熱の計算は「物体全体」と「単位質量」を分けて解く
このページは、熱容量・比熱容量と熱の移動を確認する4択のオリジナル問題10問です。公式過去問題の転載ではありません。
先に結論をいうと、物体全体の温度を1 K上げるのに必要な熱量が熱容量C、単位質量当たりの熱容量が比熱容量cです。温度変化だけを扱える条件ではQ=mcΔTを使い、伝導・対流・放射は一つだけと決めつけず、同時に起こり得るものとして整理します。
定義・熱移動・試験範囲の確認先
熱容量はIUPAC Gold Book「heat capacity」、比熱容量はIUPAC Gold Book「specific heat capacity」を参照しています。伝導・対流・放射はNISTのHeat TransferとFire Dynamicsで確認できます。
危険物取扱者試験の科目名・問題数は消防試験研究センターの試験科目、出題の確認は公式の過去に出題された問題を参照しました。公式問題は複製せず、以下はすべて当サイトで作成した問題です。
熱容量 C
C=Q/ΔT
物体全体の値
比熱容量 c
c=C/m
単位質量当たり
温度変化の熱量
Q=mcΔT
相変化なし
ミニテスト10問
問1
物体の熱容量Cの説明として、正しいものはどれか。
(1)その物体の温度を1 K上げるのに必要な熱量
(2)物質1 kgを融解させる潜熱
(3)単位面積を通過する熱流
(4)物体の最高使用温度
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正解:(1)その物体の温度を1 K上げるのに必要な熱量
熱容量は物体全体についての値で、C=Q/ΔTです。単位にはJ/KやkJ/Kなどを使います。同じ物質でも質量が増えれば、物体全体の熱容量は大きくなります。
問2
比熱容量cの説明として、正しいものはどれか。
(1)熱容量を質量で割った値
(2)熱容量に質量を掛けた値
(3)融点と沸点の差
(4)熱伝導率と同じ値
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正解:(1)熱容量を質量で割った値
比熱容量はc=C/mで、単位質量当たりの熱容量です。単位はJ/(kg・K)などです。温度や圧力、相によって値が変わり得るため、計算では問題文で与えられた値と条件を使います。
問3
水2.0 kgを20℃から70℃まで温める。比熱容量を4.2 kJ/(kg・K)、相変化と熱損失はないとすると、必要な熱量は何kJか。
(1)168 kJ
(2)210 kJ
(3)420 kJ
(4)588 kJ
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正解:(3)420 kJ
Q=mcΔT=2.0 kg×4.2 kJ/(kg・K)×(70−20) K=420 kJです。温度差は50 Kで、セルシウス温度差50℃と数値が同じです。
問4
質量4.0 kg、比熱容量0.50 kJ/(kg・K)の物体の熱容量はどれか。
(1)0.125 kJ/K
(2)0.50 kJ/K
(3)2.0 kJ/K
(4)8.0 kJ/K
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正解:(3)2.0 kJ/K
C=mc=4.0 kg×0.50 kJ/(kg・K)=2.0 kJ/Kです。Q=mcΔTはQ=CΔTとも書けます。
問5
Q=mcΔTを一つの式で使う条件として、最も適切なものはどれか。
(1)相変化がなく、扱う温度範囲でcを一定とみなせる
(2)必ず融解または気化している
(3)化学反応で別物質が生じている
(4)質量や単位を確認しなくてよい
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正解:(1)相変化がなく、扱う温度範囲でcを一定とみなせる
相変化があれば潜熱Q=mLの区間を分け、比熱容量が大きく変わる温度範囲では区間ごとの値や積分が必要です。試験では、与えられた近似条件を読んで式を選びます。
問6
同じ液体を同じ質量だけ用意し、20℃と80℃のものを断熱容器内で混ぜる。相変化・熱損失・比熱容量の温度変化を無視すると、平衡温度はどれか。
(1)30℃
(2)40℃
(3)50℃
(4)60℃
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正解:(3)50℃
高温側が失う熱量と低温側が得る熱量を等しくします。同じ質量・同じ比熱容量なので、平衡温度は20℃と80℃の中間の50℃です。
問7
熱伝導の説明として、正しいものはどれか。
(1)流体全体が移動しなければ一切起こらない
(2)物質内部や接触部を、微視的な相互作用によって熱が伝わる
(3)真空中だけで起こる
(4)電磁波だけで熱を運ぶ
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正解:(2)物質内部や接触部を、微視的な相互作用によって熱が伝わる
伝導には物質が必要で、固体だけでなく液体や気体でも起こります。流体のまとまった移動が熱を運ぶ対流、電磁波で伝わる放射とは区別します。
問8
熱伝導率kが大きいことの意味として、最も適切なものはどれか。
(1)放射を一切しない
(2)比熱容量も必ず大きい
(3)温度が伝わる速さはkだけで必ず決まる
(4)同じ形状・温度勾配なら伝導による熱流が大きい
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正解:(4)同じ形状・温度勾配なら伝導による熱流が大きい
熱伝導率は伝導による熱流の大きさに関係します。温度分布が変化する速さには、熱伝導率だけでなく密度と比熱容量から決まる熱拡散率も関係するため、「kが大きい=常に最速で温まる」とは限りません。
問9
対流の説明として、正しいものはどれか。
(1)温かい流体は条件に関係なく必ず上へ移動する
(2)固体だけで起こる
(3)真空中で物質なしに起こる
(4)液体や気体のまとまった移動が熱を運び、自然対流と強制対流がある
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正解:(4)液体や気体のまとまった移動が熱を運び、自然対流と強制対流がある
密度差と重力による自然対流のほか、ファンやポンプによる強制対流があります。「温かいものは上」とだけ覚えず、流体の密度、重力、設備による流れを確認します。
問10
熱放射と実際の熱移動について、正しいものはどれか。
(1)放射には必ず空気が必要である
(2)放射は電磁波によるため真空中でも起こり、伝導・対流と同時に起こる場合がある
(3)火災時の熱は一つの方式だけで移動する
(4)伝導は真空中だけで起こる
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正解:(2)放射は電磁波によるため真空中でも起こり、伝導・対流と同時に起こる場合がある
火炎や高温物体からの放射、熱い気体から表面への対流、壁内部の伝導のように、複数の仕組みが同時に働きます。二物体間の正味の放射熱移動は、高温側から低温側へ向かいます。
採点後は単位と区間を確認する
- 熱容量:物体全体の値C。単位はJ/Kなど
- 比熱容量:単位質量当たりの値c。単位はJ/(kg・K)など
- 温度変化:相変化がなければQ=mcΔT
- 状態変化:潜熱Q=mLの区間を分ける
- 熱移動:伝導・対流・放射は同時に起こり得る
比熱や熱膨張だけで現場対応を決めない
水は大きな熱容量を得やすい冷却媒体ですが、すべての危険物火災に適するわけではありません。また、物質は一般に加熱で膨張する傾向があるものの例外もあります。貯蔵・消火では製品SDS、容器・設備の設計条件、法令、施設手順、消防機関の指示を優先してください。
採点後の復習順
- 熱量・比熱・熱容量の解説で式の意味を確認する
- 三態変化・潜熱ミニテストで相変化の区間を確認する
- 危険物試験の計算問題6パターンで単位換算を練習する
- 酸化・還元ミニテストへ進む
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