消火剤は「危険物の類」だけで決めない
このページは、冷却・窒息・除去・抑制の4原理と、泡・粉末・二酸化炭素・水系消火剤の使い分けを確認する4択のオリジナル問題です。公式過去問題の転載ではありません。
試験では代表的な組合せを問われますが、実際の火災では、同じ類でも物質名、濃度、形状、水との反応性、火災規模によって対応が変わります。「第3類は全部水厳禁」「第5類は全部同じ方法」のような一律暗記を、実務へそのまま当てはめないでください。
公式問題・法令・SDSで確認する
出題の目安は消防試験研究センター「過去に出題された問題」、危険物施設の消火設備は危険物政令 第20条と危険物規則 第33条〜第35条で確認できます。
製品ごとの消火剤・禁止消火剤はSDS第5項を確認します。例として、厚生労働省「職場のあんぜんサイト」のガソリンのモデルSDSは、粉末・二酸化炭素・泡を挙げ、棒状注水を「使ってはならない消火剤」としています。モデルSDSは参考資料なので、実務では手元の製品を供給した事業者の最新版SDSを優先してください。
| 確認順 | 見るもの | 判断を急がないポイント |
|---|---|---|
| 1 対象物 | 物質名、製品名、濃度、状態、量 | 類番号だけで消火剤を決めない |
| 2 SDS | 第5項「火災時の措置」 | 適切な消火剤と禁止消火剤を両方見る |
| 3 設備 | 消火器・固定設備の適応表示、点検状態 | ABC表示を化学品すべてへの万能表示と解釈しない |
| 4 人の安全 | 避難経路、煙、火勢、訓練、施設手順 | 消火より避難・通報を優先すべき場面がある |
ミニテスト10問
問1
消火原理と説明の組合せとして、正しいものはどれか。
(1)冷却消火―酸素だけを取り除く
(2)窒息消火―可燃物だけを運び出す
(3)除去消火―可燃物または燃料供給を取り除く
(4)抑制消火―温度だけを下げる
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正解:(3)除去消火―可燃物または燃料供給を取り除く
冷却消火は温度を下げ、窒息消火は酸素供給を抑え、除去消火は可燃物・燃料供給を取り除き、抑制消火は燃焼の連鎖反応を抑えます。一つの消火剤が複数の効果を持つ場合もあります。
問2
水が代表的な冷却消火剤とされる理由として、最も適切なものはどれか。
(1)熱を奪って燃焼物の温度を下げるため
(2)すべての危険物を化学分解するため
(3)どの物質とも反応しないため
(4)すべての油より軽いため
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正解:(1)熱を奪って燃焼物の温度を下げるため
水は比熱と蒸発潜熱が大きく、熱を奪って温度を下げる働きがあります。ただし、水との接触が危険な物質や、燃焼物を拡散させるおそれがある場面もあるため、「冷却効果がある」ことと「どの火災にも使える」ことは別です。
問3
厚生労働省のガソリンのモデルSDSに沿う記述はどれか。
(1)棒状注水が第一選択である
(2)粉末・二酸化炭素・泡が消火剤として挙げられ、棒状注水は使ってはならない
(3)水だけが使用できる
(4)消火剤の記載はない
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正解:(2)粉末・二酸化炭素・泡が消火剤として挙げられ、棒状注水は使ってはならない
同モデルSDS第5項の記載です。一方で、周囲の容器を冷却する散水など、放水の目的・形状・対象が異なる措置もあります。「水はすべて禁止」と短縮せず、燃焼液面への棒状注水と周囲冷却を区別してください。
問4
水溶性の第4類危険物に泡消火設備を用いる場合の考え方として、最も適切なものはどれか。
(1)泡なら種類を問わず同じ性能になる
(2)対象液体に適応する泡消火薬剤・設備かを確認する
(3)水溶性かどうかは表示しなくてよい
(4)泡は必ず危険物と化学反応させて消火する
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正解:(2)対象液体に適応する泡消火薬剤・設備かを確認する
水溶性液体では、通常の泡が十分な消火性能を保てない場合があります。試験では水溶性液体用泡を区別し、実際の設備では対象物、薬剤の仕様、放射方法、設計条件、SDSを確認します。
問5
二酸化炭素消火剤を換気の悪い狭い場所で扱うときの注意として、適切なものはどれか。
(1)人体への影響はないので誰でも入室できる
(2)酸素欠乏・窒息のおそれを考え、避難と施設の訓練・手順を優先する
(3)視界が悪いほど近づいて確認する
(4)消火後すぐ無防備で入室する
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正解:(2)酸素欠乏・窒息のおそれを考え、避難と施設の訓練・手順を優先する
二酸化炭素は残留物が少ない一方、高濃度では人体に危険です。固定式設備が放出された区画へ自己判断で立ち入らず、退避、立入管理、換気、濃度確認など施設の手順と消防機関の指示に従います。
問6
ABC粉末消火器の表示について、最も適切な説明はどれか。
(1)普通・油・電気火災への適応表示であり、すべての化学品火災に万能という意味ではない
(2)危険物第1類・第2類・第3類だけを示す
(3)冷却効果だけを示す
(4)消火器の点検が不要という表示である
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正解:(1)普通・油・電気火災への適応表示であり、すべての化学品火災に万能という意味ではない
A・B・Cは一般に普通火災・油火災・電気火災への適応を示します。水反応性物質や金属火災などは、対象物に適応する消火剤・設備を別に確認します。再燃、視界不良、粉末による機器汚損なども考慮が必要です。
問7
第3類危険物の消火方法について、最も適切な考え方はどれか。
(1)第3類は例外なくすべて水厳禁である
(2)第3類は例外なくすべて大量の水を使う
(3)自然発火性・禁水性の性状と個別物質のSDSを確認する
(4)類番号だけを見て現場で即決する
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正解:(3)自然発火性・禁水性の性状と個別物質のSDSを確認する
第3類は自然発火性物質および禁水性物質ですが、すべての品名が同じ性状・同じ消火方法ではありません。黄りんとアルカリ金属などを一つの方法でまとめず、製品名、状態、SDS、施設の消火設備を確認します。
問8
第5類危険物について、正しいものはどれか。
(1)すべて分子内に酸素を含む
(2)すべて二酸化炭素だけで安全に止められる
(3)自己反応性物質であり、品名・濃度・製品形態・SDSで消火上の注意を確認する
(4)すべて水と激しく反応する
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正解:(3)自己反応性物質であり、品名・濃度・製品形態・SDSで消火上の注意を確認する
第5類には有機過酸化物や硝酸エステル類のほか、アゾ化合物、金属のアジ化物なども含まれます。「すべて分子内酸素で燃える」と一括りにできません。熱分解や爆発的反応のおそれもあるため、離隔・退避を含む製品別手順が重要です。
問9
第1類のうちアルカリ金属の過酸化物などを扱うとき、適切な確認はどれか。
(1)第1類はすべて無条件に水を使う
(2)水との反応性を無視する
(3)「禁水」の注意と個別SDSを確認し、適応する消火設備を選ぶ
(4)可燃物と混ぜて反応を弱める
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正解:(3)「禁水」の注意と個別SDSを確認し、適応する消火設備を選ぶ
危険物規則は、アルカリ金属の過酸化物やこれを含有する第1類について「禁水」の注意表示を求めています。第1類全体の代表則だけで決めず、物質別の反応性とSDS第5項を確認します。
問10
危険物火災を発見したときの行動として、最も適切なものはどれか。
(1)物質不明でも近づいて類を推定する
(2)避難経路を失っても消火を続ける
(3)周囲へ知らせ、119番通報・避難を優先し、安全かつ訓練済みの範囲で施設手順に従う
(4)煙の中へ入り容器ラベルを読む
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正解:(3)周囲へ知らせ、119番通報・避難を優先し、安全かつ訓練済みの範囲で施設手順に従う
初期消火は、火勢が小さく、対象と適応消火器が分かり、退路が確保され、訓練済みであるなど安全に実施できる範囲に限ります。危険物の流出、容器加熱、濃煙、急な拡大がある場合は近づかず、消防機関へ情報を伝えてください。
採点後は「原理」と「適応」を分ける
- 原理:冷却・窒息・除去・抑制のどれが働くか
- 適応:対象物質、火災区分、SDS、設備仕様に合うか
- 禁止事項:棒状注水、禁水、立入禁止など何を避けるか
- 人の安全:退路、煙、火勢、設備放出、通報・避難を確認する
「この類にはこの消火剤」と一行で暗記した後は、必ず例外と個別SDSへ戻ってください。試験の代表則と、実際の化学品火災の判断は同じ粒度ではありません。
消火方法を実物で試さない
危険物への点火、少量燃焼、水との反応確認、消火器の試射はしないでください。火災・発煙・漏えい時は近づかず、避難・119番通報を優先し、製品SDS、施設の緊急時手順、消防機関の指示に従ってください。
採点後の復習順
- 消火の4原理で用語を確認する
- 第4類の消火方法で棒状注水と泡の適応を分ける
- 全6類の消火方法で類別暗記の例外を確認する
- 危険物施設の消火設備で第1〜第5種を整理する
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