゃダメな理由

アルコール類の火災で最も重要なポイントがこちら。

普通の泡消火剤ではアルコール類の火災は消せない!

アルコール類は水溶性なので、普通の泡をかけると泡がアルコールに溶けて消えてしまうのです。だから耐アルコール泡(水溶性液体用泡消火剤)を使う必要があります。

普通の泡消火剤は、水溶液の膜で燃えている液体の表面を覆って窒息消火する仕組みです。でもアルコールは水に溶けるので、泡の水溶液部分がアルコールに吸い取られて、泡がどんどん壊れてしまう。これでは消火できません。

耐アルコール泡は、水溶性の液体に溶けにくい特殊な膜を作るタイプの泡消火剤。アルコール類や水溶性のアセトンなどの火災に対応できます。

消火方法 有効性 備考
耐アルコール泡 ◎ 最適 水溶性液体に溶けにくい
CO₂消火器 ○ 有効 窒息効果で消火
粉末消火器 ○ 有効 抑制効果で消火
普通の泡 × 不適 泡が溶けてしまう
水(大量) △ 条件付き 大量なら冷却効果あり

水については、大量にかければ冷却効果で消火できる場合がありますが、少量だとアルコールが水に溶けて拡散するだけなので注意が必要です。試験では「耐アルコール泡(水溶性液体用泡)が有効」と答えられれば正解です。

メタノールとエタノールの比較 — 試験で問われるポイント

メタノールとエタノールは名前も性質も似ていますが、毒性に大きな違いがあります。試験で比較が出たときのために整理しておきましょう。

比較項目 メタノール エタノール
分子式 CH₃OH C₂H₅OH
引火点 11℃ 13℃
毒性 有毒(失明・死亡) 大量摂取は危険

メタノールは少量でも重い中毒につながるおそれがあり、見た目やにおいだけでエタノールと安全に区別することはできません。実務で扱う場合は、容器表示やSDS(安全データシート)を確認し、誤飲・吸入を避ける管理が必要です。

試験では「メタノールは有毒であり、蒸気を吸入しても危険である」「メタノールとエタノールの外観は似ている」などの形で出題されます。

試験でよく引っかかるポイント

引っかけ1
「アルコール類=アルコール全般」と思わせる
化学の世界ではアルコールはOH基を持つ有機化合物全般ですが、消防法のアルコール類は炭素数1〜3の飽和一価アルコールだけ。この定義の「狭さ」を理解していないと落とされます。

引っかけ2
n-ブタノール(C4)はアルコール類?
名前に「ブタノール」とあるのでアルコール類だと思いがちですが、炭素数4なのでアルコール類に該当しない→第2石油類。指定数量も400Lではなく1,000L。これは鉄板の出題パターンです。

引っかけ3
メタノールの毒性を「飲んだ場合だけ」と限定する
メタノールは蒸気の吸入でも中毒を起こします。「経口摂取のみ有害」という選択肢はひっかけです。誤飲だけでなく吸入にも注意が必要です。

引っかけ4
エタノールの炎は「明るいオレンジ色」?
エタノールもメタノールも炎は淡い青白色。明るい場所では見えにくく、火災の発見が遅れます。「明るいオレンジ色」は木材や紙の炎の色です。

引っかけ5
アルコール類に「非水溶性」が存在する?
アルコール類は全て水溶性です。指定数量は水溶性の400L一択。「非水溶性のアルコール類は指定数量200L」などという選択肢があったら即×です。

試験直前チェックカード

1. 定義:炭素数1〜3飽和一価アルコール(含有量60%以上)

2. 指定数量400L(全て水溶性→非水溶性の区分なし)

3. メタノール:引火点11℃有毒(失明・死亡)・蒸気吸入も危険・炎は淡い青白色

4. エタノール:引火点13℃・お酒のアルコール・炎は淡い青白色で見えにくい

5. n-ブタノール:炭素数4→アルコール類ではない第2石油類(指定数量1,000L)

6. 消火耐アルコール泡が最適(普通の泡は溶けて×)・CO₂/粉末もOK

7. 共通性質:水溶性・液体は水より軽い(比重0.79〜0.80)・蒸気は空気より重い

まとめ — 試験に出る最重要ポイント

  • アルコール類=炭素数1〜3の飽和一価アルコール、指定数量は400L
  • 含有量60%未満の水溶液はアルコール類から除外
  • n-ブタノール(炭素数4)はアルコール類ではなく第2石油類(指定数量1,000L)
  • すべて水溶性で、液体は水より軽い
  • メタノールは有毒(失明・死亡のおそれ)
  • 炎が淡い青白色で見えにくい(火災発見の遅れに注意)
  • 消火は耐アルコール泡(水溶性液体用泡)が最適。普通の泡は溶けるので×

まとめ問題 — 理解度チェック

最後に、この記事で学んだ内容を6問で確認しましょう。

【問題1】消防法上の「アルコール類」の定義として、正しいものはどれか。

(1)水酸基(OH基)を持つ有機化合物の総称である。
(2)1分子を構成する炭素の原子の数が1個から4個までの飽和一価アルコールである。
(3)1分子を構成する炭素の原子の数が1個から3個までの飽和一価アルコールである。
(4)引火点が23℃未満のアルコールの総称である。
(5)エタノールとメタノールの2種類のみをいう。

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正解:3(1分子を構成する炭素の原子の数が1個から3個までの飽和一価アルコール)
消防法上の「アルコール類」は炭素数1〜3の飽和一価アルコールに限定されています。(1)は化学的な定義であり消防法の定義ではありません。(2)は炭素数4まで含めている点が誤り。(4)は引火点ではなく炭素数で定義されています。(5)はプロパノールが含まれていないので誤りです。

【問題2】n-ブタノール(1-ブタノール)について、正しいものはどれか。

(1)アルコール類に分類され、指定数量は400Lである。
(2)第1石油類に分類され、指定数量は200Lである。
(3)第2石油類(非水溶性)に分類され、指定数量は1,000Lである。
(4)第2石油類(水溶性)に分類され、指定数量は2,000Lである。
(5)第3石油類に分類され、指定数量は2,000Lである。

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正解:3(第2石油類(非水溶性)に分類され、指定数量は1,000L)
n-ブタノールは炭素数4の一価アルコールです。消防法上の「アルコール類」は炭素数1〜3に限定されるため、n-ブタノールはアルコール類に該当しません。引火点が約29℃で21℃以上70℃未満の範囲に入るため、第2石油類(非水溶性)に分類され、指定数量は1,000Lとなります。

【問題3】メタノールの性質について、誤っているものはどれか。

(1)引火点は11℃で、常温でも引火する危険性がある。
(2)水によく溶ける。
(3)蒸気を吸入すると有害で、誤飲すると失明のおそれがある。
(4)燃焼時の炎は明るいオレンジ色で、遠くからでもよく見える。
(5)比重は約0.79で、水より軽い。

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正解:4(燃焼時の炎は明るいオレンジ色で、遠くからでもよく見える)
メタノールの炎は淡い青白色で、明るい場所ではほとんど見えません。これが火災発見の遅れにつながるため、試験でも重要なポイントです。(1)〜(3)と(5)はすべて正しい記述です。

【問題4】アルコール類の火災の消火方法として、最も適切なものはどれか。

(1)普通の泡消火剤を大量に放射する。
(2)霧状の水を少量かける。
(3)耐アルコール泡消火剤(水溶性液体用泡)を使用する。
(4)乾燥砂で覆う。
(5)水をバケツで直接かける。

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正解:3(耐アルコール泡消火剤(水溶性液体用泡)を使用する)
アルコール類は水溶性のため、普通の泡消火剤では泡がアルコールに溶けて消えてしまいます。耐アルコール泡(水溶性液体用泡)は水溶性の液体に溶けにくい特殊な膜を形成するため、アルコール類の消火に最適です。CO₂消火器や粉末消火器も有効ですが、泡消火剤の選択肢がある場合は耐アルコール泡が最も適切な答えとなります。

【問題5】アルコール類の共通する性質について、誤っているものはどれか。

(1)液体の比重はいずれも1より小さく、水に浮く。
(2)蒸気比重はいずれも1より大きく、蒸気は低所に滞留しやすい。
(3)すべて水溶性であり、水によく溶ける。
(4)1-プロパノールはアルコール類の中で最も引火点が低い。
(5)アルコール含有量が60重量パーセント未満の水溶液は、アルコール類から除外される。

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正解:4(1-プロパノールはアルコール類の中で最も引火点が低い)
1-プロパノールの引火点は23℃で、アルコール類の中では最も引火点が高い物質です。最も引火点が低いのはメタノール(11℃)です。(1)〜(3)と(5)はすべて正しい記述です。引火点の高低を逆に出題するのは定番のひっかけパターンなので注意しましょう。

【問題6】次のア〜オの物質のうち、消防法上の「アルコール類」に該当するものの組合せとして、正しいものはどれか。

ア.メタノール
イ.エチレングリコール
ウ.2-プロパノール
エ.n-ブタノール
オ.変性アルコール(エタノール含有量80%)

(1)ア、ウ、オ
(2)ア、イ、ウ
(3)ア、ウ、エ
(4)イ、ウ、オ
(5)ア、イ、エ

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正解:1(ア、ウ、オ)

アルコール類の定義は「炭素数1〜3の飽和一価アルコール(変性アルコールを含む)」です。

  • ア.メタノール → 炭素数1の飽和一価アルコール → 該当する
  • イ.エチレングリコール → 炭素数2ですが、OH基が2つある「二価アルコール」→ 該当しない(不凍液の成分として第3石油類に分類)
  • ウ.2-プロパノール → 炭素数3の飽和一価アルコール → 該当する
  • エ.n-ブタノール → 炭素数4の一価アルコール → 炭素数が範囲外なので該当しない(第2石油類)
  • オ.変性アルコール → 定義に「変性アルコールを含む」とあり、エタノール含有量80%(≧60%)→ 該当する

エチレングリコールは「二価」で除外、n-ブタノールは「炭素数4」で除外。変性アルコールは60%以上なので含まれる――3つの除外条件を複合的に問う問題です。

アルコール類の復習順

アルコール類は、定義、指定数量、n-ブタノールの分類、消火方法をつなげて確認すると整理しやすいテーマです。外部教材へ進む前に、まずはサイト内の演習と関連解説で戻り学習をしておきましょう。

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